ミスト – 「いかがでした?」「あれが本だったら、壁に投げただろう」

シェアする

『ミスト』 (The Mist)

Vampire Season
(霧が出てきたな──店内でビールを勝手に飲もう)

つまらないホラー映画です。

これはもう、「愛すべき駄作」でもなんでもなくて、ひたすら退屈な映画でしたね。たまには、こういう映画も紹介してみましょう。『ハプニング』よりはマシだし……。


この映画の見どころは──どこにもありません。

この映画を絶賛している人の多くは、キャッチコピーの「映画史上かつてない、震撼のラスト15分」を取り上げています(よくこんな映画に、プロが 90 点も付けたものだ……)。

参考: 超映画批評『ミスト』90点(100点満点中)

自分の心には、ラストも「なんじゃそりゃ!」でした。あきらかに、過大評価されている。この駄作を支援している人に向けて、ラストシーンを一行で論破します。この記事の後半をご覧ください。


これから観る人へのアドバイス:

「ホラー映画は 90 分間」という伝統(?)を無視して、本作品は 125 分間もあります。そして、前半がものすごく、かったるい

前半の 1 時間は、このような時間の配分になっています(カッコ内は asiamoth の体感による)。

  • ダラダラした状況説明: 30 分間
  • 頑固な弁護士を説得する: 45 分間
  • 触手さんとのお遊戯: 60 分間
  • 女教祖様のありがたい講釈: 1,000 分間
  • この映画で失った貴重な時間: priceless

──とこのように、前半は、本当に見るだけムダな内容になっています。そのため、これからこの映画を観ようという風変わりな人は、

まず、DVD を真っ二つに折りましょう

そして、前半部分のディスクは捨てて、後半から再生すればいいのです。「後半」の目安は、「夜、ホームセンタの中に巨大な虫が入ってくるところ」ですね。そこから見始めても、まったく問題はありません。

──後半も退屈だけどねッ!

徹底して駄作

この映画からは「面白かったところ」を探すほうがむずかしい。副店長のオリー(トビー・ジョーンズが妙に高スペックだったことくらいでしょうか。ダメな点ばかりが目につきます。

たとえば、店内に怪物たちが入ってこないように、人々は必死でバリケードを築くのですが──、入り口は開けておく、とか。

さらに、映画が終わったあとのクレジットタイトルまで退屈──という徹底したつまらなさ! クレジットの途中までは音楽が流れているのですが、途中からは環境音(軍隊らしき人物たちの足音)だけになるのです。

さすがに途中で止めた。


しかしまぁ、この映画を究極的にダサく・駄作にしているのは、狂信者──ミセス・カーモディ(マーシャ・ゲイ・ハーデン)の存在です!

よく見ると美人な女優なのに、ここまで嫌悪感が出せるのはすごい! 彼女の演技力は素晴らしい──ということですね。

彼女の存在感は良いのですが、そこから聖書・宗教の話へ発展して「──だから『ミスト』は傑作だ!」と声を大にして叫ぶのは、それこそ狂信的です。

どこからどう見ても、『ミスト』は聖書の話ではないでしょう。そう思っている人は、『エヴァンゲリオン』から聖書にハマった人みたい。冒涜的ですらある。

ラストシーンを論破

あの衝撃的な最後を、一行でひっくり返します。「ネタバレ注意」で書くと、主人公は、


赤の他人にそそのかされて、自分の息子を殺しただけ。


やけにタフな老夫婦から「お前はよくやった。もう森へ帰ろう」(『もののけ姫』ネタ)的なことを言われて、主人公は自分の息子を含む 4 人を銃殺し、苦悩する。

──その苦しみは分かりますが、肝心の息子が「びーびー泣いているか寝てただけ」という印象なので、あまり感情移入ができません。奥さんも、「不運だったね」で終わってしまう。

彼らよりも、虫を焼き払おうとして──すべって転んでヤケドして、最後まで苦しみ続けた人のほうが、何倍も気の毒だった。


文句ばかり言っていないで、改善案を示しましょう。

まず、主人公の設定がダメダメです。「ただの絵描き」なのに、強すぎる。息子もウザすぎ。

主人公は、シカゴの殺人課に勤務している警察官にしましょう。第一線で活躍していたが、誤って一般市民を射殺してしまい、警察を辞めて一家そろってイナカへ行くことにする。彼の父親は、副所長まで登りつめて引退したばかりです。

これで、警察官の主人公と父・彼らを支える母・妻・息子という警察官一家がそろった。町の人たちからは「よそ者」と思われている疎外感と、主人公が強い理由に説得力を持たせられます。

店内での戦闘によって、主人公の一家は町人たちから信頼を得ていった。しかし、女教祖の(クレイジィな)神からの預言によって、けっきょくは邪教徒として見られてしまう。もともと主人公一家を移民だと思っていた町人たちは、ためらいなく襲いかかる。

店の外へ逃げ出した主人公たちは、途中で何度か怪物たちに遭遇し、絶望した。そして主人公は、父親・母親・妻たちと相談の上で、苦渋の決断を──。

──とこうすれば、すこしは良くなる。どうだ!

余談

今回もタイトルは、ゲーテからの借り物です。

集会:ある大きな集会からある時、静かな学者が帰宅した。「いかがでした?」と尋ねるとー「あれが本だったら、わしは読まないだろう」と彼は答えた。

Twitter / @ゲーテ名言集: 集会:ある大きな集会からある時、静かな学者が帰宅した …

あまりにもヒネリがないですが、ひねる必要もなし。