バクマン。 #109-4 「ロミオと一周年」 普通の恋愛と俺の我儘

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『バクマン。』 109 ページ 「ロミオと一周年」 (週刊少年ジャンプ 2010 年 50 号)

Mother and child
(恋はまだ知らないけど──ぼくにはママがいる!)

今になって気がつきましたが──、じつは、亜城木夢叶の作品の中では、『走れ! 大発タント』が一番アニメ化しやすかったと思う。はっきり言って、設定はほぼ『まじかる☆タルるートくん』だし……。

「かわいらしい(?)動物が出てくる子ども向けの作品」という意味では、『恋太』も『タント』も同じです。しかし、『タント』はバトルものにも化けやすい。グッズの展開も望める。アニメへ持って行くには、イタレリツクセリなのです。

ただし、サイコーにもシュージンにも、『タント』の作品は合わなかった。そこは間違いないので、やはり、担当者の港浦は、この作品を亜城木に描かせるべきではなかった──と思います。

たとえるなら、『ONE PIECE』の作者に「オトナの恋愛もの」を描かせてどうする? ──という感じ。

最後まで目すら 合わせない

自分が中学生の時を 思い出した──と服部は語る。初恋の思い出を臭わせる発言をするなんて、服部もロマンチストですね。慣れない人には無表情に見える彼にも、淡い甘い日々があったのか──と思うと面白い。

服部の中学生時代って、どんな感じだったのでしょうね? おそらく、スポーツマン──長距離選手っぽい感じがする。今と同じく面長だったことは、確実でしょう。

──ところで、こういう時に、「現実世界の服部氏を調べる」というのは面白くない。自分が書いているのは「感想」なので、あくまでも自分が想像する「服部像」を述べればいいのです。

調べることで満足すると、文章と心が死ぬ

今までと同様にシュージンが主体で打合せをしていたので、サイコーが主導でネームを描いたと聞いた服部は、かなり驚いている。実際には完全にサイコーが話を考えた──と知ったら、服部はどんな顔をするでしょうね。

アゴが伸び──もとい、外れるかも。

驚いたあとでも、すぐに服部は改善案を出せる。この頭の回転の速さが、彼の持ち味です。さらに、「普通の恋愛」と「進んだ付き合い」との違いが分からない──とサイコーが衝撃の告白をしても、素早く服部はシュージンへ頼む。

班長クラスまで含めても、服部ほど鋭い編集者はいないのでは? 前から言っているけれど、なぜ彼が出世していないのか、分かりません。逆に言うと、どうやったら「ジャンプ」編集部で出世できるのだろう?

時間ね ーーっ

自宅ならまだしも、仕事場で大声を張り上げるなんて、シュージンらしくありません。そんなにも、切羽詰まっているのか……。

シュージンが不満に思う原因は、『恋太 & ピース』の作者が亜城木夢叶じゃなく 白鳥シュンの 原作であることです。たしかに、第三者から見れば「いま、そんな事をしている場合なのか?」と思えてくる。

それと、本質を突く言葉をカヤが軽く言っています。

『恋太』のネームを間に合わせるのは、べつに 2 月の 連載会議じゃなくても いい──という点も、シュージンをイライラさせる原因だと思う。シュージンは努力し続けているのに、白鳥はあせっていない。

この原作者と作画との温度差は、言っても仕方がないことだけれど……。

あと、いまのシュージンは、「こんなに がんばっているのに 振り向いてくれない……」とヒロインに対して思う恋愛マンガの主人公みたい。

どうしたいん だよ?

そう、自分も一番恐れていたことは、『恋太』のほうがアニメになることです。『PCP』どころか、次に亜城木夢叶が描く作品にも、影響が出そうな気がする。

それ以前に、サイコーが描いている今回の恋愛ものも、はたして連載が狙えるかどうか……。

冒頭にも書きましたが、そう考えていくと、亜城木の 2 人が自分の持ち味を生かしたまま、「ジャンプ」でアニメ化を狙うのはムリがある。

ただ、「ネガティブなサラリーマンが主人公のマンガ」という異色作──『ラッコ 11 号』が(深夜枠とはいえ)アニメになった実績があります。何らかの抜け道はありそう。「アニメ化が可能な邪道マンガ」とか?

そうは 言ってないだろ!

シュージンがイラだっている理由は、自分のワガママにある──とサイコーは思っています。逆にシュージンは、もっと我を通せ──とサイコーに言う。

このすれ違いは悲しい。

サイコーはいつも、限界まで自分の中に問題をため込んでしまう。亜豆も似たところがある。これまでは致命的な状況を避けられましたが、それはただ単に運が良かっただけです。いつか、今回のように身近な人間との距離を開くことになりそうで、こわい。

ところが、まだ救いはあります。

シュージンはサイコーと比べて、思ったことはすぐに発言する。しかも、ほとんど失言はしたことがない。どんな時でも、相手を気づかいながら言葉を選べるのです。──港浦とは大違いだ……。

さらには、今回はカヤという仲介役もいます。今までサイコー・シュージン・亜豆の 3 人が離ればなれにならなかったのは、けっこう奇跡的なことだったりする。その奇跡を支えてきたのは、間違いなくカヤです。

加藤は、女性とはいえ「非実在青少年」なので、面白おかしく「さげまん」だと書いてきました(それもひどい話だな)。彼女のまわりにいた男性には、不幸が多すぎる……(サイコー入院・高浜打切り・平丸お茶会中断・中ドンブリさんそして伝説へ──)。

一方、カヤには「あげまん」の相が出ている。今回の亜城木夢叶の危機も、カヤがいればきっと丸く収まる──と信じてきます。

コメント

  1. 児斗玉文章 より:

    服部が出世してないのは純粋に「ヒットを飛ばしてないから」でしょうね。
    実力主義というのは純粋に結果だけで評価すべきだと思います。
    そこに「結果が出てないだけで実力はある」を持ちこんでしまうと、情が絡んでギスギスした集団になってしまうことが多い気がします。
    …ところで「じょうがからんで」を変換したら最初「嬢が絡んで」だったんで、ドキドキしちゃいましたw

  2. asiamoth より:

    あれー、コメントを見落としていました! すみません!
    そうか、服部が一から立ち上げて、
    そこからヒットにつながった作品って──、
    『PCP』くらいですかね?
    そう言われると、出世はまだまだ遠そうです。
    ただ、「たまたま天才の原稿を取った」だけで
    ヒット作出しまくりの某・アフロも、出世なし。
    さすが「ジャンプ」は、出世のハードルが高い!