サマーウォーズ
「ニッポンの夏、サマーウォーズ」という感じの映画でした。見ていて恥ずかしくなるくらいに、「ニッポンのアニメ」感が全開なんですよね。だがそれがいい!
ヒロインと主人公は、これまた典型的な「アッケラカンとした天真爛漫な彼女と、礼儀正しくて気弱なボク」という、和製アニメ・マンガ作品ではオナジミです。海外にも多い村上春樹の読者にも安心ですね。
いわゆる「セカイ系」に属する作品ですが、舞台は古式ゆかしい田舎の家です。「世界」が相手なのに、この家の中──しかも居間だけでほとんど物語が完結してしまう。
そう、この『サマーウォーズ』は、いい意味で「日本的コヂンマリ」な作品です。ムズカシイことを考えず、ビールでも片手に、またはスイカでもかじりながら、夏場に見たい映画でした。
日本人らしさ
インターネット上の仮想世界・「OZ(オズ)」によって、世界中の人々の生活が支えられています。
現実世界でも、子どもからお年寄りまで携帯電話を持っていますよね。しかし、本作のように「ほぼ全員が仮想世界上で自分のアバターを持っている」なんて、ちょっと考えられません。うちのオカンなんて、メールの存在すら知らない。
この、「OZ」と「アバター」が物語の中心になっている──それは間違いありません。しかし、どうも自分の目には、それはあくまでも観客の目を惹くための商業的な理由であって、本当に描きたかったのは、「ニッポンのイナカ」と「(昔の)日本人」なのだと思いました。
良くも悪くも日本的
この映画で一番ハラハラした場面は、主人公の素性を住民基本台帳から調べだして、なおかつプリントアウトして家まで持ってくるところです。そして親族一同、誰もそのことについて「違法行為だ」と思っていない。
ところがこれこそ、「(昔の)日本的」だと思いました。「家族の一員となるのだから、どこの馬の骨か分からない者の事を調べて何が悪い。それを一族に開示するのは当然だ」というワケです。──そんなことは、現代の日本では通らないのですが、登場人物と同様にあの場面で違和感を持たない人も多いのでは?
炎天下の高校野球で、15 回の延長戦を 2 日連続で一人のピッチャが投げ抜く(投げさせる)──というのも日本的だと思う。ちょっと詳しくないので間違っているかもしれませんが、アメリカではこんなことは起こらないのでは? 「ベースボール」と「野球」の違いということで、『美味しんぼ』を思い出しました。
そのほか、これでもかというくらいに、「ニッポン全開・日本的・和風」な思想・風景・人物が出てきます。何日間も替えていない油で揚げる「日本カキアゲ」みたいでゲップが出そう。
分かりやすいキャラクタ
ストーリィの展開上、(男)主人公になる候補は 2 人いました。ジャンケンの結果で「彼」に決まったのです。
自分はなるべく前知識なしで映画を観るので、じつは主人公が誰か分からないまま本作の DVD をコンピュータへ入れました。──ところが、一目で「あ、彼だ」と主人公が分かる。キャラクタデザインが貞本義行さんだったら、彼だろう、と。
──いま考えると、「金髪クシャクシャ頭のメガネ少年」と「黒い肌をした少女」が主人公という、『ふしぎの海のナディア』は新しすぎるな……。
ちょっとした思いつき
あまりにも日本日本した映画なので、ちょっとアイデアを思いつきました。
「サマーウォーズ」に出てくる「OZ」は、かなり応用が利きそうですよね。仮想現実の世界というだけなら多くの作品があるし、仮想世界が生活と密着しているのは話が広げやすい。
そこで、「各国版『サマーウォーズ』」というのはどうでしょうか。アメリカが・中国が・フランスが──この世界を再構築した作品を見てみたい。アメリカだったらやっぱり、「アメリカが世界を救った!」という部分を誇張して作るのだろうな。