バクマン。 #140-1 「限界と火の鳥」 ランキングと超新星

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『バクマン。』 140 ページ 「限界と火の鳥」 (週刊少年ジャンプ 2011 年 32 号)

rosalind
(新しい星は──いまも生まれ続けている)

今週の「ジャンプ」は、『バクマン。』が表紙でした! ──まぁ、「今週」というか、先週の土曜日に出ていたんですけどね……。

各キャラクタのお面を主要人物たちが かぶっている──という楽しい表紙です。クロウは(売れているから?)納得の完成度ですが、マコトは「コレジャナイ感」が漂っている。屋台でよく見る「ビミョウに似ていない お面」の感じがよく出ていますね。

新妻エイジが着ている浴衣には、マンガの「吹き出し」がデザインされている。これは実際にありそう。海外の有名ブランドが出していても、不思議ではありません。日本で堂々と着られるかどうか──は別として。

エイジなら やりそうな気も

世に出たマンガで 1 番のものを 描くという予告は、シュージンから見ると、エイジには あまり似合わない発言でした。エイジが『CROW』で 1 位を獲り続けたのも、最高の状態で作品を終わらせるため──だとシュージンは思っている。

世間での人気やハヤリに流されず、自分の好きなマンガを描くという自由さが、エイジの魅力だと思っている読者も多いでしょう。自分もそうです。

ただ、初登場の時からエイジは、「ジャンプ」で 1 番の作家になった時の「権限」要求していました。そのあとも、「アシスタントたち」がいる前で、1 番人気の宣言をしている(『バクマン。 (3)』)。あの時には、サイコーもいましたね。

エイジはずっと、No.1 志向が強かった。ただしそれは、「ジャンプ」の中での話です。まさか世界を狙っているとは、亜城木夢叶も自分も思っていなかった──。

「町内で こぢんまり→全国一→世界へ!」という流れは、「ジャンプ」の伝統芸ですけどね。いや、日本の作品には、こういった展開が多い。いわゆる「セカイ系」もその一部と言えるでしょう。


世界中で 1 番のマンガとは、どんな作品なのでしょうか──? 亜城木のアシスタントたちが語り合っています。それぞれの性格がよく出ていて、なかなか面白い。

加藤や折原が挙げた作品名は、おそらく自分の好きな作品でしょうね。ところが森屋は、好きな作品と すごい作品では また違って きますが──と前置きしている。これは確信をついた意見だと思いました。

「ジャンプ」のアンケートでは「面白かったマンガ」を聞いている。年少者が「笑ったマンガ」を選ぶ意外は、「好きなマンガ」に投票するでしょう。

しかし、「1 番すごかったマンガ」を聞いたら、別の答えになるかもしれない。「面白い」「好きだ」「笑えた」──だけではない価値観が、その作品に含まれているかどうかを考えるからです。

──そう考えると、多くの人を魅了しながらいまだに連載が続いているガラスの仮面』は、十分に「すごいマンガ」と言えますね……!


サイコーとカヤの動きがシンクロしていて、なんだか面白かった。この 2 人は、なぜか妙に似ているんですよね。たまに、姉と弟かと思ってしまう。シュージンが長男の 3 人兄弟──と言っても違和感がありません。長く一緒にいるからですね。

シュージンもカヤも、この場に亜豆が増えることを望んでいる。それは、いつのことになるのか──。

その夜 眠れなかった

今回は森屋秀二が良かった! これまでの理屈っぽいクドクドした話し方ではなく、するどく的を射た言葉を発しています。彼と白鳥シュンとの「なかよくケンカ」する姿を、また見てみたい。

森屋の言うような、親から子どもの世代へと語り継いでいくべき作品が、名作マンガです。「世界で一番すごい作品」は、その中に入っていると見て間違いない。

では、「人生の素晴らしさを描いた感動作」や「人の世の悪を訴える問題作」みたいな作品を残すべきかというと──、そうでもありません。単純な娯楽作品だって、人の心を動かせば、いつまでも残るはずです。グリム童話や『桃太郎』を見れば分かる。


作品のランキングづけについては、自分も森屋と同じように疑問を持っています。

雑誌やウェブでの数字だけで作品を語る人がいる。「売れているか どうか」だけで、作品の良し悪しを判断する人も多い。そして、そんなエセ評論家たちの言葉を信じて、手に入れる作品を選ぶ人までいる。

自分の目で見て・頭で味わったほうが、面白いのに。

なんか暗いんだよね

港浦が一段と嫌いになりました。今回の彼は、とくにひどい。初登場のころから人間的に嫌いな人物でしたが、マンガへの情熱を感じさせる場面で、すこしは見直しました。──それも遠い昔の話です。

岩瀬に対して港浦が意見できるようになったことは、編集者としては良い傾向ではある。しかし、「新妻エイジが面白くないと言っていた」ことを、そのまま岩瀬に伝える無神経さが理解できない。そんなことを聞かされて、やる気になる性格かどうかも見抜けないとは……。


いつも強気で上から目線な岩瀬だけに、暗く沈んでいる顔にドキッとしました。正直なところ──、非常に魅力的な表情だと思う(小畑先生、グーです!)。それでも、私も絶対負けない! のころの岩瀬に戻って欲しいです。

バクマン。 #98-3 「握手と手直し」 絶対負けない! と不動の 4 位 : 亜細亜ノ蛾

ホントすごいよ「CROW」は!

港浦編集の失言は止まらない……! 自分の担当している作家に向かって、無関係な作品の話を延々と語っています。これ、何の意味があるんだろう……。

担当替えしないかな──と真剣に願いました。

たとえば、山久編集は岩瀬と相性が良いと思う。相手の良い部分を持ち上げつつ、売れる作品へと誘導するのが上手な山久なら、「作家・秋名愛子」の能力を十二分に引き出せるはずです。

また、蒼樹紅の担当が港浦になっても、デメリットはすくないと見ている。なぜなら、編集者を頼らなくても、蒼樹は自分で道を切り開けるからです。──いざとなれば、平丸や福田の力も借りられるし。


岩瀬の中で美化されているシュージンが笑えます。たしかに、彼女の前では いつも、シュージンは格好良かった。

興味深いことに、カヤに対するジェラシィは、岩瀬の中は ないようです。これは中学生のころからでした。普通に考えれば、すべての不満がカヤのほうへ向かって行っても、おかしくはありません。

岩瀬にとってシュージンは、恋愛の対象というよりも、励まし合い・競い合うライバルだからでしょう。あくまでもシュージンの才能にホレている──ということです。

全てパッとしない

『CROW』に続く作品が すぐに作れたら、苦労はありません。吉田も相田も、自分でそれを分かっていながら、声を張り上げているのでしょうね。

また、読み切りだけ面白い作品を載せてもダメで、連載につなげる必要があります。「1 話限りの面白い短編」を作っても仕方がない。この条件は、マンガの可能性をせまくしていると思う。

「一話完結型の新連載」も、「ジャンプ」では長い間 出ていません。もしかして、『いぬまるだしっ』が最後なのでは?

うすた京介さんの復帰を強く願います……!

「一話完結 = ギャグ」という風潮も、この際だから一新して欲しい。『孤独のグルメ』のような ゆったりした作品や、『アウターゾーン』的なホラー作品など、いくらでも可能性はあります。


かつての超新星──こと七峰透は、どうしているんだろう……。そもそも、今後も「ジャンプ」で作品を描けるのでしょうか? 編集部をさわがせた度合いでは、師匠の亜城木大先生のほうが上だから、大丈夫かな。

七峰と二人三脚で作品を作っていく──という決意を胸にしていた小杉編集が、「次の超新星」を待っている。これがものすごく悲しかった……。

コメント

  1. salica より:

    私は小杉の「超新星」には違う意味で複雑な気持ちになりました。
    「超新星」という言葉は金の卵・ダイヤの原石と違って
    磨く必要のない最初から輝いてる実力者のイメージがあり、それを都合よく現れないか待ってるだけかと思ってしまう。
    実際はただの伏線で言わせただけでしょう。
    読み切りまで時間がなくCROWに変わる作品はちょっとやそっと磨いただけではでてこないからともいえるでしょう。
    若い小杉は入社間もない頃に超新星と出会ったのでそんなことを言ったのかも。
    何よりどんなに磨いても才能がなければただの石ですから。
    でも、港浦の態度と合わせると彼らは磨かずとも光る天才(エイジ)や自分で磨いて光る有能者(福田、高浜)におんぶにだっこになってやしないか、
    そんな不安がよぎるのです。

  2. asiamoth より:

    小杉にしても港浦にしても、
    「一時期は熱かった編集者」です。
    その彼らが寝ぼけたことを言い出すと、
    よけいにガッカリしますよね。
    「──小杉、お前もか」と。
    もとからフワフワした雄二郎のほうが、
    まともな編集者に見えてしまう。
    ただ、ここまで あからさまだと、
    「マンガ家を育てたのは編集者だ」という描写を
    わざと避けているようにも思えます。
    極力、「作家が自分の力で成長した」
    と読者に思って欲しいからでしょう。
    『バクマン。』の主役はマンガ家であり、
    編集者は脇役にすぎないですから──。
    (いつも思うけれど、こういうことを書いても、
    平丸だけは例外になるんだよなぁ)