『セルラー』 電話を切られたらオシマイ──!

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『セルラー(CELLULAR)』

これは見事なサスペンス映画です。

緊張感たっぷりの展開と、笑える要素のバランスが絶妙で、途中のカーアクションも迫力がある、という「映画の見本」のような作品で、どなたでも楽しめる映画です。

ストーリィ

ヒロインのジェシカ(キム・ベイシンガー[ad])は子供思いの教師で、ある日、突然 誘拐されます。監禁された部屋は二階で脱出できず、設置されている電話機も、誘拐犯のイーサン(ジェイソン・ステイサム)に壊されてしまう。絶体絶命の状況ですが、なんとか電話機を通話可能な状態まで復元。しかし、ダイアル先は選べず、運任せ──。

全くの偶然で、主人公・ライアン(クリス・エヴァンス)の携帯電話に繋がりましたが、いかにもイマドキのワカモノという感じで、初めはジェシカの話を信じません。

そんな彼が、なぜジェシカの話を信じ、行動を起こしたのか。普段の彼であれば、すぐに切ってしまうはずなのに、なぜ? ──このあたりの脚本も見事です(ある程度の「ご都合主義」には目をつぶろう)。

このあとの展開も、ハラハラドキドキの連続で、まったく飽きさせません。オススメの映画です。

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セルラー
キム・ベイシンガー クリス・エバンス ジェイソン・ステイサム
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電話が命綱

ジェシカのからしてみれば、「この電話が切(ら)れたらお終い」、という状況──。

──どこかで聞いたような気がすると思ったら、なんと、『フォーン・ブース』と同じ脚本家、ラリー・コーエンの脚本でした。

『フォーン・ブース』 舞台は「電話ボックス」だけ! : 亜細亜ノ蛾

本作品も、本当に電話の使い方がうまいです。単純に考えても、

  • 通話が切れてしまう
  • 電波状態が悪くなる
  • 携帯電話機の電池切れ
  • 万が一の混線
  • 携帯電話機が壊れる

──と、様々な困難が考えられます。そして──じつは、上記の全部を、映画内で消化している(!)というのが凄いです。

女は強い

じつに細かいところまで脚本が作り込まれていて、意外なところが伏線になっています。ざっくりみた感じ、すべての伏線は回収されるので、安心して見られます。よく、「──え、アレはどうなったの?」ってありますからね……。

本筋外の伏線で面白かったのが、「女の尻に敷かれる男」が繰り返し出てくるところ。

冒頭で、主人公は元カノと会います。彼は、いい加減な性格のためにフラレたばかりなのですが、まだ未練たっぷり。よりを戻すため、元カノのいいなりになります。この、「いい加減な性格を直す」という(下心見え見えの)決意が、ジェシカの電話を切らなかった理由でもあるわけです。

主人公の男友達も、出会ったばかりの女の子のいいなりになったり、このあと出てくるボブ巡査部長(ウィリアム・H・メイシー)も、奥さんのいいなりになって副業を始めようとしています。

ヒロイン・ジェシカの旦那さんも、いかにも頼りなさげ。ジェシカの一人息子も、「11 歳にしては身体が小さい」という──。

極めつけは、途中で出てくる弁護士(リック・ホフマン)は、オカマ言葉でママと楽しそうに電話しています。ここは、本当に面白くてナイスな演技ですよ(吹き替え版も聞いてみよう)。

ということで、この作品の中で「男らしい男」って、じつは誘拐犯グループだけ、という恐ろしい事実に気がつきました。何かの暗喩でしょうか……。