『コラテラル』
『コラテラル』は、主人公がヴィンセントという殺し屋で、トム・クルーズがこの悪役を演じる、というのが特徴の映画です。
もう一人の主人公はジェイミー・フォックスが演じるマックスで、タクシー運転手役。彼が、たまたま乗せたヴィンセントの犯罪行為に「巻き添え(collateral)」を食う、その過程で二人が変わっていく、というのが見どころです。
一晩の内に起こった話なので、夜のシーンばかり。しかも大半がタクシー内での男二人の会話。──という、一見すると地味な印象ですが、派手なアクションもあり、二人の演技も見事で、会話も洗練されている。たっぷり楽しめる二時間でした。
この手の話は、最後は殺し屋が改心する、というのがいつものパターンですが、はたして──。

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by G-Tools , 2007/08/04
気になるところ
『ロサンゼルス・タイムズ』紙はこの映画を「完璧」と評した
そうだけれど、いくつか気になるところが。
まず、ヴィンセントはプロの殺し屋として「依頼主のボスにさえ自分の顔を見せていない」という割には、あまりにも多くの人に目撃されています。はっきりと殺しの場面を見られたわけじゃなくても、目撃証言を集めれば、モンタージュの作成くらいはできそう(もちろん、偽名・変装の可能性あり)。
さらに、「仕事」中に派手に撃ちまくっているのも気になる。いくら「無関心の街」とはいえ、さすがにこれだけ銃声が聞こえたら、人が集まってくるでしょう(描写がないだけで、そのたびに殺していた、とか?)。
──という感じで、いくつか首をひねりたくなる所がありました(FBI と警察のグダグダ具合とか)。
仕事中なのに、ヴィンセントがマックスをジャズクラブへ誘う、という場面もびっくり。殺し屋としてはありえない行動です。しかしその意味がわかり、納得。ヴィンセントの非情さが際立った、いいシーンでしたね。
「collateral」とは
タイトルの「collateral」は、劇中では「巻き添え」、つまりマックスの立場を指しています。
しかし、他にも「担保」「見返り物件」などの意味があります。この話でヴィンセントが、そしてマックスが何を差し出し、何を得たか──そこまでタイトルに込められている、と思いました(英語戦闘能力: 5、なので当てにしないように)。
夢
マックスに夢があるを知ったヴィンセントが、「お前は本気でやろうとしてない」と噛み付くのが、一番印象的でした。
ヴィンセントは、自分の仕事を達成するために最善を尽くしている、だからこんな事が言えるのだ、という態度にも取れる。
しかし──ちょっと思ったのが、ヴィンセントは夢があるのにそれを追わなかった、かつての自分をマックスに見ているのでは、と。
ドラマで見てみたい
ヴィンセントやマックスの過去が見たい、と強く思いました。
あらすじだけを見ると地味に終わりそうな話を、これだけ魅力的に描けるのは凄いです。
ヴィンセントが、なぜここまで非情になったのか。それだけでもう一本、作品が作れそうですよね。マックスが過去に乗せた客の話とか。
(余談だけどこの手の過去話で、「じつは過去に二人は出会っていた」というのは、自分は興ざめするタイプ)
もしくは、TV ドラマにしても面白そう。脚本がよければ、3 シーズンくらいは見てみたい。
ヴィンセントは語る
最後に、そんな愛すべき殺し屋、ヴィンセントの名セリフを二つ引用します。
「親は自分の欠点を子供の中に見いだして、その欠点を咎めるんだよ」
「『いつか夢がかなう』と? ある夜、目を覚まして気付く。夢はかなうことなく、自分が老いたことを。お前は本気でやろうとしてない。記憶のかなたに夢を押しやり、昼間からボーッとテレビを見続ける(……)」