『SKET DANCE(スケット・ダンス)』 第 23 巻 「オクルコトバ」
第 23 巻の後半は、真面目な話とギャグが半々でした。どちらも読みごたえが あります!
しんみりとしそうな回でもスカッとした展開を描いていたり、いつまでも印象に残りそうな新キャラを投入したりして、何度でも読みたくなる工夫が凝らしてある。
「『スケダン』ええわー」と改めて思いました。
Reviewer: あじもす @asiamoth,
第 204 話 「オクルコトバ 送辞」
「開盟学園は生活指導に厳しい学校
」と聞いて耳を(実際には目を)疑いました。現在の自由な(自由すぎる)校風は、安形惣司郎が作り上げたようなものだったのか。
それ以前の校内では、中馬先生(チュウさん)は肩身が狭かったに違いない。というか、唐松校長や理事長も悪ふざけが出来なくて息苦しかったでしょうね。
逆に現在の開盟学園では、植木先生のような生徒を型にはめたがる教師は、かなり居心地が悪いのでは?
自分は──オトナの世界にどっぷり漬かってしまった自分は、頭の固い教師も必要だと思う。生徒たちは将来、頭が鉛で出来た大人に ぶつかるからです。
「すっとこどっこい
」も居るから社会は楽しい。ユルユルの安形とガチガチの椿佐介が居たから、生徒会もバランスが取れていました。
安形が 1 年生のころの生徒会は、写真 1 枚で語られています。「前髪パッツンの子」を詳しく描いて欲しかった!
全校生徒がマジメな顔をして『仰げば尊し』を歌っているけれど──、この前後に「あの校歌」も熱唱するかと思うと苦笑いです。
この日ばかりは校長も寂しそうな顔をしている──のは普段どおりか。おそらくスケット団と話している時だけ、彼のユーモアな部分が最大限に発揮するのでしょう。
それは ほかの人物も同じです。「スケット効果」と名づけて学会で発表したい。
椿佐介の送辞が最高に良かった!
普段から意外と涙もろい彼なら、絶対に泣いてしまいますね。こんな時は素直に泣けばいい。「テキトーで いンだよ そんなもんは
」とリラックスさせる安形も気が利いています。
青春時代という ほんの一瞬
で過ぎ去っていく日々のなかで、ただの偶然
や めぐり合わせ
・運命
・奇跡
──を自分の力に変えていくことが、人生の素晴らしさだと思う。
暴れている吹奏楽部員の件は、「堅物すぎる椿に代わって安形が尻ぬぐいをした」と──まとめられています。でも、よく見ると部員をずっと押さえつけていたのは──榛葉道流なんですよね。
徹底的に良さが影に隠れる男であった。
第 205 話 「オクルコトバ 答辞」
ボッスンが ちゃんと制服を着ていると、「ボッスンなのに」格好いいですね! 帽子をかぶっていないと、なんだかチャラ男(旧文明語)みたいな感じ。ヒメコもリボンをちゃんと留めている。
こんな生真面目な空気の中では、さすがの安形もテキトーには振る舞えない。
「先生や友達への 感謝
」や「母校を誇りに 思う
」気持ちを、安形は「当たり前
」だと言う。しかし、「時期が来たから 去るだけ
」なんて、当然すぎて逆に思いつかない。卒業生というだけで偉そうにする人も多いのでは?
「当たり前のことを、当たり前にやる」という小学校のころに校長が話していた言葉を、自分は いつまでも覚えています。オトナになってから、ますます この言葉の重みを実感している。
安形が言う「後悔は すんな
」と「前だけを 見て進め !!
」は、最高の贈り物です。自分もしっかりと受け取りました。いつも後ろを振り返ってばかりの人生だったけれど、それで得したことはない。
ただたんに先輩からの言葉を贈るだけで終わらなかった! 「安形だけに足形なのか」と思いましたね。
卒業生の全員が足形を付けた──ということは、その中に女子も含まれている。その時の情景を思い浮かべると──、なかなかの絶景だったでしょう(ごくり……)。──って、べつに全員で一斉に やったわけじゃないか。
この足跡は どうなったのか描かれていないけれど、あの校長なら喜んで残しておくでしょうね。生徒たちの思い出を消すような無粋な校風ではない──と信じています。何十年か後の同窓会で懐かしがるだろうなぁ。
生徒会とスケット団との あいさつも味わい深い。とくに加藤希里の「あいかわらず」な ところが面白かった。彼が本当の忍者だったら切腹ものですね。
丹生は「いつもの笑顔」なので冷たく見えてしまうけれど、笑って「楽しかった」と伝えることが最良だと考えていたのでしょう。読み返してみると、卒業式では椿に つられて丹生やミチルまで泣いている。
しかし、浅雛は素の表情なんですよね。だから安形の前で泣くとは思わなかった。卒業式の最中は、ずっと耐えていたのでしょう。もしかすると、ここで安形から「命令
」されるために涙を取っておいたのかも。
最後までずっと椿は「堅え
」ままだったけれど、たぶん安形は それで良いと思っている。椿がボッスンなみのダルンダルンになること──は望んでいなかったはず。
これから先が、椿にとって本当の頑張りどころです。安形ほどユルユルの人が今の生徒会には居ないから、バランスが取りにくい。いま以上にスケット団と生徒会との関係が密着していくのかな。
いつも用意周到なスイッチは、すでに進路を決めています。大学を卒業した先まで考えていそうな気がする。彼なら どこへ行っても成功できそうですね。
スイッチは、勤め人になるよりは自分で会社を立ち上げそうです。──というか、彼の発明品の特許だけで、三代くらいは暮らしていけるよなぁ……。
ヒメコの言葉は、安形への お祝いのなかで一番好きです! 彼女らしい まっすぐな気持ちでしたね。
「みんな それぞれ 色々あるけど それぞれ 自由に やっとる
」は、この作品のテーマだと思う。堅苦しすぎたり自由すぎたりする人は、生徒にも教師にもいます。そして、それで良い!
ボッスンと安形は、表面上は最後まで いがみあっていました。なんだか残念な気もするけれど──、このボッスンの態度は、椿と接する時にも似ています。
おそらく安形も藤崎も、お互いに似た者同士──兄弟のように思い合っている。だから他人から見ると、まるで遠慮のいらない家族同士のように、ケンカをしているように見えてしまう。
というか、ボッスンと安形とは、将来は本当の兄弟になりそうですね。ボッスンが ゆるふわすぎるので、あとはサーヤの努力しだいだ!
そして、最後までミチルはアッサリと流された──。
第 206 話 「話題のスーパー高校生」
「ちょっと小粋な いい話」の後はギャグ回──と『銀魂』の連載開始から相場が決まっています。
しかし、今回の序盤は「ボッスンの親切さ」を取り上げていて、なんだか続けてエエ話のニオイがする。この地味目な始まり方が効果的でした。
島田貴子(しまだ たかこ)と父親を出してきたところも良いですね。こう言っては失礼にもほどが あるけれど、島田を出すと──とたんに画面が地味~っとする。それが今回は良いムードを作っていました。
ボッスンの良さが世間に認められて、母親の藤崎茜(ふじさき あかね)と妹の瑠海(るみ)も喜んだでしょうね。「空より高いところ」に昇った 2 人も同じ気持ちだと思う。
ところで、ルミは「CV: 柏木由紀(AKB48)」と知って、オラべっくらしただ! なんとなく彼女の出番が増えてきそうな予感がする……!
SKET DANCEの登場人物 #主要人物の家族 – Wikipedia
たんなる「ボッスンが有名になった話」で終わりそうなところを、吉備津百香(きびつ ももか)に つなげることで、一変してギャグの世界を展開してしまう! これは見事でした。
開盟学園の生徒からすると、玄柳照子(くろやなぎ てるこ)という名前だけで「笑ろてまうわー」でしょうね。意図的に校歌のキャラと同じ名前にしたのかと思ったら、まったく関係なかった。
作者のあとがき・「セルフ ライナー ノーツ
」を読むと、最初から黒柳徹子さんネタを描くつもりだった──とのこと。テレビ番組を録画して検証しただけあって、照子の「脳内再生率」がパねェ!
「録画した」というところで引っかかって調べてみると──、驚いたことに『徹子の部屋』の DVD は ほとんど発売されていません! レンタル店にあったら人気が出そうなのに。
『徹子の部屋』 30 周年記念スペシャル DVD-BOXが発売されていたけれど、現在は品切れ状態です。あとは十数年前に VHS ビデオのテープが出ていたくらい。
さらに、『サザエさん』の DVD は存在しない! 「アニメ大国日本」なんて幻想だったのでは……。
第 1 話から自分も、「ボッスン」の発音は「ボ」にアクセントで読んでいました。アニメの公式サイトで正式な発音を聞いて、かなりショックだったなぁ……。いまだに違和感を覚えます。
ボッスン 発音 – Google 検索を見ると、自分と同じ意見の人が多い。ですよねー。
あの悪夢──「ペロリポップキャンディ」の CM が放送されてしまいました。そのおかげでヒメコは、3 回目のテレビ出演を飾っている。
ミチル的にサラッと流されたけれど、鬼塚一愛(おにづか ひめ)に目を付けたテレビ関係者も居そうです。モモカのように、ヒメコの本格的な芸能界デビューも近いかも?
ボッスンもテレビに出たのは 3 回目です(よね?)。でも今回の件で、ボッスンにはテレビ出演の声が 2 度と掛からないだろうなぁ……。
第 207 話 「デモンズ・デモンストレーション」
23 巻で一番好きな話でした! 一発ネタ・キャラを 2 人出してきたところも目新しいし、社長の二面性にリアリティがあって面白い。なんといってもツッコミおばちゃんが最高です!
そう言えば『スケダン』は、異常に登場人物が多いことも特徴のひとつですが、この巻の新キャラは今回の 2 人と照子くらいですね。こんなに濃い人物が毎回出てきたら、そりゃ大変だ。
ツッコミ担当のヒメコは、冷静に おばちゃんのツッコミを分析している。かなり学べるモノがあったでしょう。さらなる高みを目指している──のか?
アニメ版は見ていないけれど、おばちゃんの声は聞いてみたい! 完全に男言葉でキレている場面は、どこまで表現できるだろう? かわいらしい声の声優に演じさせると、ギャップがあって面白そうです。『日常』みたいになるかな。
おばちゃんには今後も何度か出て欲しい。たとえば、スケット団がバイトをするたびに店に来る──とか。
発明王のスイッチですら驚くアイデア・グッズも笑えました! そして出すだけ出して終わるのではなく、スッキリと伏線が回収されていくから気持ちが良い。
おそらく「メンチくん
」は、オチから逆に機能を考えたのでしょう。それにしても、どうして こんな形が発想できたのか……。
作者の篠原健太さんこそ「神や !!
」