HUNTER×HUNTER #287『現状』 王とネテロ、立場の違い

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HUNTER×HUNTER No.287『現状』 (週刊少年ジャンプ 2008 年 51 号)

今週のジャンプでズコーとなったのは、次の二つのセリフだった。

  • “恋はいつでも !! ハリケーン” !!!
  • 僕は君達の味方だよ

二つとも、それまでの流れをぶっ壊死て殺る夜 !!!!なノリで笑った。まぁ、苦笑に近いが……。

これを『H×H』でたとえると──。今週のラストの場面で王に対して、

ネテロ「マジっすか !? あざーす wwwww !!!!1」

──と答えるようなモノだろう。

それはそれとして──。昨日の続きを書く。

冷静に怒り狂え !!

冷静に怒る人間は、恐い──そう昨日の記事で書いた。もう一人、平静でありながら怒っている人(キメラアント)がいる。ユピーだ。

ユピーもまた、王のために闘っているのか、戦いのために戦っているのか、キワドい。滅私、とか言ってなかったか? いつの間にか、公のためではなく私のために戦う者ばかりだ(後半の感想への伏線)。

戦いの中で自分を本性を見いだしたユピーは、仮に王が世を統べるようになったあと、どうするつもりなのだろう。ピトーに頼んで強化した人間を作らせる、というくらいか。

バトルしか頭にないヤツら、といえば『幽☆遊☆白書』を思い出す。しかし、あの作品の後半は、戦うことの むなしさ(というかジャンプ体質への批判)の色が濃くなってきた。ユピーほど戦いだけに求める者は、じつは珍しい。──まぁ、もしユピーが生き残ったら、戸愚呂弟みたいに いろいろと苦悩するキャラクタになりそうだが……。

怒ったユピーの変形した姿は、『幽☆遊☆白書』の後半や『レベル E』を思わせる。あの 2 作品もそうだが、リアルタイムで読むと、ジャンプ片手に「ヤバい、ヤバい! 冨樫くr ──クレイジィっちゃうよ !!」(やや自主規制)と不安が混じったままページをめくる──最高だ!

瀬戸際

その crazy さが最高潮になるのは、「利息がつきます」の見開きページだ。

これ、ほぼ中央の開きやすいページなので、うっかり小学生のおガキ様がここを見たら……。「キャベツ畑」や「コウノトリ」を信じている可愛い女のコに、無修正のポルノを つきつける時を想像する様な、下卑た快感さ(『幽☆遊☆白書 (16)』)と自分のキャラクタにしゃべらせる作者らしい、■った場面である。

なぜ戦う?

王がネテロに向けた問いかけは、冨樫作品では何度も出てきた。なぜ、戦うのか──。

──と思ったら、そういう哲学的な問いかけではなかった、というのが笑えた。これ、真剣に冨樫作品を読み込んできた人なら引っかかるトラップだと思う。リトマス試験紙的なコマである。

そう、ちょっと自分も寝ぼけたことを言ってきたが、王の思想は選民でしかない。ネテロの言葉で目が覚めた。

でも──選ばれた者だけが生き残ればよい、という考え方に共感できる自分もいる。昔から、そういったことを考えていた。ただし、100% 自分が「選ばれた側」に入っているのだが。──アナタも そうではないですか?

ハンター協会会長のネテロとしては、当然、王の言うことは のめない。少し前までは和解の道もある、と考えていたが、それは難しそうだ。「冨樫先生の次回作に期待を──」とならずに終わるのか、ますます心配になってきた。

コメント

  1. 永空 より:

    >戦いの中で自分を本性を見いだしたユピーは、仮に王が世を統べるようになったあと、
    >どうするつもりなのだろう。
    蜘蛛なんかは、世界中のお宝を盗み出すという分かりやすい行動原理をもってますが、
    キメラアントのことはよくわかりませんね。
    それは強さを求めるユピーだけではなく、王にも言えることで。
    王はたとえ才能ある人間、動物であっても
    簡単に殺せてしまう自分の力に酔ってるわけですが、
    彼は一生、一定数のまともな人間をそばにおいて、いつでも殺せるぞと、
    そういうのを楽しむということなんでしょうかね?
    なんか物凄くくだらない意味のない一生に思えるし、
    無茶苦茶、器の小さな人間(キメラアント)に思えてしまいますね・・・。
    >見開きページ
    シュートが、片足を怪我して「手」にのって戦うことが自分の奥義と気づいたときの
    見開きのページの絵といい、冨樫はこういう絵をかかせると天才的ですね。

  2. asiamoth より:

    まさに、王が自分の存在理由の無意味さに気付いたシーンが、過去にありましたね。そこまで考え抜けるのが、冨樫先生のスゴさでもあり、彼の作品(と精神)を不安定にしている原因でもあります。その風呂敷、畳めるのか、と……。『レベル E』みたいに、「──という宇宙人がいましたとさ」で終われたら楽なのですが。
    見守ることしかできない自分は、この作品の面白さを少しでも引き出すように読み続けるだけ、です。