HUNTER×HUNTER #318 「遺言」 すべては照らせなかった光

シェアする

HUNTER×HUNTER No.318 「遺言」 (週刊少年ジャンプ 2011 年 43 号)

#465 小鷺天使 Guardian Angel
(この世には光が満ちあふれ──母は子を はぐくむ)

いつも この冒頭の部分では、内容と関連しているような・いないような、ボンヤリとした話やネタを書いています。本編を未読の人が来られた時に、楽しさを台なしにしない配慮ですね。

あたちの 名前は」を貼り付けた人は、10 年間インターネット禁止の刑を食らうがいい!(じつは本誌の発売前に見てしまった)

そうすると、今回は何も書けなくなってしまう。

でも、べつに「冒頭にはネタバレは書かない」ルールを決めたわけでもありません。記事を読むことで、一段と作品を楽しみたくなるような、興味を刺激する文章を目指しています。

──何重にも自己弁護を張り巡らした上で書くと、新しい章に突入しました! 良かった、今回のシリーズで終わりじゃなかったんだ!

光が届かなかった闇

何ページも黒塗りの場面が続きます。これは、コムギの視点でしょうね。彼女はずっと、気配と音だけを頼りに生きてきました。

全てを照らす光」との祈りを込めて母親に名付けられたメルエムの姿も、コムギの目には見えない。彼女の視界の闇には、彼の光でも照らせなかった。

しかし、軍儀の盤上では、コムギは誰よりも「世界」が見えている。そしてこれからも、より広い宇宙を開拓していく──はずでした。

王との対局中に「目覚めた」コムギは、あとすこしの訓練で念を使いこなせたはずです。「円」を会得すれば、目の不自由さからも開放される。

軍儀以外のコムギの素質については不明だし、そんな「よそごと」には時間を使わなかったかもしれません。

いずれにせよ、すべての可能性は絶たれた──。

すべては王ひとりのために

「キメラアント編」は、失われたモノが多すぎます。

数多くの命が、女王の腹の中に消えていきました。その中には、将来が有望な子どもや若者も含まれていたし、以前から登場してハンターになった人物もいる。

たぶん、彼(女)も消化された命の 1 つでしょう。

HUNTER×HUNTER #316 「本名」 子どもの駄々には正面から向き合おう | 亜細亜ノ蛾

そのすべてが、王のためでした。コムギの将来を奪ったのも、言ってしまえばメルエムの わがままです。

軍儀に関して言えば全宇宙で もっとも優れた才能を、彼のことを一番 愛してくれた人間を、もっとも彼が愛したヒトを──、自分のせいで死なせてしまった。

すべては神の御業・仕業

ところが、誰もメルエムを責められない。

客観的に見れば、「極悪非道な化け物」が「無実の人間を犠牲にした」話なのに、なぜか感動してしまう。なんだったら、コムギと一緒におやすみ なさい… メルエム…と言いたくなる──。これが不思議で絶妙です!

こんな物語は、冨樫義博先生にしか描けないし、マンガでしか表現できません。

毒と血に まみれたコムギは、音声付きの映像で観ても、文章で再現しても、違う印象になるはずです。ホラーになりそう。

おやすみなさい

最期の最後にコムギから名前を呼ばれて、さぞかし安らかにメルエムは眠れたでしょうね。

よく考えてみると、『H×H』の世界には「死後も残り続ける念」が あるのでした。

もしもメルエムがコムギと出会うことなく、ネテロ会長が「貧者の薔薇(ミニチュアローズ)」を使っていたら──、恨みがこもった王の念は、死後に「全てを照らす」として猛威を振るったかもしれません。

穏やかな最期を迎えられて、本当に良かった。

同じく世を去る者

ようやく長い長い物語が幕を閉じたと思いきや、「ハンター会長選挙 編(仮)」が続けて始まりました。

──って、なんだ このコミカルな口調は!

「マジメな話をしている時ほど、鼻毛とかが気になるよね」というテレビ的な小ネタをカマしてくるところが、じつに作者らしいですね。数ページ前との温度差で、ハリケーンが発生しそう。

しかし──、どう考えても、副会長派や「上の者」の策略によって、ネテロ会長は「言わされている」に違いない。強制的に「遺言」を残させる本当は残酷な場面でありながら、ついつい笑ってしまう。

この手の皮肉を描かせても、作者は天下一品です!

つどいし者たち

ハンター協会の本部に集まってきたハンター・十二支んたちは、後ろ姿からでも分かるくらいに、ド派手で個性的でした。ちょっと『ジョジョの奇妙な冒険』っぽいセンスですよね。しかし──、

陰獣」以下の においがプンプンするぜッーーーッ!

この人たちの顔などは、選挙の本編に出てこないのでは? そもそも次回には消えていて、キルアたちの話に移りそうです。

中央付近にいるバニーさん(バーナビー・ブルックス Jr. 的な意味ではなく)くらいは、活躍して欲しいですけどね。


あと気になるのは、右下にいる「細身で長髪のシルエット」でした。これは──キルアの兄・イルミでは? 彼もハンターだから、たしかにハンター協会の中で のし上がった可能性はある。

しかし、ゾルディック家にメリットは ないような……。あ、それも「偉いさん」から依頼された仕事という可能性は あるか。


左から 3 番目のシルエットは、あきらかにゴンの父親であるジン・フリークスですよね! ネテロも認めた念能力者だから、それなりの地位にいるのは当然です。

ジンが「十二支ん」だった場合は、何の動物だろう?

丑(うし)・寅(とら)・卯(う)──あたりは確定として、ほかの十二支も消していけば分かるのでしょうが、それは みんなに任せた!(誰?)

完全に たんなるカンで、ジンは辰(たつ)と予想しておきます。ドラゴンっぽい獣に乗っていたから。

2011-10-05T16:06:06+09:00 追記

「十二支ん」についての感想を追加しました。

おわりに

母親が子を生む準備の場面から始まり、まるで我が子を抱く母親のような少女で終わる──。こうして「キメラアント編」は幕を閉じました。

まるで 2003 年から続いていたような、長~~~い数か月(数週間?)の話でしたね。ゴンの容体やノヴの髪の毛など、まだまだ問題を残していますが、ひとまず区切りです。

「キメラアント編」とは何だったのか──。

ひとりの だだっ子が暴れた記録でしたね。

直接メルエムと対面して生き残っているのは──、ゼノとウェルフィン・パームだけかな。会話らしい会話をしたのは、後半の 2 人だけでしょう。

できることなら、キメラアントの王を たんなる「生物災害の記録」としてだけではなく、孤高で孤独な ひとりの男として、狼と人魚の 2 人には覚えておいて欲しい。


この世を去るときに、ありがとうと言える存在が近くにいて、こちらこそと返してくれる──。なんて幸せなのでしょう。

文字どおりに「有り難い」できごとが、世界には普通に充ち満ちている。

この国に生まれて、この時代に生き、この作品に巡りあえた。その奇跡に、ありがとう!

コメント

  1. ハンターは良い!! より:

    ここの感想、楽しく拝見しています。
    私的な見解ですが黒塗りの場面は王の視点でもあると思います。
    その証拠に何度もコムギの名前も呼び存在を確認しています。
    もう念も使えない状態の王は視力も失い軍儀の場所を辛うじて覚えている状態(コムギと同じ 泣)だったと思います。
    あと最後の人たちは「12支ん」って名前も付いてますし、それぞれ干支のデザインが施されています。笑(しかもそのうち一人の後ろ姿が315話の最後コマの人に似ています。)
    新展開も気になりますが、コムギとメルエムの最後の余韻はなかなか消えそうに無いです。

  2. asiamoth より:

    どうも! 楽しんでいただいて ありがたいです。
    そうですね、あの暗闇は、
    メルエムとコムギの共通して体験した
    2人の視線でしょうね。
    そう見たほうが美しい。
    「十二支ん」はスルーしてしまいました!
    うわ……私の読解力、低すぎ?
    ネテロを入れて 12 人のために 1 人足りないのか、
    モラウと電話していた人も入っているのかも気になる。
    ちょっと一休みして、また加筆しておきます!

  3. ハンターは良い!! より:

    素早い返答ありがとうございます!!
    加筆楽しみにしています!
    ちなみにモウラと話していた人?はネテロの秘書だと思われます。
    ハンター試験でメンチがめちゃくちゃした時とハンター試験が終わってゴン達にハンター証の説明をする場面で登場していますよ。(^o^)
    でも実は実力者でも面白いですね。笑

  4. asiamoth より:

    もちろん、彼(?)のことは知っていましたよ!
    そろそろ名前を公表して欲しいですよね。
    あらゆる人間・魔獣・キメラアントの中でも、
    あの人(?)ほどシンプルな外見は、
    イカルゴぐらいです。
    あの容姿で「じつは かなりの念能力者」だったら──
    って、それはそれでアリガチか。