『バクマン。』 30 ページ 「団結と決裂」 (週刊少年ジャンプ 2009 年 17 号)
もう、とっくに気が付いている読者がほとんどだと思うが、『バクマン。』の絵柄は連載当初から変わっている。それも、極端に変えてきているのだ。
とくに、今週号の後半に出てくる新妻エイジの仕事部屋のシーンは、今までの「小畑絵」からは想像できない。たんなるデフォルメではなく、別の表現を生み出そうとしているのだ。
ひょっとしたら、自分が『DEATH NOTE』ばかりを見ているから、そう感じたのかもしれない。『ヒカルの碁』や『
BLUE DRAGONラルΩグラド』でも、こういった「くずした絵」を描いていたっけ?
小畑さんの絵は、「良く言えばリアル・悪く言えばデッサン風」という、初期のサイコーの絵と似た傾向である。この絵柄のせいで、キャラクタの表現できる範囲が決まっていた。同じことは、ほかのリアル志向のマンガ家・イラストレータにも言える。
それが、ギャグも描けるしアメコミ風も描けるようになってきた。よく見ると、ものすごく太いオモ線もあり、おそらく筆ペンで描いている。とにかく、いったいいくつの技術で描いているか分からないくらいだ。
たぶん、小畑健という人は、美麗な絵の路線で一生やって行けたと思う。それを、何でも描けるような絵描きにしていったのは、大場つぐみが書く原作の力だと思うのだ。
このまま行くと、亜城木夢叶・新妻エイジ・福田・中井、それぞれの絵柄で中身まで描き上げるのではないか──。さすがに、それはないかな(やり遂げそうで恐い)。
意見を出し合って
福田の切り替えは早い。短気で強引なのだが、押してもダメだと分かればすぐに引く。簡単に言うと「頭がいい」のだと思う。
3 組でネームを見せ合うという、福田がこの場で急に出した発想は面白い。
引いた視線で見れば、今回は「ジャンプのマンガはアンケートさえ取れれば良いのか?」「売名行為に対して編集部へ抗議することは正しいのか?」といった問題を読者(とマンガ家・編集者)へ投げかけた。その上で、「内容で 勝てばいい
」という結論を出す。さらに、不正じゃない
協力する方法まで提示しているのだ。
2-3 話くらい費やしても良いくらいの内容を、5 ページくらいで描いてしまった。いつもながら、スゴい。
福田の提案を聞いて、すぐに周りが動き出す。福田組の中で一番モタモタしそうな中井までもが、すぐに蒼樹へ連絡を取っている。福田の気に飲まれた、というところか。──やはり、このマンガの主人公は福田、で良い気がする。
ご迷惑おかけしました
編集部を去る際も、キッチリとあいさつをしているのが笑った。おそらく、これは福田が言っている。どこまで礼儀正しいンだよ!
佐々木と瓶子の「司令・副司令コンビ」(違う)が、マンガ家の誰かの姿を福田組に重ねて話している。これは、誰のことだろう?
川口たろう先生は「編集部の目は 節穴だーっ
」とは言わなさそうだ。それに、連載会議に出されるところまでも行かなかっただろう。
そうすると、やはり──ガモウひろし先生の話なのだろうか……?
ネームを 見せ合う
夜中にマンションの一室で男女が一堂に会して──ネームを読み合う 6 人である。マンガ家や同人作家には、当たり前の風景かもしれない。
真剣にネームを見る亜城木たちと、飛び入り参加のエイジのコミカルさのギャップに笑った。しばらく見ないうちに、エイジの髪が伸びた気もする。たぶん、前髪は自分で切っているのだろう。B とか L とか的には、福田が「しゃーねェーなー!」とか言いながら、エイジの髪を切る姿を想像するのも良い。
こういった「マンガ内マンガ」は、内容までは描かれないことがお約束だ。それでも、それぞれの独白で作品の空気が伝わってくる。
具体的な感想が読者に見られたのは、サイコーとシュージン・福田だけである。3 作品の傾向は分かったが、善し悪しまでは分からなかった。
エイジが一人で笑い転げているコマは、じつは重要である。これについては次回(明日)に書く。それにしても、デッサンがおかしいのは、わざとだろうか。