#### 今頃読み終わる
山口 雅也氏の『マニアックス』を読み終わりました。タイトル通り、*マニアックな人たち*が出てくる短編集です。
「マニアック」の解釈は人それぞれだと思います。巻末の《LINER NOTE》によると、
> Maniacという言葉は、日本ではもっぱら、「熱心な愛好家」という意味で使われているが、英語圏では端的に「狂人」という意味で使われることも結構多いようだ。
とのこと。
日本人の「当たり障りのない物言い」と欧米人の「はっきりとした言葉遣い」の差、というところでしょうか。この作品では、どちらかというと後者が多く出てきます。
『マニアックス』は、同じ著者による『ミステリーズ』の姉妹編、という位置づけになるようです。しかし、『ミステリーズ』がミステリィの短編集なのに対し、『マニアックス』はホラーの短編集でした。『ミステリーズ』と同じように読もうとすると、ちょっと肩すかしを食らうかも知れません。
#### 『ミステリーズ』
切れ味の鋭いミステリィの短編集です。
「犯人は誰だ」というのが主題で、最後に探偵が「みなさんに集まってもらったのは他でもありません。実は、犯人はこの中にいるのです」──という*アリガチなミステリィ*に飽き飽き、という人にお勧めです。
──といいながら、短編の中に上記のような探偵が事件を解決する場面が出てくるのですが、アリガチな感じには書かれていません。ブラックユーモアたっぷりのパロディとして書かれています。
どの作品も、オチが素晴らしい。中にはミステリィと呼べない作品もありますが、それでも、ミステリィを読んだときのような「この先、どうなるんだろう」という*怖さ*が味わえます。ミステリィを余り読まない人にもお勧めできる作品です。
また、ミステリィ好きな人は「ニヤリ」とするような描写も多いです。在り来りなオチを想像して読み進めると、最後にビックリさせられたりして、*ミステリィの可能性*を感じる一冊でした。
#### 『マニアックス』
読み進めていくうちに、どんどん不安になっていく作品が多いです。ホラーといっても、お化けやモンスタが出てくるわけではなく(*巨大な原子プードル*は出てきます)、ひたすら「人間の怖さ」を描いています。
一番恐かったのは、托卵する鳥の話が出てくる作品。托卵というのは、種類の違う鳥の巣に卵を産む行為で、カッコウが行うことで有名ですね。
自分が住んでいるマンションで多発している子供の転落事故。はたして、犯人は?はっきりとした答えが出ないまま終わるのが、何とも恐いです。はたして、托卵行為は人間も行うのか──と。
そんな中、クリスマスのひとときを描いた、とびきり楽しい作品もあります。この作品だけはドタバタコメディと言ってもいいくらい。他にも、馬鹿馬鹿しい映画の話もあったりして、ちょっと和みます。
#### 今後、読んでみたい作品
山口 雅也氏というと、『生ける屍の死』が取り上げられることが多いですね。こちらも読んでみたいです。