『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』 刺さる散る落ちる

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シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』 (Sherlock Holmes: A Game of Shadows)

Reichenbach Falls: 4th May 1891
真実は何か──目撃の時が迫る

今作もアクションが良かった!
「ホームズ・ビジョン」と名づけられたスロー・モーションを多用するアクションは、本作でも健在です。
さらには、「ビジョン」を使う別の人物も登場──!?

ロバート・ダウニー・Jrの演じるシャーロック・ホームズジュード・ロウジョン・H・ワトスンがコンビを組んだシリーズ第 2 弾です!
いわゆる「ホームズ像」や「ワトソン役」の代名詞を吹き飛ばす人物像は、今回も健在でした。そして 2 人の関係(意味深)も──?

監督も前作と同様にガイ・リッチーで、気心の知れたスタッフたちが「より おもしろく・より激しくしよう」という心意気が画面を通して感じました。

『シャーロック・ホームズ』は最高傑作のアクション映画! | 亜細亜ノ蛾

ついにジェームズ・モリアーティ教授と対決します!
原作ではホームズの最大のライバルだった教授は、ジャレッド・ハリスが貫禄タップリに演じています。
ホームズ対モリアーティの決着は──!?

シャーロックの兄も登場しました!
弟よりも優れた探偵と言われるほどの頭脳の持ち主であるマイクロフト・ホームズは、スティーヴン・フライがユーモラスに見せてくれます。

親密な 2 人(意味深)

ホームズとワトスンの仲の良さが「意味深」でした!
ことあるごとに 2 人を接近(意味深)させたり、シャーロックに女装させたり、「そっち方面」へ持っていこうとする悪趣味さが笑えます。
でも、「本職」の人たちは怒るだろうなぁ……。

2 人が仲良く並んで寝る(意味深)場面まである!
しかしプロは、そんな場面は笑い飛ばす(プロ?)。
本当にグッと来るシーンは、戦場で傷ついた お互いの肩を自然に抱く光景でした。なぜなら戦いの場では、メアリー・モースタン・ワトスンケリー・ライリー)に この役は務まらないからです。

ワトスンの結婚式も見どころでした。
たまらず夫婦から目をそらして、トボトボと帰って行くホームズが せつない! この寂しそうな感じが素晴らしかった。
──もちろん、そのまま姿を消すような男じゃないですけどね!

命懸けの冒険

ホームズの奇人ぶりが目立つ本作品でした。
そのなかでも、ホルムアルデヒドの「飲酒」は最凶です! いくらなんでも命を落とすのでは!?
普段は友人の奇行生温かく見守るワトスンですが、この毒物の摂取を止めなかったことは納得できません。
あの時代にはホルマリンの毒性が知られていなかったのでしょうか? もしかして、ホームズのイタズラでラベルを貼り替えたのかも。医者ならニオイで すぐに分かるでしょう。

それにしても、変な人ばかりの映画だった……。
マイクロフトは、弟のシャーロックよりも頭脳明敏──というよりは、弟よりも奇人でしたね。

ヒロインの不在?

ヒロインの影の薄さも特徴でした。
かなり重要な役柄でありながら、マダム・シムザ・ヘロンノオミ・ラパス)も あまり活躍していません。「女性の相手はワトスンに」という いつもの流れも、奥さまがいるから よそよそしい。

そう、この映画はホームズとワトスンのためにある

その象徴がアイリーン・アドラーの退場です。
レイチェル・マクアダムス演じる「ただ一人名探偵を出し抜いた女性」が、あんなにもアッサリと消えていく──。
ぜひとも次回作で再登場して欲しいですね!

ヒロイン(?)は もう 1 人います。
ハドスン夫人ジェラルディン・ジェームズ)には口やかましい印象を持っていました。しかし、あんな動物園のようなホームの部屋を許して、動物たちの世話まで見ているなんて、並の忍耐ではありません。
夫人に対する「大胆な仮説」も うなずけますね。

ハドスン夫人 – Wikipedia

危険な狙撃手

セバスチャン・モランが渋かった!
ポール・アンダーソンが演じる射撃の名手は、原作では「ロンドンで二番目に危険な男」とホームズに呼ばれながらも、活躍の場面は少なかった。
ところが映画では、ホームズやワトソンたちを直接 苦しめた人物です。モリアーティの使い走りでは終わっていない。モランが いなければ計画は進められなかったため、教授からの信頼も厚かった。

セバスチャン・モラン – Wikipedia

こういう原作の改編は大歓迎です!
おそらく本シリーズを毛嫌いする「シャーロキアン」も多いと思うけれど、原作をそのまま なぞるだけでは楽しい映画になりません。原作者のコナン・ドイルだって、自分の作品のコピーなんて望んでいないはず。

教授の野望

モリアーティの恐ろしさは、犯罪の動機です。
簡単に言えば「金のため」になる。これほど現実的で強い動機は、意外とヒーローものの作品では見られません。普通だったら「(多大な資金による)世界征服」などと言い出しそうです。

つまり教授は、企業家として成功したかった。じつに人間らしい理由で頭脳を働かせる教授は、犯罪行為さえ止めればよかっただね。それならホームズを敵に回さずに幸福を手に入れられたでしょう。
それではホームズ映画に ならないけれど。

最後の瞬間

ライヘンバッハの滝」が映った瞬間に緊張しました!
原作ではモヤモヤとした空気を残した終わり方でしたが、映画ではハッキリと「その瞬間」をワトスンに目撃させています。直前のチェス対決も探偵物らしくて分かりやすかった。

最後の事件 – Wikipedia

さて、ホームズは滝の底に沈んだままなのか?
──と観客の気を引く時間もなく、エンディングを迎えます。ここで もうすこしヤキモキさせて欲しかったけれど、時間制限の厳しい劇場映画の弱点ですね。次回作まで保留にしても良かったかも?

おわりに

出てこないと思ったレストレード警部エディ・マーサン)の登場にニヤリとしました。
でも、どういう罪状で教授の資金を押収したんだろう……? 教授は犯罪の証拠を残していないはずだし、あれではスコットランド・ヤードが強盗にしか見えません。──という(現実世界での警察署への)皮肉なのかな。

「THE END?」ということで、次回も楽しみ!