『バクマン。』 98 ページ 「握手と手直し」 (週刊少年ジャンプ 2010 年 39 号)
今回は、ドン引きしているサイコーが登場しました。
「ジャンプ」マンガの主人公と言えば、自己中心的でワガママで勝手(全部同じ)なキャラクタばかりです。主人公が言うことには、ほかのキャラも(いやいや)したがう。
極端な例で言うと、『HUNTER×HUNTER』に出てくるキルアは、主人公の「ゴンと心中(しんじゅう)する」といった発言をしています。キルアは、文字通り命を投げ出す覚悟で、ずっとゴンの近くにいる。
こういった関係が成り立つためには、2 人の意識に大きなズレがないことが重要です。性格は違っていても問題ないが(むしろ違ったほうが良い)、お互いの向いている方向が異なっていると、いつか関係が壊れてしまう。
今回の『バクマン。』には、爆発しそうなくらいにノリノリのシュージンと、引きまくっているサイコーが出てきます。
はたして 2 人の関係は、大丈夫なのか !?
ぜってー 負けねー
もう、岩瀬が主人公で良いのでは。
──そう思うくらい、このページの岩瀬が素晴らしい!
夏の青空と雲を背負って、逆光ぎみの振り返りポーズ──、とポートレイトのお手本のような構図です。「夏色少女」という感じですね(実年齢は忘れよう)。1 ページいっぱいに描かれた、岩瀬のポスタが欲しい!
自分の中では完全に、細田守監督のアニメ映画──下の 2 作品のイメージと、今回の岩瀬が重なりました。
岩瀬は、いままでずっと、シュージンの顔を「真正面から」にらんでいました。それが今回、去っていくシュージンの後ろ姿を、「振り返って」見ている。
──これは、二人の距離感からすると、逆に描いたほうが合いそうですよね? なぜ、「いままでは目をそらしていたが、今回は正面に向き合った」としなかったのでしょうか。
つまり、これまでの岩瀬は、本当はシュージンのことが好きなのに、逆の気持ちを表情に出していた──という表現なのでしょう。真正面に向き合っていても、岩瀬の本当の感情は隠していた。
これからの岩瀬は、シュージンと向かい合った時に、素の表情が出せるでしょう。──まぁ、彼女のことだから、照れてしまい、またシュージンをにらみつけるかも。
ようやく、シュージンは互いを励みにして 頑張ろう
──の握手を握り返しましたね。岩瀬にとっては、8 年間待った──いや、待っていてもあり得ない握手です。
おそらく、シュージンと岩瀬は、恋人としてつき合っていたら──うまくいかなかったのでは。そう考えると、いまの関係が、お互いにとって理想の状態なのでしょうね。
サイコー わかったぞ
いま、恐ろしい事実に気がつきました。
なんと、亜城木夢叶の作品には──、主人公とお互いに認め合ったライバル
キャラが出ていなかったのです! ──たぶん(たぶんかいッ!)。出てくるのは「敵」ばかりでしたよね。
亜城木夢叶は、「福田組」同士で金未来杯の獲り合いをして、新妻エイジをずっとライバル視してきました。また、サイコーと亜豆もお互いに高め合う関係です。それなのに、ライバルとの関係を作品には生かしてこなかった。
これは、大場つぐみさんが、いままで意図的に出してこなかったのでしょうね。「いつか作中作のネタに使える」と思って、温存していたのだと思う。
よくわかんないけど
今回のサイコーは、久しぶりにエンジンがかかったシュージンを見ても、何の感動もない。普通だったら、それほど乗り気じゃなくても、応援する気持ちが出てくるはず。
──そう、サイコーは普通ではないのです……。
サイコーくらい他人に冷たい主人公は、ちょっと思いつきません。ブチキレた「ゴンさん」ですら、キルアのことを気にかけていたのに……。
あと、すこし気がかりなことは、とりあえずの目標は 「NATURAL」の 上にいくこと
──と消極的なところです。「この勢いのまま、『CROW』も抜く!」という意気込みが聞きたかった。
こんな 子供騙しの 暗号に…
セリフがないページなので、隣とまとめます。
いきなり『PCP』が始まりましたね! サイコーの画力は、もはや小畑健さんと同じレベルになったようです。本編との絵柄の違いは、影のつけ方くらいでしょうか。あとは、意識してコマとセリフを減らしている。
ちょっと笑ったのが──、明知はうしろから見ると、「ジャンプ」編集長の佐々木みたいに見えます。小学生にしては、ちょっとヒタイの面積が広い気がする。──まぁ、それはマンガ・アニメキャラの宿命ですケド。
あと、明知の顔は、すこしまぶたが厚ぼったいから、エイジのイメージなのかも。たまにエイジがする「(キリッ」の表情に近いですね。
それよりなにより──、どちらも、まゆ毛が細い。