ナイト & デイ – 恋の逃避行は騎士のごとく急がず休まず

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『ナイト & デイ』 (Knight and Day)

Knight Horse and Sword
(夜でも昼でも騎士は強くないと──ね)

これは面白いアクション映画でした!

ロイ・ミラー(トム・クルーズ)というキケンな香りがする男と、ジューン・ヘイヴンス(キャメロン・ディアス)という(平凡な)女性との、出会いと逃亡劇を描いたアクション & ラヴストーリィです。

トム様が歯をきらきら輝かせながらアクションをこなすお姿と、キャミ様が目をぱちくりさせながら恋にハマっていく様子を、むずかしいこと言いっこなしで見ているだけでも楽しめますよ!

この映画の一番素晴らしい点は、分かりやすいこと。あまりにも分かりやすく作ってあるために、逆にすごさが分からなかった人も多いのでは。ほかの映画を観ているとよく思う「──え、いまの何?」がまったくない。

仲の良い友だちと一緒か、できれば恋人同士で観たい映画でした。

ここからは、もうすこしだけ内容に踏み込んだ感想を書いていきます。

分かりやすさ

『ナイト──』は、細部に至るまで、徹底的に分かりやすく作られていました。けっこう「ロイは善人? 悪人? (変人?)」と観客を悩ませる場面があったり、「どんでん返し」があったりするのに、するすると内容が頭に入ってくる。

日本語吹き替え版で観た──という点も大きいかもしれません(自分の場合は、劇場映画では初めてのこと)。これからの時代は、吹き替え版ですよ!

自分は、DVD では「音声は日本語・字幕あり」で映画を楽しんでいます。こうやって観ると、いかに──字幕は情報が削られているかが分かる。吹き替えではいいセリフなのに、字幕だと平凡だったりします。

また、『ナイト──』はトム・クルーズが主演だし、「スパイ」というキィワードが出てくるため、『ミッション:インポッシブル』(M:I)シリーズを思い起こしました。

ところが──、『M:I』は、「こんなにすごい作戦なんだぞ! スゲェだろ!!」という説明の場面が妙に多いです。たしかに、やっているワイヤー・アクションはすごいけれども、説明セリフがくどすぎる。

動きも音声も「豪華キャスト」もないマンガの場合は、どうしても説明的なシーンを増やす必要があります。そうしないと、読者には伝わりにくい。小説は文字だけなので、余計に説明口調になる。

とはいえ、説明はどこまでいっても、面白くはない。

『ナイト──』は、アクションならアクション・ラヴシーンならラヴシーン、と説明なしで場面が切り替わります。テンポが良くて、観ていて飽きない。カメラ・アングルやシナリオが練られていて、「何が起こっているのか」もすぐ分かる。

たとえば、「車に乗って移動中のロイとジューンが、二人とも『お休み』と言って寝てしまう──」というビックリするような場面が出てきます。すぐに「種明かし」されるのですが──、じつはその前から伏線が映っている。

「どうして、ロイは空港で騎士(ナイト)のフィギュアを買ったのか」とか、「ロイが監視している家は何?」といった謎も、劇場を出るまでにはキレイにとけている。そういう意味では、「あとに残る」映画ではないのかも……。

ただひとつ、意味不明だったのは──「ロイをわざわざ飛行機に乗せてから、飛行中に敵が襲いかかってきたこと」ですね。「空港で襲えよ!」と──家に帰ってからシャワーを浴びて、寝る前に気がついた。

失敗?

どうも制作の前も後も苦労の多かった作品らしく、興行収入的には失敗とのこと。ええー、うそーん!

その理由として考えられることが、いくつか下記のリンク先に書いてありますけれど──、うん、それは観客に見る目がない(観に来なかった人が悪い)だけです。

参考: ナイト&デイ – Wikipedia

クルーズとディアスでは若年層の観客を動員することが難しいという声が挙がるのは、まぁ仕方がないでしょうね。正直、自分も最初は「ヒロインはもうちょっと若いコのほうが……」と思った。

でも、観ているとだんだんと、ジューンのかわいらしさが分かってくるんですよ。その「内からにじみ出る」ような演技は、キャメロン・ディアスくらいのキャリアが必要です。

ラストまで安心

モヤモヤを残さずに、最後はキッチリと終わっていました。それでいて、続編も期待できそうな終わり方です(たぶん、ないだろうけど……)。

ラストに出てきた「チケットのプレゼント」もシャレていましたね。あのラスト・シーンのために、ナイト家の(あまり意味がなさそうな)場面が出てきたのか、と納得する。うまい演出です。

余談

個人的には、このインターネット時代に「&」を含むタイトルは避けて欲しいです(原題では『Knight and Day』)。一部の携帯電話など、環境によっては、アンド記号のあとに「amp;」と続いて見えるのでは?

これはまぁ、(説明がメンドウなので)飾りだと思ってください……。

参考: 文字参照 – Wikipedia

あと、カメラ・マニアならすぐ気がつきますが──、ものすごく背景がぼけた場面が多い。なにしろ、寝ているトム様を映した場面では、目にはピントが来ているのに鼻の頭がぼけている

トム様、鼻が何メートルあるのですか!

おそらく、いま流行中の「デジタル一眼レフカメラで撮影した動画」を多用しているのだと思います。普通の映画用カメラでは、あのボケ味は出ない──と思う。

蛇足てくてく

どこまで続けられるのか不安になりながらも──、今日もタイトルはゲーテの言葉から借りました。

今回の言葉は、日本は「急がず休まず」としてよく知られています。自分もここだけ借りようとしたら、原文では「星の如く急がず、しかも休まず」というらしい。「星……騎士……!」とひらめきましたね。

ゲーテの「星の如く急がず、しかも休まず」という言葉をドイツ語にすると何と言う… – Yahoo!知恵袋