『バクマン。』 115 ページ 「記念撮影と教室」 (週刊少年ジャンプ 2011 年 05・06 合併号)
今週号の「ジャンプ」に載っている読切りの中では、大石浩二先生の『信魂さん いらっしゃい』が圧倒的に面白かった!
大石先生お得意の「生活あるあるネタ」を中心にしながら、いま流行している「歴史物」の要素を入れて、「男女入れ替わりネタ」をヒネって描いています。
なにより、女の子(?)がかわいい!
『いぬまるだしっ』では、たまこ先生が「かわいいけれど、残念」な感じで、お色気路線は避けています。てっきり、大石先生は、セクシィなマンガは描けないのかと思っていました。
ところが、『進魂』では、しっかりと(いろんな)ツボを押さえてある。やるじゃん、大石先生!(なぜ上から目線?)
もしも「恋愛読切祭」に大石先生が参加したら、上位を獲るでしょうね(ムリヤリに『バクマン。』と結びつける)。
連載表彰式当日
もうすっかり、黒塗りの車(だろう)に乗せられても動じない 2 人です。一年に数回のイベントとはいえ、こんな仕事はめったにありません。
連載の回数と時期に応じて、連載表彰式に呼ばれる日が決まるそうです。ということは、長く連載を続けている同士でも、ずっと会わない組み合わせも出てくる。
──それくらいなら、「あの先生とあの先生は、馬が合わないから……」という基準で日を分けたほうが良かったりして。あ、新年会が全員が参加するのか。
シュージンは、岩瀬を意識しすぎだと思う。それと蒼樹にも。残念ながら、もう 2 人とも、それほどシュージンを気にしていない感じがする。
中学生のころから、サイコーとカヤにべったりとくっついていたから、シュージンは浮気をしなかった(できなかった)のだと思います。そうじゃなかったら、「どこの新世界の神だよ!」という結果になっていたことでしょう。
この場面で気になるのは、平丸が焦った表情をしていること。亜城木の 2 人からすると、平丸のイメージはいつも汗をかいているのでしょうか。
たしかに、平丸がクールな印象だったのは、新年会で初めて会った時の一瞬だけだったような……。
お久し BLEACH
新妻エイジのシャレで気がつくように、亜城木たちとエイジは、仕事以外では会っていません。サイコーもシュージンも何度かエイジの助言で先へ進めたし、お互いにライバルであり仲間なのに、やはり 2 人は冷たい感じがする。
──まぁ、プライベートでエイジと会ったら、いごこちが悪そうですケド。
平丸の口ぶりからすると、前回から連絡を取っていない感じです。自分だったら、「おめでとうございます!」というメールくらい送るけどなぁ……。「亜城木夢叶 a.k.a ICE MEN」(冷たいヤツら)と改名するべきでは?
恋愛マンガの読み切りで上位になれなかったことを、エイジは気にしています。やはり彼は、連載でも読み切りでも、自分が描いたマンガはすべて大事な作品なのですね。雄二郎は、その点がまったく読めていない。
エイジは、「ベタな恋愛マンガ」でも描けた──という口ぶりです。どうなのでしょうね?
蒼樹が 1 位だった以上は、「恋愛マンガで人気が取れること」と「恋愛経験の有無」とは関係がなかったはず(すくなくとも『バクマン。』の世界では)。でも、恋愛マンガをベタに描くエイジが、何だか想像できません。エイジも、つまらないでしょう。
それでも、大好きな亜城木先生の前で、マンガのこと(だけ)を子どものように話すエイジが面白い。彼の生き生きとした姿は、見ていて楽しくなってきます。どこまでもマンガ好きですね。
アフロの近くでは、エイジは「平常モード」ですケド。
平丸が浮かれている様子を、エイジは不思議そうに見ている。超能力めいた洞察力を持つエイジだったら、何があったのか分かりそうなのに、なぜ分からないのだろう? デートの場所まで言い当てたのに。
わざと平丸に聞いて、のろけ話をする機会を与えた──という性格ではありませんよね、エイジは。うーむ、謎です。
謎と言えば──、しばらくは、平丸と蒼樹との「進行度」も読者には伏せておくでしょうね(そのまま 2 人とも消えていったりして)。
もともとサラリーマンだし、営業職だった平丸のほうが、世間のことをよく知っていそう。ゆるふわ愛されガールな蒼樹の恋愛観に、ついていけるのだろうか……。
宅配 でーす
このページは大好きです!
連載しているマンガ家だけではなく、その家族にも花束が届くことに、感動しました。こんなイキな計らいをしてもらったら、家族も応援したくなりますよね!(預金通帳に対してだけではなく)
今回はカヤの元に届いた花束しか描かれていませんが、サイコーやシュージンの家にも届けられたのでしょうかね? 配偶者だけかな?
いずれにせよ、幸せそうなカヤを見ていると、こちらまで心が温まります。これから一生、彼女は嬉し涙だけを目に浮かべて欲しい。
映画・『セブン』の感想で、ヒロインは、「『守ってあげたい!』と主人公に思わせる魅力」が必要不可欠だと思う
と書きました。この条件で行くと、『バクマン。』のヒロインは、明らかにカヤです。
セブン – この悪夢を体験すれば彼を理解した──と思えるのか? : 亜細亜ノ蛾
一方、守られる必要がないくらいに、亜豆は強い。彼女は、サイコーやシュージン・エイジなどと同じような立場だと思います。
感動的なカヤの表情を見たあとで、視線を上に向けると、つまらなさそうにハシを進めるカヤがいる。この対比が効果的です。こういう「何気ない日常の風景」を描いたコマの使い方が、本当にうまい。
それに、よく見るとこの場面では、じつはカヤはひと言も話していません。これは面白い! セリフなしで、「ひとりはつまらない」と「感動で声も出ない」を表現している。
このように、なんということのない場面を重ねて登場人物に深みを出すやり方は、ほかのマンガでも導入して欲しいです。いつも同じ口調で同じように描いていても、見せゴマだけビシッと決めればいい──と思っているマンガ家が多い気がする。
読者の圧倒的支持を得て
サイコーもシュージンも若いから、まるで大学の卒業式みたいに見えます。2 人にとって大学は、本当に意味がなかったよなぁ……。チアリーダに見とれていた思い出しかない。
言うまでもないことですが、このページで感謝状を受け取っている 2 人と、となりのページにいるカヤは、まるで同じ場所にいるかのように描いています。3 人で、同じ感動を味わっているわけですね。
マンガ家を志望している人は、『バクマン。』から学べることがたくさんあります。内容(「ジャンプ」編集部のバクロ話)だけではなく、こういった演出も参考にしましょう。
ピースくらい して
いつも自分は、サイコーのことを「冷たい男」と呼んでいますが、半分は冗談です。もう半分は──、本当に感情がないように見えるなぁ……。今回も、涙が出かかった
だけで、シュージンのように泣いたりはしない。
読者からすると、亜城木夢叶は何年も連載をしているように感じる。でも本当は、今回が初めて連載一周年を達成したのです(『疑探偵 TRAP』の時は、途中でサイコーが入院した)。だから、もう少しサイコーは喜んでもいいと思う。
個人的には、「感情がない人」が好きですけどね! 『デクスター』が大好物だし。
デクスター ~警察官は殺人鬼 シーズン 1 – 太陽が照れば血も輝く : 亜細亜ノ蛾
これからもずっと、2 人で 亜城木夢叶
のまま連載を続けて欲しいです。サイコーの夢が叶ったそのあとも──。
