『HUNTER×HUNTER(ハンター×ハンター)』 No.3 「決着」
飽きっぽい作者だけあって「トリックタワー編」は比較的すぐに終わったけれど、ほかのルートも描けば長々とした話にできます。ヒソカやハンゾーたちが どんな試練を受けたのか、どんなドラマがあったのか、考えるとワクワクしませんか?
ところで、ファンが作った同人誌に「本編とまったく同じ話」が描いてあったら、それは「パクリ」です。愛は感じても、評価はできない。
マンガを原作としたアニメなども、個人的には「二次創作」と思っています。同人誌もアニメも、原作と同じでは「話にならない」と考えている。上で挙げたような話の広がりがアニメにもあると良いですね。
原作厨(自分)は原作だけ読んでいれば良い。
No.022 「最後の問題」
レオリオとキルアとの「仲の良さ」を描いたお笑いの場面みたいな冒頭です。しかし よく見ると、ジョネスの亡きがらが放置されたままになっている──。
おそらく、ハンター協会の人間が処理するとは思いますが、それは第 3 次試験が終わったあとの話でしょうね。それまでは放っておかれる。用済みになった試練官の末路は悲惨です。
(誰とでも衝突する)レオリオとトンパが、殺し合い寸前になっている。万が一トンパの命を奪ってしまっていたら、この時点で「多数決の道」はクリア不可能になるはずです。5 人そろっていないと先へ進めない。
ただ、「受験生の生命」と「腕時計」の どちらが 5 つそろっていることを優先しているのかは、一考の余地があると思う。次の「最後の別れ道
」の条件からすると、「2 人
」の生死は不問という気がする。
「長く困難な道
」と「短く簡単な道
」の 2 択は、じつに作者らしいイヤらしさを感じます。
まず、ゴンが言うように「せっかくここまで 来たんだから 5 人で通過したい
」と思う受験生は多いはず。レオリオのミスがなければ 50 時間の余裕があったため、長い道のりを選ぶ選択もあるでしょう。
しかし、時間のロスがなかった場合は、休みなしで数々の試練をくぐり抜けた直後と言うことになる。その上 45 時間以上も険しい道を進むなんて、聞いただけで心が折れそうです。
仲間意識が(ゴン以外には)薄いキルアと、ケンカっ早いレオリオがいるから、短い道は「命の奪い合いルート」のように思える。でも、「ここまで協力してきたから、お前たちに合格して欲しい」という譲り合いも ある得るでしょう。
「ギリギリ だったね
」と笑顔で言うゴンに、初めて読んだ時にはゾクッとしました。無邪気な残酷さを描いた場面なのか──と。
ただ 1 つ欲を言えば、ページをめくったあとで 5 人の集合を描いて欲しかったですね。いくらでもページの調整ができそうな箇所があったのに、そこまで「引き」に こだわる気持ちは なかったのかな。
どんどん影が薄くなってきたゴンだけれど、ひときわ光り輝く発想力を持っている。いざというときに頼りになるところは、まさに主人公の風格ですね。精神力の強さも主役らしい。
ただゴンには、底知れない恐ろしさも感じる──。
No.023 「2 人の敵」
扉絵に描かれた登場人物の一覧を見ても分かるように、『H×H』では国際色が豊かです。さまざまな人種の人物が登場する上に、極端なまでに各キャラの描き方を変えている。
マンガ・キャラの描き分けというと、「シルエット(影絵)にしても見分けが付くことがコツ」と聞きます。それはウラを返せば、シルエットの内側──顔や体形が同じでも見分けられるようにという(逃げの)テクニックだったりする。
しかし冨樫義博 先生は違う。
たとえば、受験生の全員が風呂に入って頭や体にタオルを巻いても、ほとんどのキャラが見分けられるはずです。その状態を「描き分ける」と言うのでは?
これから絵の世界に入る人は、ズルい逃げの技術は磨かずに、志だけは高く持ってほしい。
案内役の女性は「辛気 くせーわ
」という印象的なセリフを残しながらも、ほぼ この場面だけの出番でした。スタイルがグンバツ(ごくり……)なのに もったいない!
単行本の おまけページによって、彼女はカラ
という名前だと分かりました。こうして名前まで与えられたのに、彼女が次に登場するのは No.320 です。しかも、「カラっぽい人物」という描かれ方だったりする。
映画『バトル・ロワイアル』のナレーションとして出演した宮村優子さん(『エヴァンゲリオン』のアスカ役)と(自分の脳内で勝手に)イメージが重なっているから、カラは「みやむー」の声で再生されます。
狩る者と 狩られる者
に別れ──いや、狩る者でありながら狩られる者でもある状況に置かれたら、誰でも重苦しい気持ちになる。キルアやゴンですら沈んだ表情になっています。
そこで、ムダに明るいカラや「ナイショ
」をはさみ、空気を軽くしたところは さすがですね。読者の心まで無意味に重くする必要はないからです。
もしもゴンとキルアがターゲット同士だったら、2 人は どういう行動に出ただろう?
出会った当初であれば、キルアはゴンをライバル視していたから、プレートを奪い合ったかもしれません。ゴンも「正々堂々と戦う」という条件を飲んだでしょう。
なんとなく、この 2 人は協力し合うよりも、競い合う道を選びそうな気がする。
第 4 次試験は あくまでもプレートの争奪戦であって、ただの決闘
ではありません。でも、ゴンに言われるまでは気が付かず、普通に戦いになるのだろうな──と予想していました。
ここまでの試験を振り返ってみると、受験生同士で命を奪い合うような試験は いっさいありません。基本的には、ムリをしなければ命までは落とさない仕組みになっている。──ヌメーレ湿原だけは微妙ですけどね!
ところが、ハンター試験の受験生も読者も、「いつ死ぬか分からない恐ろしい試験」と思い込まされている。この「読者の想像を操作する術」が、作者は本当に うまい! どれだけ だまされているのか分かりません。
No.024 「特訓」
珍しくゴンが 1 人だけの状況が生まれました(実際には つねにゲレタが近くにいたけれど)。いつもゴンは仲間に恵まれているけれど、本当は 1 人でも生きていける人物だと思っています。
その傾向がもっとも強い人物は、『ドラゴンボール』の孫悟空でしょう。ブルマと出会っていなければ、ずっと 1 人で暮らしていた可能性が高い。
『H×H』と『ドラゴンボール』とは、じつは まったく似ていない(似せないように描かれている)のだけれど、ついつい引き合いに出してしまいます。両方とも大好きだなー。
『ドラゴンボール』 – 其之一 「ブルマと孫悟空」からエロさ爆発! | 亜細亜ノ蛾
ずっと先の展開を知っていると、ポックルの活躍には、必要以上に注目してしまう。とくに「しびれ薬
を使う戦術」や、それだけでは「死には しない
」点とか、ね……。
相手が獲物を 捕らえる瞬間
を逆に 狙う
作戦は、今回の試験だけではなく、ずっと使える戦法です。戦いの極意の 1 つでしょう。──残念ながら、生かされる場面は すくなかったけれど。
No.025 「2 日目」
一日中ずっと無心で竿を振り続けていたゴンですが、ほかの受験生に見られていたら──とは考えなかったのだろうか。ゲレタ以外にも狙われていたら、かなり危険な状態だった。
大人顔負けの決断力や発想力を持ったゴンも、ところどころ抜けていて、見ていてハラハラしてきます。正直なところ、「運が良いだけじゃん!」と言いたくなることも多い。
トリックタワーでは、トンパが仲間に入って意表を突かれました。そのまま 5 人で行動するかと思いきや──、そんな可能性は微塵も ありません。
トンパのほうから頼み込めば、レオリオやゴンは仲間に入れそう。しかし、クラピカとキルアは、何があっても絶対に行動と共にしないでしょうね。
そんな(どんな?)トンパも、なぜか仲間には恵まれています。ここでも「絶対に笑ってはいけない」的な 2 人(1 人と 1 匹)と協力している。
遠藤──いやサルは、田中もといソミーの「持ち物」扱いでしょうかね。現実世界では逆っぽいけれど(なんのこと?)。
No.026 「決戦前夜」
憎まれ口を たたいているけれど、クラピカはレオリオとコンビを組んでいたに違いない! 一方的に心を開きまくっているクラピカです。
プレートの入れ替えで だまされたのに、「レオリオのターゲットはポンズ」というトンパの言葉を信じるのは、お人好しにも ほどがありますよね。まったく違う情報をつかまされた可能性があった。
いつまでキルアはスケート・ボードを持っているんだろう? ゴンの釣り竿やレオリオのカバンのように、「キャラ付け」で持たせたのだろうけれど、これまで役に立った場面が数コマ分しかなかった。彼の定番武器は まだ先になる。
また、「ギタラクル」が顔を変えていたことの意味も、現時点では不明です。ヒソカとは以前から縁があったようだけれど、どんな出会いだったのだろう? そして、どちらが強いのか気になります。いつか明かされるのかな──。