『バクマン。』 38 ページ 「窓と雪」 (週刊少年ジャンプ 2009 年 26 号)
少年マンガでは次回への「引き」がお約束となっている。先週号の『バクマン。』では、非常に気になる終わり方をしていた。どうなったのだろうか?
テレビ番組がコマーシャルへ移る際の引きは うっとうしいだけだが、連載マンガの引きは燃える。続きが気になって仕方がない。中学生の時に週刊少年ジャンプを読み始めてから、ずっとこうだ。
「少年の心をいつまでも忘れない」と書くと美しいが、実際には(省略)な今年 35、である。
いま、ジャンプのマンガで引きが一番ウマいのは、『トリコ』だと思う。上手というか、独特だ。
次回への引きは、当然ながら「先が読めない」ような描き方をする。当然だ。しかし、だいたいは予想のできる材料が残されている。たとえば、「主人公が大ピンチに落ち入った・これからどうなる?」──という引きには、リスクのある必殺技や生き残っている仲間の存在を臭わせる、という具合だ。
それに対して『トリコ』では、それまでに出てこなかった単語をポンッといきなり出して、次回へ つなげたりする。先週号の「オートファジー」がそうだ。たしか「GT ロボ」という単語も話の終わりで急に出てきた覚えがある。
この引きには、分かりにくくなる危険性が高い。
自分は、先週号の終わり方を見て「これまでに自食作用なんて出てきたっけ?」と必死に思い出そうとした。それより何より、トリコが口に入れるべき「最高に 美味いもん
」とは、リンの■■と思った人も多いのでは?
『バクマン。』では、そこまで分かりにくい引きは少ない。それよりも、各話の最初から最後まで、目まぐるしく状況が変化することが特徴である。1 ページ目を読んで、ラストの場面を予想することが不可能に近い。
今週号の話を読み終わると、蒼樹紅への印象も大きく変わるだろう。
花にも 命があるのよ
「今週号の『バクマン。』は、作者取材のため お休みです」
──と思ったくらい、今回は いつもとは違うフンイキだった。
初めて蒼樹紅という人物の内面・回想が描かれるが、最後まで読み終わっても まだ本心が見えてくない。いろんな意味で底が見えない女性だ。
蒼樹が見ている連載用のネームを見ると、どう考えても少年誌向きではないセリフが書いてある。少女マンガでも厳しい感じ。
なぜ、蒼樹は少年誌への移行を決心したのだろう?
誰? あの美人
ほかの者には押しの強い相田も、蒼樹が相手では やりにくそうな感じである。
まぁ、あのちょっと大人っぽい メルヘン
である『hideout door』に、何かと戦ったり そういう要素を 入れて欲しい
という要求は、たしかに言いにくい。作品の全体を変えろ、と言うに等しいと思う。
金未来杯での結果は、そこまで ほかの作品と票が少なくなかった。ということは、ジャンプでも『hideout door』は十分に通用する──と見て良いと思うのだが、連載では厳しいのだろうか。
相田の言葉からは、中井への信頼感が強く出ている。中井が長い間やってきたアシスタント業は、ムダではなかった。ちゃんと自分の仕事を見てくれる人の存在は、何よりもありがたい。
しかし、蒼樹からすれば「自分だけが悪い」と言われたように聞こえてしまう……。
もっと柔軟に
中井の忠告も無視して、自分は悪くないと思い込む蒼樹である。柔軟に 変えていく
必要があるのは、彼女自身だろう。
──それにしても、こんなに短いスカート丈の洋服も着るのか、と驚く。自宅でも服装に手を抜かない蒼樹だが、女性なら当然なのだろうか。
さて、蒼樹の自宅へ中井がやってきたのだが──。
今週号で一番ビックリしたのは、ラストよりもこの場面である。蒼樹の心の中では、中井を呼び捨てにしているのだ。やはり、蒼樹にとっての中井は、そんなに好意的な人物ではなかったのか……。
いや、よく考えてみると──事前に連絡もなく男性が自宅まで来れば、誰でもイヤなものだろう。蒼樹の性格からすれば、たとえ間界野昂次でも急に来れば、良い印象を持たないはずだ。
──そう、思いたい……。そうじゃないと、悲しすぎる。
中井さんのこと 気になる
最近では数少ない、学校の場面が描かれた。プロのマンガ家となった二人が学生服を着ていると、すこしだけヘンに思える。クラスメイトたちは、だれも亜城木夢叶の正体を知らないのだろう。それも妙な感じだ。
サイコーとシュージンは中井のことを心配する。あまり接点のない中井のことを気にかけるとは、さすがシュージンだ。
しかし、今の二人は ひとの心配をしている場合でもない。
僕の絵が
中井に対して蒼樹は限りなく冷たい態度を取る。今までの言動と大きく違わないが、それでも状況から必要以上に非情に感じてしまう。
蒼樹を嫌いになった人も多いはずだ。以前から気にくわなかった人は、より一層、蒼樹のことを悪く思うだろう。
自分は、最後まで読まずとも、この段階で蒼樹の中に迷いがある、と思った。
蒼樹は、中井に謝るような態度を取っていない。「自分が悪いとは思っていない」という見方もできるが、中井を完全には拒否していないようにも見えるのだ。試すような口ぶりに聞こえる。
彼女の真意はどこにあるのか──。じつは、今週号のラストまで読んでも、サッパリ分からない。ひょっとしたら、始めから終わりまで、蒼樹は思ったことを 100% 言っているだけ、なのかもしれないのだ。
この場面での会話をよく聞くと、お互いがお互いに対して、あまり要求をしていない。自分が自分の考えで勝手に行動する、という報告をしあっているだけだ。これは面白い。
普通に描くのであれば、蒼樹は「あきらめてください」と言い、中井は「考え直してください」と言うだろう。しかし、そうは ならなかった。
プロを目指す人間は、相手を変えようとする前に、自分の行動を変える。そういう作者からのメッセージだと思い、しっかりと受け取った。
