『完全犯罪クラブ』
意欲作なのか、内容を詰め込みすぎ印象が惜しい、犯罪サスペンス映画の佳作です。
ストーリィ
高校のスーパスターであるリチャード・ヘイウッド(リチャード・ヘイウッド)が、さえない同級生のジャスティン・ペンデルトン(マイケル・ピット)と組んで、完全犯罪を目論む。
女性刑事のキャシー・メイウェザー(サンドラ・ブロック)と、風紀課から殺人課に変わったばかりのサム・ケネディー(ベン・チャップリン)が捜査に当たる。他の刑事が少年達の仕掛けた罠に翻弄される中、キャシーだけが事件の真相に気付きます。
高校生の二人はともに賢く、なかなかのトリックと、ラストのアクションは見応えがあります。
いろいろと問題の多い作品ですが、ミステリィやサスペンスのファンは、見ると色々ためになるかもしれません。

- 完全犯罪クラブ
- サンドラ・ブロック ベン・チャップリン ライアン・ゴズリング
- ワーナー・ホーム・ビデオ 2006-10-06
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by G-Tools , 2007/08/27
サンドラ・ブロック
サンドラ・ブロック演じるキャシーは、過去に「高校生のスーパスター」と結婚し、失敗した苦い思い出とトラウマを持っています。
その反動か、パートナになった男性刑事と次々に関係を持った、というのがほのめかされます。
──さて、これだけを見ると、昨日紹介した『ツイステッド』に似ていますね。
サンドラ・ブロックのなまめかしい演技は、それはそれで見物(みもの)なのですが、本作の雰囲気には合わない。どうも余分な演出に思えます。
元結婚相手はキャシーに暴力をふるい、いまは刑務所の中。そんな相手と結婚生活を送っていたので、男性恐怖症になるならわかるけど、なぜ男を誘うのか──。その違和感が、どうも気持ち悪かったです。
ところで、キャシーのあだ名は「ハイエナ」。なぜハイエナなのかは、映画の中でどうぞ。ちょっとしたトリビアですね。
詰め込みすぎ
この映画は、色々な要素の詰め込みすぎでバランスを崩している、というのが最大の問題です。
たとえば、メインの「完全犯罪トリック」は、後半であっさり解かれるくらい杜撰(ずさん)で、しかも現場にはっきりした「証拠品」が残っている。しかし、リチャードの父親が街の有力者のため、保身を考える警察署長は捜査に前向きではない。
このあたりも、どっちつかずな印象です。もっと凝ったトリックを考えるか、権力でねじ伏せるか、どちらかにして欲しいところ。
それでも、けっきょく証拠らしい証拠が挙げらない。そうかと思うと、二人に任意同行を求めた後の尋問が効果的だったり、本当にちぐはぐな印象。
また、高校生の二人は男なのに、なにやら怪しい雰囲気。しかも、スーパスターの方がさえない男子に気がある様子──。
ここも、後半に二人の力関係が明かされ、ちょっとしたどんでん返しのようになっているのですが、わかりにくい。もう少し丁寧に描けば、「少年の無垢な怖さ」が出せたのに、と残念に思いました。
ラストのアクション
ラストにはちょっとしたアクションがあるのですが、ここは良いですね。
「頭の良い少年」という設定が、ようやく活かされたという感じ。このアクションシーンくらいにバランスの良いところばかりだったら、名作になれたでしょうね。
本作のように要素の多い作品は、小説だと「お腹いっぱい」で楽しめるのですが、映画だと胃もたれします。
「ハンバーガーライス・アイスクリーム添え、バルサミコ酢風味」
みたいな作品でしたね。