バクマン。 #125-2 「焦慮と逆転」 二人三脚と地獄の日々

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『バクマン。』 125 ページ 「焦慮と逆転」 (週刊少年ジャンプ 2011 年 16 号)

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(地獄の番犬は──二匹四脚?)

今週号のジャンプは、かなり特殊な 1 冊になっています。なにしろ、『バクマン。』の直前にアンケートはがきが来ている。これほど うしろのページにハガキがあるのは、かなり珍しい。

そして、今回の『バクマン。』の本編は、18 ページしかありません。普段なら扉絵が見開き 2 ページでもカラーでも、それを除いて 19 ページあるはずなのです。

これらの変更は、まるで大震災を予測していたかのよう──と考えるのは、私だけでしょうか?(知恵袋的質問)。

さらには、前回の感想で書いたとおり、来週号の「ジャンプ」は発売日が延期になります……。なんというか、「地震を考えたヤツ、ちょっと出てこい!」という感じ。

参考: バクマン。 #125-1 「焦慮と逆転」 ログと画期的 : 亜細亜ノ蛾

充分な才能があります

小杉編集と七峰透は、今のところ良好な関係ができていません。七峰には、小杉に歩み寄る気がないからです。孤高な計算型の天才は、亜城木夢叶とは違ったガンコさを持っている。

あれだけ七峰から使いっ走り以下の存在として扱われたのに、彼の才能を小杉は信じています。見た目と違って、かなり根性がありますね。

そう言えば、この小杉の負けん気も、どことなくサイコーと似ているような……。顔芸は七峰に取られるし、亜城木夢叶の危機か!?


七峰は一人で描けばきっと 面白い作品が描ける──と小杉は言う。これには疑問を感じました。なぜなら──、「七峰が一人だけで考えた話」を誰も読んだことがないからです。

現時点で分かる七峰の能力は、下記の点でしょう:

  • 企画力: 前例のないアイデアを取り入れる
  • 統率力: 複数の人間をまとめられる
  • 財力: 高級マンションを軽く借りた
  • 画力: サイコーに負けず劣らず

これだけでも「作画担当者」や「編集者」としては十分すぎるスペックですが、七峰が一人でマンガを描けるかどうかは分かりません。小杉は、どこから判断して上記の発言をしたのでしょうかね?

でも、人を信じる時には、根拠は不要なのかも。

移動願 ですか ………

この場面は地味~な感じですが、3 人の心情を追っていくと、味わい深くて面白い。『バクマン。』らしい 1 ページです。

まず、七峰に対する理解度が、亜城木コンビと服部では、大きくズレている。服部は、七峰は自分でも やり方に疑問を 感じ始めてる はずだと思っています。彼が見てきたマンガ家たちなら、そのとおりでしょうね。

ところが、亜城木夢叶に対して、さらに七峰は挑発してきました。電話を受けたシュージンは、「敵」のあせりを感じ取っただけではなく、何があっても七峰は反省しないことを知ったはず。


シュージンの話を聞いた服部は、七峰は懲りてないとか何とか言いながら──ちょっと「面白そう」と思っていそうな表情です。──ご存じのとおり、これが伏線になっている。

同じ号で 同じ話を違う作家が描くなんて、年に数回の企画もの(4 コマなど)か別冊くらいしか読めません。そして、ほぼ例外なく──面白くない……。「お正月だから羽根突きして顔中スミだらけ!」とか、もうね……。

しかし、ストーリィマンガでマジメに同じネタをやれば、たしかに面白そうです。各作家の力量がすぐに分かる。つまり──かなりキケンな企画ですね。本誌でやらない理由がよく分かる。

参考(?): 『ハンター×ハンター』 10 巻の密室にジャンプキャラが挑む! : 亜細亜ノ蛾

今回は アリ一本ですね

平丸一也は、あっさりと「ジャンプ」に復帰しました! さすが、真の天才です。

『僕には通じない』は、「恋愛読切祭」からずっと平丸が描き続けてきました。一度ボツを食らっただけで、練り直せば連載が狙えたわけです。

考えてみると、平丸が作りだした話は、『ラッコ 11 号』と『僕通』の 2 つしかありません。そのどちらも、天下無双の「週刊少年ジャンプ」に連載される──。

あの新妻エイジですら、連載にならなかった読み切りは何作もありました。それに対して平丸は、ある意味では「ボツになったことがない」とも言えます。

この 2 人の天才でも、大きな差がある。それは才能の差ではなく──神(作者)からの愛の大きさです。


この連載会議で一番笑えるのは、吉田の言動でした。いつものように するどい発言をしている──と思いきや、『有意義』を潰したいだけじゃないですか! 「学園もの」という点で平丸の連載とカブっているから……。

ただ、吉田の言っていることに間違いはありません。そこが、逆に憎たらしい。微妙にイケメン度も上がっているし。担当者もマンガ家も、2 人そろって能力がありすぎるチート・コンビです。

小杉も 立て直して みせると

吉田に負けないように、相田班長も必死になって『有意義』をアピールしている。当たり前だけれど、会議と言うだけあって、まるでプレゼン大会です。この場では、声の大きなものが勝つ──という感じですね。

相田のプレゼン能力は、以前から素晴らしいと思っていました。今回はいつものように「たんたんと良い点だけを挙げていく」感じではありませんが、新人が育たないという点を突くのがうまい。積極的に新人・新作を採用する「ジャンプ」では有効な一撃です。

そんな相田を、攻撃的な目で見る吉田にも注目!


新井先生は、ベテランの実力派という印象が強かった。ところが、いつの間にやら始まっていた『妄想使いモシモ』で 3 回目の打切とのこと。これは──、もう「戦力外通知」のリーチでしょうね。

担当の内田編集(だっけ?)は、響恭太郎の担当編集者でした。どうも彼の押しの弱さは、編集者向きではないような気がします。先生たちと一緒に飛ばされるのでは……。

連載だ おめでとう!

この場面からは吉田の愛を感じました。ほかの編集者はたいてい電話で済ませるのに、わざわざ自宅まで駆けつけて連載開始の報告をしている。どんだけ平丸が好きなんだよ!


平丸の能力が、さらに成長しました。ネガティブになっただけで、アイデアが湯水のように わき出るという──。この人の才能は、本当に天井知らずですね。

さて──、この「希望が絶望に変わったとたんに力が生まれる」って、どこかで聞いたような設定だな……(何のことやら、わけがわからないよ)。