小畑健一覧

バクマン。 #32-4 「電話と前夜」 高校生へのフォローとマンガ論

『バクマン。』 32 ページ 「電話と前夜」 (週刊少年ジャンプ 2009 年 19 号)

Mexican Wolf's eyes (by Kyle Kesselring) (by Kyle Kesselring)

大半の読者(自分を含む)が読み飛ばすであろう、金未来杯の結果がジャンプ誌上に載った。

佐々木編集長苦肉の決断などと書かれている。『バクマン。』の作中では、本当に編集長が迷った上で受賞作品を 2 本にした。しかし、もし、このような事が現実のジャンプに書かれていても、「どうせオトナの事情か何かだろ」と思ってしまう。

どうして書いてあることを、そのまま信頼できないのだろうか?

(ヒント: たまに連載 2 回目で「早くも大反響!」とか書いちゃうから)

──こういうときに「オオカミ少年」のひと言で説明ができるから便利だ。調べてみると、イソップ童話の「嘘をつく子ども」が正しいらしい。思った通り、類似の話がたくさんある。面白い話が多い。

嘘をつく子供 – Wikipedia

ウソつきは愚かしさから来るはずだが、ウソには高度な知恵が必要である。人間だけにできることだろう。

──そう思って自分の家にいるネコを見ると、

「ニャー!(訳: メシはまだか、よこせ!)」

と、パンパンにふくれあがった腹で言う。人間でなくともウソはつけるようだ。

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バクマン。 #32-3 「電話と前夜」 感謝の気持ちと恥ずかしさ

『バクマン。』 32 ページ 「電話と前夜」 (週刊少年ジャンプ 2009 年 19 号)

BrickArms Bazooka M9 prototype (right) (by Dunechaser) (by Dunechaser)

先週号の話になるが、ものスゴい人物が『ONE PIECE』に登場した。それはイワさん(「イワ様」だゼェ !!)──ではなく、名もない元・王族である。

イワレンコフに国を滅ぼされた彼は、

  1. 難攻不落のインペルダウンへ潜入し、
  2. なおかつ大砲を持ち込み、
  3. ヒミツの「ニューカマーランド」を見つけ出し、
  4. 打ち返された大砲の直撃に耐え、
  5. なんといっても、オンナになった瞬間に「キャーっ !!」と恥ずかしがる

──のである。どんだけスペック高いんだよ!

この回は、「イワレンコフが どれだけスゴいか」を示すエピソードとして描いているはずだ。それが、この恥ずかしがり屋さんのほうが、インパクトが強いように思えた。

名前がない脇役と言えども、とんでもなくキャラが立っていないと『ONE PIECE』には出演できない、という話である。

──さて、いったいこの話が、今週号の『バクマン。』と関連するのだろうか? ハッキリ言って関係ないのだが、どうしても書きたかった。

強いて言えば、今回の感想の部分に、サイコーと亜豆が恥ずかしがる場面が出てくる。恥ずかしがる女の子は良い。まだまだ長いこの先の人生で、おそらく見る機会がないと思うと、余計に良く思える。悲しい話やね……。

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バクマン。 #32-2 「電話と前夜」 金未来杯の受賞者と女性らしさ

『バクマン。』 32 ページ 「電話と前夜」 (週刊少年ジャンプ 2009 年 19 号)

Gateau Roule Fraises (by PetitPlat by sk_) (by PetitPlat by sk_)

いままでに自分が読んだマンガの冊数は、かなり少ない。1,000 冊には届かないはずだ。

『ジョジョ』だけでも 100 冊近くあるから、3 桁以上は確実に読んでいる。これくらいは 30 年以上もダラダラ生きていれば、誰でも読むだろう。「マンガ読み」を自称するには、何冊くらいを読めばいいのか……。

これは海外の OTAKU からすれば、ぜいたくな話かもしれない。「パンがなければウッドマンズケーキ(※)でも食べればいいのに」みたいな言いぐさだろうか。

新宿区神楽坂にある神楽坂ロールを販売するウッドマンズケーキ皇室御用達のロールケーキが置いてある)

まぁ、『バクマン。』をこれだけしつこく読んでいる人間は少ないと思う。それでも自分以上の読み手は、いくらでもいる。本当に、どの世界にもスゴいヤツはいるものだ。そのセンス、オレにくれよ!

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バクマン。 #32-1 「電話と前夜」 ジャンプ読者の平均年齢と妄想

『バクマン。』 32 ページ 「電話と前夜」 (週刊少年ジャンプ 2009 年 19 号)

Reservoir Dogs but with schoolgirls (by steveleggat) (by steveleggat)

今週号の『いぬまるだしっ』は面白い。カラー表紙の裏に人物相関図があり、新妻エイジや佐々木編集長が普通に出てくる。よっぽど、エイジの「連載を終わらせる権利」という発言を意識しているようだ。

けっきょく、新妻エイジが終わらせたかった嫌いなマンガって、なんだったんだろう……。

『バクマン。』ではジャンプの連載作品のタイトルがよく出てくる。ほかのマンガや作者・編集者をネタにすることは、一昔前のジャンプには多かった(『幕張』とか)。最近では見かけなかったので、『バクマン。』で『ToLoveる』などの名前が出ると、すこしドキドキする。──何かウラがあるのかな、と。

内輪ネタに終始するのは良くないが、たまにはジャンプのマンガ家同士でネタにしあって欲しい。

そういえば、『バクマン。』のキャラクタへ声をかけたのは、冨樫義博先生が初めてだったはず。『HUNTER×HUNTER』の連載中の話だから、今から 100 万年以上前の話か……(休載長すぎ)。

バクマン。 #11-1 「後悔と納得」 見吉のパンチと岩瀬の涙 : 亜細亜ノ蛾

『いぬまるだしっ』や『SKET DANCE』でエイジ(のコスチューム)が出てきた。ネタにするくらいだから、ジャンプの中で両作品の作者と『バクマン。』の作者は仲が良いのだな、と読者は思う。

しかし──『バクマン。』のほうでは『いぬまるだしっ』も『SKET DANCE』も名前が出たことは、ない(たぶん)。なんとなく、意識のすれ違いを感じてしまった。

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バクマン。 #31-4 「火曜と金曜」 『カラフジカル』の可能性と涙

『バクマン。』 31 ページ 「火曜と金曜」 (週刊少年ジャンプ 2009 年 18 号)

ph4すっぽん (by htsh_kkch) (by htsh_kkch)

「中井の目にも涙」と書くと、なにやら ことわざのように思える。意味は、ない。

今週号に出てきた、キラキラと光りながら涙がこぼれる中井の目のアップは、「中井が描く絵のイメージ」だろう。中井自身は、自分のことを こうやって見ているのかもしれない。

10 年以上前の『エヴァンゲリオン』ブーム(笑)の時に、面白い指摘があった。抽象すると、このようなことだ。

「オタクは少女をオカしたい、自分のモノにしたい、そして、自分自身が少女になりたい

その通りだと思う。「オタクは」と限定することなく、「(一部の)男性は」でも間違いではない。

なりたい対象は少女でも少年でも良いのだが、とにかく無垢なる存在にあこがれる。キレイだからこそ壊したいが、同時に壊されたい(ATOK は「恋わされたい」と変換してビックリした)。

でも、他人に触れられるのは恐いから、「理想の自分」が自分を乱して欲しいのだ。そういう感情は、確実に存在する。

わざと主語をボカしたが、上の 2 段落は、かつての自分の姿でもあるのだ。いまはもう、忘れてしまった。ハシカのようなモノだったのかもしれない。「あー、一度、アスカになりたかったなー」、と。綾波は、シンジの父ちゃんと■■■しないとダメだしね。

ということで、マンガ家などの絵画や映像を扱う芸術家は、自分の理想像を作風に投影している、と思う。

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バクマン。 #31-3 「火曜と金曜」 『hide out door』と中井の妄想

『バクマン。』 31 ページ 「火曜と金曜」 (週刊少年ジャンプ 2009 年 18 号)

Vintage Postcard ~ Cupid (by chicks57) (by chicks57)

今回の感想の範囲には、『hide out door』の掲載分が含まれる。

蒼樹と中井の作品は、「金未来杯に出る福田組の中では一番下の評価」という前フリが、今までに散々と描かれてきた。それなのに、たとえば見吉のウケは良い。サイコーとシュージンも、中井の絵の完成度におどろいている。

いつものように、「落として上げる作戦」だったのかもしれない。

それだけに、今回で上がった『hide out door』の評価が落ちないか、すこし心配である。

亜城木夢叶と同じく、蒼樹と中井は原作と絵に分かれて描く。だからというわけではないが、『hide out door』は『疑探偵 TRAP』の一番のライバルだと思う。

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バクマン。 #31-2 「火曜と金曜」 くずした絵と『疑探偵 TRAP』

『バクマン。』 31 ページ 「火曜と金曜」 (週刊少年ジャンプ 2009 年 18 号)

Confetti for the masses (by looking4poetry) (by looking4poetry)

絵でも文章でも、作品を作りながら、「自分は天才ではないか」と 8 割以上は確信する人が多い(ソースは脳内)。

しかし、いざ作品が完成すると、自分のかいた物をこの上なくヘタに感じたり、とても手が届かない高みを見たりしてしまう。今週号のサイコーのように。

自信過剰になったり落ち込んだり、その繰り返しを続けられる者だけが、本物だ。

本物だろうがニセモノだろうが、プロとして飯を食っている人もいる。高みを目指して職に困るか、妥協して食にありつくか、難しい問題だが……。

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バクマン。 #31-1 「火曜と金曜」 『KIYOSHI 騎士』掲載とダンス

『バクマン。』 31 ページ 「火曜と金曜」 (週刊少年ジャンプ 2009 年 18 号)

Champion (by drp) (by drp)

今週号の『バクマン。』にはおどろいた。金未来杯にエントリーされた 4 作品が、すべて載っているのだ。各作品は 1 ページだけだが、これはスゴい。

4 作品とも、キッチリと絵柄が変わっているのだ。どれだけ絵を習得したらこんな芸当ができるのか、想像も付かない。

──ひょっとしたら、描いたのはアシスタントかもしれないが……。

マンガ作品という世界の中に、さらにマンガを描くということは、世界をいくつも創造することだ。『バクマン。』を描いただけでも神に等しいのに、その上で一部とはいえ別の作品も作るとは、作者の底が知れない。

しかも、載っている 1 ページから前後の話の広がりまで感じさせる。

面白いことを考えた。たった「6 語」で書かれた SF の超短編があるそうだ。同じようにマンガも「6 コマ」とか「1 ページ」制限で作品を募集してはどうだろう。

族長の初夏 : わずか6語の超短編SFいろいろ

もちろん、4 コママンガのように完成されたジャンルを描いても面白くない。そうではなく、今週号の『バクマン。』のように、広がりを感じる作品が良い。

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バクマン。 #30-4 「団結と決裂」 人の意見と作品への自信

『バクマン。』 30 ページ 「団結と決裂」 (週刊少年ジャンプ 2009 年 17 号)

And I'll Say a Little Prayer for You... (by TW Collins) (by TW Collins)

福田の提案した「意見の出し合い」は、良いアイデアだ。しかし、自分の作品が 1 番面白い、と言い切る態度のほうが、もっと素晴らしい。

マンガ家は、みんな自分の作品に自信を持っている。

さよなら絶望先生』で自虐ネタを描くことが多い久米田康治先生も、絶っっっ対に「オレのマンガが一番だ!」と思っているに違いない。

自分のかいた作品を他人に評価される──なんと恐ろしいことか。このブログも、ありがたいことに多くの人(ボット含む)に読まれているようだ。ときどき、ちょっと、恥ずかしい。

サイコーたちがいる場所は、もっと過酷だ。仲間同士でお世辞も無しで 意見しあうのも厳しいが、ジャンプにマンガが載れば、読者たちの無慈悲なアンケートにさらされる。

マンガは読者のため──ではなく、自分のために描く、というのがマンガ家の本音だろう。自分が面白いと思った作品しか、描きたくない。誰だってそうだ。しかし、ジャンプに作品を載せる以上は、アンケートの結果がついてくる。そんな評価に左右されたくないのに……。

アンケートのことを知らず、高い順位を取っていたエイジは、原作者たちの理想の姿なのかもしれない。

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バクマン。 #30-3 「団結と決裂」 福田組退散とネームの見せ合い

『バクマン。』 30 ページ 「団結と決裂」 (週刊少年ジャンプ 2009 年 17 号)

"Is that ALL you wear when you Flickr???" (by Jim Frazier) (by Jim Frazier)

もう、とっくに気が付いている読者がほとんどだと思うが、『バクマン。』の絵柄は連載当初から変わっている。それも、極端に変えてきているのだ。

とくに、今週号の後半に出てくる新妻エイジの仕事部屋のシーンは、今までの「小畑絵」からは想像できない。たんなるデフォルメではなく、別の表現を生み出そうとしているのだ。

ひょっとしたら、自分が『DEATH NOTE』ばかりを見ているから、そう感じたのかもしれない。『ヒカルの碁』や『BLUE DRAGONラルΩグラド』でも、こういった「くずした絵」を描いていたっけ?

小畑さんの絵は、「良く言えばリアル・悪く言えばデッサン風」という、初期のサイコーの絵と似た傾向である。この絵柄のせいで、キャラクタの表現できる範囲が決まっていた。同じことは、ほかのリアル志向のマンガ家・イラストレータにも言える。

それが、ギャグも描けるしアメコミ風も描けるようになってきた。よく見ると、ものすごく太いオモ線もあり、おそらく筆ペンで描いている。とにかく、いったいいくつの技術で描いているか分からないくらいだ。

たぶん、小畑健という人は、美麗な絵の路線で一生やって行けたと思う。それを、何でも描けるような絵描きにしていったのは、大場つぐみが書く原作の力だと思うのだ。

このまま行くと、亜城木夢叶・新妻エイジ・福田・中井、それぞれの絵柄で中身まで描き上げるのではないか──。さすがに、それはないかな(やり遂げそうで恐い)。

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