『バクマン。』 156 ページ 「余裕と修羅場」 (週刊少年ジャンプ 2011 年 50 号)
加藤奈津実には、どうして浮いた話の一つも ないのでしょうか。どの職場でもキャラ的には「浮いている」のに(だれうま)。
「お下げ髪・メガネっ娘」属性も付いているし、ちょっとズレた感覚の性格も おもしろいし、若々しく見える。今回、とくに可愛らしかった。もったいないなー。
ヒント: マンガ補正
──いやいや、仮に加藤が「年齢どおり」の見た目だとしても、かなりの「お買い得物件」だと思う。
いままでは ほぼ週 4 日の勤務だったから、一緒に合う時間も十分に取れる。オトナの策略には載せられない子どものように、好き嫌いをハッキリと言う素直な性格も好印象です。
そんな加藤の恋人が、どうして砂漠でオアシス(バンドのほう)を探すように見つからないのだろう──? なにか致命的な欠点でもあるのかな。
──あ、そうか! かかわった男性を不幸のどん底に突き落とすという、おそろしい能力の持ち主だった、加藤さんは……。今回の展開も納得ですね!
「REVERSI」の 読切を見て
さっそく森屋は小河に噛みついている。前回の時点で 2 人の性格が合わないことは分かっていたけれど、こんなに早い段階でぶつかるとは思わなかった。
いままでアシスタントのチーフがいなかったことを知った時の、間の抜けた空気が良いなぁ。小河からしたら、考えられない状況なのでしょうね。亜城木たちにしても、「その発想はなかったわー」状態になっている。
アシスタントの中からチーフを決めていた作家は、『疑探偵 TRAP』時代の亜城木夢叶と、『青葉の頃』時代の蒼樹紅くらいでした。とくに加藤は、蒼樹のところでチーフになっている。
加藤の性格からして、「では この職場でも私がチーフに──」などと言い出すはずがないから、亜城木の仕事場では「アシスタント・チーフという概念」自体が存在していなかったはず。
──それで何不自由なく進行できていたのは、たんなる幸運だったのでしょうか。作画に関してはサイコーのワンマン運行だったから、実質は彼がチーフも兼業していた。それが良かったのかも。
収拾が つかなく なりますよ
真正面から正々堂々と森屋はサイコーを責めている。まったく遠慮がない環境は、ビジネスライクで良いですね。あとからネチネチネチネチ言われたり、OL みたいに給湯室で陰口を叩かれるよりは、256 倍いい。
そう、これはサイコーのミス──とまでは言えないけれど、アシスタントの気持ちを考えていなかったことが原因です。
サイコーの「自分のことで頭がいっぱい」感や、森屋の「先生にすら文句を言う」性格、小河の「なんとか場をまとめる」能力──、それぞれの ぶつかり合いが、上手に表現されている。地味ながら良い場面でした。
「濃いキャラ合戦」に ついていけず、折原と加藤は、すっかり「けっこう前面に出てくるモブキャラ」と化しています。
加藤は、自分が責任を持って魅力を引き出していくとして──。大場先生、折原のキャラを何とかしてくださいよ!
読者の不安をあおるサイコーのナレーションが うまいなー! いかにも「森屋と小河がケンカする」という展開を予想させて、じつは──といった感じで、すっかりと だまされました。
たしかに、アシスタント同士の仲が良い・悪いくらいの問題だったら、われらが高浜昇陽で経験済みですからね。慣れたものです。
チーフが 入ってから
小河は口だけではなく、テクも スピードも
持っている。さすが妻子持ち! ──って、「家族が いるから生活のために必死で技術を身につけて仕事をしてきた」という意味ですよ。
チーフとしての経験も豊富だから、森屋のように文句を言い出すアシスタントも、山ほど見てきたはず。だから、とくに言い返さなかったのでしょう。言い争っていても仕方がない。
森屋は、口よりも手で「反論」する。
平行してもっと進めなきゃ
カラー原稿が大変でスケジュールが遅れる──という流れは、サイコーが倒れた時の悪夢を思い出す──。
バクマン。 #44-3 「恩返しと裏返し」 加藤の告白と高浜の冗談 | 亜細亜ノ蛾
すごいカラー
を仕上げるためには、より多くの時間を取られる。そんなことは、誰よりもサイコーが分かっているはずなのに──。
よく見直したら、カラー原稿の有無では予定が変わっていません。これじゃ最初からダメだ!
夏休みの宿題で言えば、「8 月 31 日に全部やる!(キリッ」みたいな計画性だと思う。まるで成長していない……。
このままじゃ まずい ですね
1 日に仕上げるページ数の「数字だけを見れば大丈夫そう」で始まった作業も、どれだけ遅れているかを「数字で示される」と、危機感が よく分かる──。
この時点で、何か打てる手は あったのだろうか?
今回のサイコーは冒頭で余裕の表情だったけれど、だからと言って遊んでいたわけではない。最高の原稿(ダジャレではない)を仕上げようとして がんばった結果が、この遅れだった。
つまりは──、結論だけを見れば「2 本の連載は無理だった」と なってしまう。「打倒! 新妻エイジ」どころか、マンガ家として自分自身のマネジメントも できていない。
──と外野の人間が好き勝手なことを言っているけれど、このまま つらい連載風景が続いて欲しくないですね。マンガ家を目指す少年少女たちに、夢と希望を与えるような、マンガへの愛が あふれる話を描いて欲しい!
しかし、ここからが本当の地獄だ……。