『バクマン。』 72 ページ 「文句と一喝」 (週刊少年ジャンプ 2010 年 10 号)
今週号の『バクマン。』には、違和感がありました。
「──あれ? 何かあったのか?」と言いたくなるくらい、登場人物の描写が違う。いままでとは性格がガラッと変わったり、微妙に顔のラインが異なっていたり……。
主人公たちの描いた作品が連載されるという、転換期だからでしょうか。
2 本連載 !?
新妻エイジが連載を増やすことに、編集者たちが反対しています。これは、読者が思った以上の反応ですね。
ジャンプの看板作家がやることなので、単純に「面白い事になってきた」では済まされない。エイジが 2 作品を連載すれば、当然のことながら他の作家の 枠がひとつ 減ります
。先週号では意識しませんでしたが、編集者たちにとっては死活問題ですね。
──とはいえ、いまいち編集者の「担当」という制度がよく分かりません。
しばらく前までの港浦みたいに担当している作品がない者がいたり、山久みたいに新人なのに連載を何本も担当したり。服部なんて、ジャンプで一番人気の『ONE PIECE』を担当しながら、『+NATURAL』を立ち上げています。
自分の抱えている作品が増えれば、昇給・昇進が望める。だから編集者たちは必死に抗議している──ということですかね。もしそうなら、収入は大事なことですが、なんだかガッカリです。
思い切った決定
エイジの仕事量が増えたことを、シュージンは心配している。これは、ライバルだからというよりも、原作者の立場から出た意見でしょうね。サイコーがネームから原稿に仕上げるタイヘンさを、シュージンはいつも目の当たりにしているのです。
一方のサイコーは、意外にも平然としていますね。この 3 人の中で、作画の苦労が一番わかるのはサイコーなのに……。一本の連載を万全の体調で描ききれず、過労で倒れたことを忘れたのでしょうか。──退院後もムチャをしているところから、本当に覚えていないのかもしれませんね……。
昔も今も、週刊連載を何本を持っていたマンガ家なんて、ごく少数でしょう。そもそも、「週刊少年ジャンプ」で連載ができる作家自体、数すくないのです。
新妻エイジの希少な才能であれば、いまのジャンプで 2 本の連載ができる。それを普通のこととして、サイコーは受け入れた。エイジのことを「乗り越えるべきライバル」とサイコーは思っています。ライバルには、それだけ大きなことをやって欲しい、という期待があるのでしょうね。
シュージンの言うとおりに、こんなにも早く岩瀬が連載を始められたのは、服部とエイジのおかげでしょう。しかし、読者が見た岩瀬と服部の打合せ風景からは、岩瀬が図に乗る
なんて思えない。彼女は謙虚に服部の言うことを聞き、「MONEYS」のネームに感心していました。
──はたして、岩瀬が自分の才能を過信する
という、シュージンの予想は当たるのか?
すごい! 連載
たとえば、サイコーからのメールを読んでいる亜豆は──なんだか丸っこいです。だが、それがいい。いつもより 12% ほどカワイラシク見えました(asiamoth 調べ)。
亜豆のメールで気がつきましたが、『疑探偵 TRAP』の終了から一年も過ぎていたのですね。何もかもが早い展開のマンガだな……。
もう、サイコーも亜豆も、「18 歳までにアニメ化して結婚」なんて、オママゴトみたいなことは遠き日の思い出になっている。連載を終了してから一年後に次の連載を始めるのはスゴい、と現実的な感想を亜豆は述べています。
自分たちを応援するメールを読んで、サイコーとシュージンは、すっかりやる気になりました。──なのに、ここで見吉が「安い芝居ごっこ」の脅迫ですよ。作者は読者に見吉を嫌わせるのが狙いなのか、とときどき思います。
ド新人なわけだし
相田が面白さ絶対主義
を語っている。これは佐々木編集長の専売特許ではなかったのか……?
というか、じつは、この言葉は本編には出てきません。コミックス派の人は、聞き覚えがないはずです。週刊連載の時だけ出てきました。『11 ページ』の最後、マンガは 面白ければ いいんだ 面白いものは 連載される 当たり前だ
と編集長が断言したときに、アオリ文で書いてあったのです。
ひょっとすると、相田は『いぬまるだしっ』を読んでこの言葉を知った、という設定かもしれませんね(ドウデモイイよ)。
瓶子は、登場のたびに威厳をポロポロと落としている。班長以下の編集者たちからも、「堂々とした陰口」を叩かれています。たしかに、言っていることは正論ながら、他力本願ですね。
そうですか
「今週号からキャラが違う」の第二弾です。
いままで服部に従順だった岩瀬が、急に素っ気ない態度を取っている。シュージンと見吉が入籍する話を聞いてから、イラだっているのでしょうか。
不意打ちを食らった服部が、珍しく動揺しているように見えて、面白い。まぁ、「女性だからイロイロあるのだろうな」というオトナの対応っぽいですケド。
亜城木夢叶の──シュージンの連載開始を聞いた岩瀬の表情が、不思議と良い感じです。内心では面白くないはず。それでも、「自分より下の男」ではなかったことで、未練が残っているのかも。
素直で柔和だった岩瀬は、どこかへ行きました。ここからは、岩瀬の本領発揮です。