川端康成一覧

『眠れる美女』 川端康成 – 触れられる遠さ

『眠れる美女』 川端康成・著

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目覚めてくれるからこそ──愛でられる

この川端康成氏が世界へ向かって挑発する耽美な短編小説集は大好きで、寝る前に何度も拾い読みしています。美しい表現の文章に没頭していると──とても寝苦しい夜になる。

表題作の『眠れる美女』は、文字どおりに眠っている若い女性たちと、年老いた男性が一緒に眠る話です。なんだか ほのぼのとした童話のような印象ですよね。

──しかし、その場所は あやしい女主人が経営する(かどうかも不明な)宿で、何人も登場する女性たちは薬物によって眠らされている。しかも、おそらく全員が未成年で、裸の状態です。

おもしろそうでしょ?

世のラノベ作家は、身近なところでパクってバレてばかりいないで、この名作を下敷きにして自分を試せばいいのに──などと思ったりします。グズグズしているうちに森博嗣先生が発表してしまいましたね。

『少し変わった子あります』 森博嗣 – 有料と抽象の ご飯 | 亜細亜ノ蛾


同時に収録されている『片腕』も楽しい。こちらも題名の通り「女性の片腕」と男の話です。なんの前触れもなく、男が娘から片腕を借りる場面から物語は始まる。

──え?

そう、こちらは幻想小説といった感じの話ですね。設定だけを見れば こちらも絵本に描けそうなメルヘンだけれど、(そうか?)、全体的に狂気が満ちている。きわどい場面は皆無ですが、なんだかエロティックです。


もう一作の『散りぬるを』は、森博嗣先生が「ミステリィ作品」として紹介していた(『MORI LOG ACADEMY』だったかな?)ので興味を持ちました。

ある殺人犯の内面に迫る作品で、殺人事件を犯した過程の記録と犯人の精神鑑定が繰り返し出てきます。

──なるほど、たしかにミステリィ的な一面もありますが、幻想的な印象が濃いですね。犯人と同化するような点では、『羊たちの沈黙』の前作・『レッド・ドラゴン』と似ています。

以上の 3 作品について感想を書いていきます!

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『伊豆の踊子』 川端康成 – 自分自身の道を迷う踊子と「私」

『伊豆の踊子』 川端康成・著

nanadaru (39)
(思ったよりも──かたそうな踊子)

まさか川端康成の名作を紹介する日が来るとは、昔の自分には想像ができませんでした。文学の世界なんて、興味はなかったのです。読んだとしても、探偵小説(ミステリィ)か、好きな映画を小説化した本くらいでした。

そういう人にこそ、この『伊豆の踊子』はピッタリです。なぜなら、川端康成の作品の中でも、この短編は非情に読みやすい。

ただし、現代の日本と比べると、『踊子』で描かれる世界──昔の日本(1910 年代くらい?)は、まるで異世界です。

まず、私は二十歳、高等学校の制帽をかぶり──と最初に主人公が自己紹介をした時点で、つまずく。「ハタチで高校生──留年?」と思ってしまう。そのほか、「当時の日本」を知らなければ、疑問に思うことが多いです。

そもそも、「おどりこ」って──、何?

ということで、この短編小説は、ファンタジィと思って読みましょう! 分からないところは、自由に想像して補えばいい。

日本人として生まれたからには、川端康成が描く美しい日本語の世界を、一度は体験して欲しいですね。

自分は、上の新潮文庫版で読みました。いまなら、荒木飛呂彦氏が表紙を描いた版もありますよ!

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