2ch には良くできた創作が、いわゆる「コピペ」として出回っています。可愛い AA(アスキーアート)もいいですが、ちょっと背筋が寒くなるような、怖いコピペが好きです。
中でもお気に入りが、これ。
ある日、泣き声がしゃくに障ったので妹を殺した、死体は井戸に捨てた
次の日見に行くと死体は消えていた5年後、些細なけんかで友達を殺した、死体は井戸に捨てた
次の日見に行くと死体は消えていた10年後、酔った勢いで孕ませてしまった女を殺した、死体は井戸に捨てた
次の日見に行くと死体は消えていた15年後、嫌な上司を殺した、死体は井戸に捨てた
次の日見に行くと死体は消えていた20年後、介護が必要になった母が邪魔なので殺した、死体は井戸に捨てた
次の日見に行くと死体は消えていなかった
次の日も、次の日も死体はそのままだった
これは「オチ」の一行が無いバージョンで、初めて見たときに「なぜ?」を考えるのが恐ろしかった。その後、最後の一行があるバージョンを見て、「なぁんだ」と思いました。やはりこれは、上記のままで終わっている方が美しい。
『七つの怖い扉』
つい最近、このコピペの元ネタがあることを知りました。阿刀田 高氏の『迷路』という短篇です。
さっそく、収録されている本を探し、『七つの怖い扉』を読みました。タイトル通り、七人の作家が書いた、七つの短篇が載っています。
- 七つの怖い扉 (新潮文庫)
- 阿刀田 高 高橋 克彦 小池 真理子
- 新潮社 2001-12
- Yahoo! ショッピング: 七つの怖い扉
- 楽天ブックス: 七つの怖い扉
by G-Tools , 2007/07/18
阿刀田 高 『迷路』
さて、『迷路』を読んだのですが──やはり、最後のオチが、自分には不要でした。
たしかに、全く初めて読んだのであれば、最後の一行でゾッとする終わり方です。しかし、その一行が無くても「なぜ、その屍体だけ消えないのか?」は考えればわかるし、自分の頭でそれを解いた方が──怖い。
ひょっとしたら、最後の一行を書かないまま発表したら、ある種の伝説になったのではないか、と思いました。
ホラーの「オチ」
そうした目で見ると、他の収録作も「オチ」で怖さが半減する作品が多いです。
高橋 克彦氏の『母の死んだ家』も、途中まではゾクゾクする薄気味悪さがあるのに、オチを読んで思わず「なるほど」と口から出ました。──ホラーを読んで、「なるほど」は無いだろ、と。まぁ、『SAW』も、いま見たら「なるほどー」と言いたくなるかも知れませんが。
ということで、『七つの怖い扉』の収録作は、どれも完成度が高いがゆえに、オチを読むと妙に納得してしまう。そして怖さが無くなってしまう。──出口が保証されているお化け屋敷のようですね。
自分は、はっきりとしたオチが無くても成り立つ作品、しかも怖さが味わえる作品が好きです。読み手に物語の終わりを考えさせることによって、物語の中に取り込まれるような恐怖──。森 博嗣作品の中にも、そういった作品がいくつかありますよね。
じわじわ来る怖い話
オチ無しで怖い、というと 2ch の書き込みの中にも多いです。最近だと、これが良かったかな。
>>129 とか >>446 がお気に入り。>>506-508 に阿刀田 高氏の『迷路』の改変ネタもあります。
──それにしても、井戸の中の母親は、まだいるのだろうか……。
たぶん、今現在も
コメント
最後の一行
自分はあったほうがいいな