『スキャナー・ダークリー』
キアヌ・リーブス主演の SF 映画、というと真っ先に『マトリックス』を思い出しますが、本作ではまったく異なる役柄を演じています。
原作は、フィリップ・K・ディックの『暗闇のスキャナー』。作者本人の実体験を元にした小説だそうです。まったく前知識なしに見ましたが、今の時代のほうがよくあう話でしたね。
とにかく、一目見て忘れられない映像がすごい。けっこう話が複雑で、人によっては合わないかもしれないですが、この映像だけでも見て欲しいですね。上記の公式サイト上で、静止画像が見られます。
- スキャナー・ダークリー
- キアヌ・リーブス ウィノナ・ライダー ロバート・ダウニー・Jr.
- ワーナー・ホーム・ビデオ 2007-05-25
- 楽天ブックス: スキャナー・ダークリー 特別版
by G-Tools , 2007/10/08
ロトスコープ
本作品は、すべてのシーンが「ロトスコープ」と呼ばれる手法でアニメ化されています。
撮影した実写映像をトレースしてデジタル・アニメーションにする、と言うのは簡単ですが、想像するだけでも大変な作業です。実際、実写だと一分間のシーンをアニメ化するのに、何百時間もかかったそうです。
中でもすごかったのが、「スクランブル・スーツ」。これは、キアヌが演じる麻薬捜査官が、潜入・おとり捜査を行う関係上、同僚からも素顔を隠すために着る全身スーツです。このスーツは、着ると絶えず様々な人種・性別の人物映像を投写する──と絶対に言葉からは想像できないような姿になるのです。
変化する映像を作るため、これまた膨大な時間がアニメーションに費やされたそうですね。
──まぁ、ぶっちゃけ、このスーツを着るのは職場だけだし、「単なる仮面」でよかった気もしますが、この演出も原作を忠実に再現しようとした結果だそうです。
ウィノナ・ライダーの演技
大好きなウィノナ・ライダーが出演しているのもうれしいところ。
──なのですが、正直、アニメ化されていて誰か判らなかったのが残念なところ。その分、メイキング映像のウィノナ・ライダーの可愛らしさを堪能しました(じつは年上なのを知ってビックリしたけど)。
そうそう、メイキング映像ではやっぱり、ウィノナ・ライダーが演じた「あの場面」が見どころですね。普通なら代役を立てるところを、ちゃんと本人が演じているのがすごい。しかし、共演したキアヌはやりにくかったのでは、と想像して笑いました(念のために言っておくと、ベッド・シーンじゃないよ)。
ストーリィが複雑
ストーリィはちょっと複雑でしたね。
まず、キアヌが演じる捜査官・フレッドが、「オレがオレを監視」している、というところで、もういきなりついて行けなくなりました。オレオレは詐偽だけにしておいたほうが……。
最後の方でどんでん返しがあって、けっこう衝撃的シーンのはずが、もう頭がオレオレを理解できなくてあまりショックを受けませんでしたね。
なんというか、監視していることは意識しているのに、(自分に)監視されていることは意識していない、という状況が飲み込めませんでした。ようするに、麻薬によって判断が鈍っている、という理解でいいのかな? それにしては、自分が監視中に目撃したことに腹を立てたりしているし──。
原作ではどうなっているか、ちょっと気になりましたね。もうちょっと、映画ではわかりやすい説明が欲しかったかも。