バクマン。 #149-4 「持ち味と題材」 代原と自力

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『バクマン。』 149 ページ 「持ち味と題材」 (週刊少年ジャンプ 2011 年 43 号)

Cloudsurfin
(誰かに支えられながら──自力で歩いて行く)

人の気持ちを理解しないマンガ家の話が出てきます。

『クロガネ』の池沢春人氏は、その筆頭ではないか──と自分は思っていました。あの Twitter での発言を見るとね……。

Twitterで暴走した池沢春人がついにジャンプ連載 「めだかボックスなんかより何十倍も面白いと思う」|やらおん!

ところが、自分は『クロガネ』を かなり面白く読んでいます! ちゃんとキャラクタが描けているし、まだるっこしい展開もなくて、サクサク楽しめる。

作家は誰でもナルシストですからね。謙虚な発言をする人でも、心の中では「オレが 1 番に決まっているだろ」と思っていたりする。

──そうじゃないと、戦場では生き残れない。

まぁ、Twitter での過去の発言は ともかくとして、匿名掲示板での評価を鵜呑みにして自分の意見にするなんて、それこそ自分には理解できません。

それなんて「人間コピペブログ」?

亜城木だけ じゃなく

デカデカと『PCP』のポスタが七峰よりも上に貼ってある構図は、いまの状況と良く合っています。分かりやすい演出ですね。

一方で、冷静すぎる小杉の態度が、ちょっと笑えます。

なんだか小杉が、ものすごく偉い人に見えてくる──。もう何度も「うろたえる七峰」を見ているから、慣れたのでしょう。

みっともない姿を七峰が見せたのは、小杉の前だけです。これは 2 人が気を許し合っているから──ではなくて、七峰は小杉のことなんて気にしていない

この 2 人に信頼関係が生まれるとしたら、まだまだ これから先でしょうね。

人間の欲や 大人目線の本音

原作者やモニタと七峰は、直接は会話をしていない。それなのに、「七峰らしい作品」ができあがった──。

このことを、シンジツコーポレーションの原作者たちが優秀であることと、会社の将来が有望であることを感じさせます──と自分は書きました。

バクマン。 #148-3 「一発勝負と一話完結」 巨大 IT 企業と秘策 | 亜細亜ノ蛾

まさか、この点をひっくり返してくるとは!

簡単に言えば、「少年誌向きではない作品を一所懸命に作っていた」ということですね。どんなに完成度が高くても、多くの読者には受け入れられない。

ただ、見た目は「子ども向け」でありながら、深い所では大人も楽しめる作品も ありますからね。『魔法少女まどか☆マギカ』が好例です。

“魔法少女まどか☆マギカ” アーカイブ | 亜細亜ノ蛾

ほんの少しだけ題材を替えれば、また上位を狙えるはず。これで消えるのは、あまりにも惜しい。

キャラクターの心

天下の「週刊少年ジャンプ」で またも 4 位を取れたことで、シンジツコーポレーションと七峰透の実力は完全に保証されました。ここで終わるのは、あまりにも もったいない……。

あの編集長のことだから、七峰とシンジツコーポレーションは、約束どおりに「ジャンプ」では使わないでしょう。おそらく、集英社のほかの編集部も避けるはず。

しかし、これは ほかの出版社にとっては大チャンスです! とくに大人向けの雑誌を作っている所ならピッタリだし、今回で反省して少年誌向けマンガも描けると思う。

「亜城木夢叶に勝つ」という七峰の願いも、ほかの雑誌で抜けば同じことでは?

──と第三者には思えるけれど、あのプライドの高い七峰が、納得するかなぁ……。東に負けたことは、七峰からすると「飼い犬に手を噛まれた」心境でしょうね。しばらくは立ち直れないかも。


小杉が言った次の言葉は、心にしみました。

人の気持ちが 分からなければ 人の感情は 描けないよ

これは、将来のマンガ原作者を目指す読者に向けた、作者からの言葉でもあるのでしょう。マンガの理論や技術だけを追うと、人の心が見えなくなる。

ただ──、いつも小杉は終わったあとで、「冷静に分析」しているだけなんですよね。今回も、ネームを見た段階では問題を見極められませんでした。それだけなら、誰でもできる。

七峰は芸術家タイプで、小杉は批評家タイプです。だから意見が合わないわけですが、そこは小杉が上手に話を合わせていくべきでしょう。服部なら、もっと上手に話せる。

東さん やりました!

はしゃいでいる服部が楽しい! こんなに嬉しそうにしている彼は、激レアです。

以前にも服部は、亜城木や岩瀬と一緒に話を考えたことがありました。しかし、話の骨格は作家に任せている。

今回の『ヒラパラパラダイス』は、どうなんだろう?

話作りが苦手な東との共同作業だから、ほとんど服部がストーリィを考えたのでは? 「ジャンプ」の看板作家たちと打合せを重ねてきた服部なら、読みきり用のアイデアくらいは温めていた可能性があります。

これは、「原作者: 服部」のデビューも近いか!?

──ということもなく、これからも服部は、編集者として活躍するのでしょうね。

でも、「原作者になろうとして──挫折した」服部も一度は見てみたい!


東は、もう筆を置くのでしょうか。

読みきり・短期連載・読みきり──と すべて上位に入れる実力があるのに……。ここで満足してしまって辞めるのでは、川口たろうも喜ばないと思います。

川口たろうは、この世を去るまで──本当に亡くなる直前までマンガ家であり続けました。彼の遺志を継ぐというのであれば、東も同じ道を歩くべきでは?

ただ、どんな選択であろうと、東が自分の意志で決めたのであれば、それを尊重したほうが良いですね。