『アダプテーション(Adaptation.)』
『マルコヴィッチの穴』の監督・脚本家コンビが贈る作品、ということで、本作品も かなり奇妙な お話です。どちらかというとコメディというよりも、感動する話でした。
あらすじだけを書くと、
「冴えない脚本家が『花を主役にした映画』の脚本を なかなか書けない話」
──という、史上最悪に つまらなそうな映画(笑)ですが、当然、そんな退屈させる作品には仕上がっていません。とくに後半は、意外な展開の連続なので、前半の のんびりした雰囲気とのコントラストが面白いです。
本作の主人公、チャーリー・カウフマンは、実在の脚本家──というか、前作の脚本を書いた人で、『マルコヴィッチの穴』の撮影風景や懐かしい場面などが劇中に出てきます。前作を見てから本作を見たほうが、より楽しめますよ。
ストーリィ
チャーリーは、前作で大当たりしたので、今度は(これまた実在の)スーザン・オーリアン(メリル・ストリープ)原作の『蘭に魅せられた男―驚くべき蘭コレクターの世界』の映画脚本を任されるが、まったく書けない! ──というのが話の大筋です。
途中で何度も、スーザンが「驚くべき蘭コレクター」ジョン・ラロシュ(クリス・クーパー)の取材をする話が挿入され、後半でチャーリーが関わってくるのですが、その後が見ものです。
見どころ
──この時点で、何を言っているのかわからねー感たっぷりですが、とにかく この映画は、あらすじだけでは面白さが わからないですね。悪く言えば非常に地味な話を、これだけ面白く仕上げる脚色(adaptation)の力が凄い。
また、本作は主人公と双子の兄弟・ドナルドを演じた、ニコラス・ケイジが素晴らしい! 一人二役を見事に こなした演技力に注目です。
──と、ここまで盛り上げておいてなんですが、本作は非常にショッキングなシーンがあります。誰が見てもショックを受けるアレは もちろんですが、もっと怖ろしいシーンが……。
『ハンニバル』を、ホルモン焼き や子羊の脳みそを食べながら笑って見られる人も、思わず目を覆いたくなるようなシーンが……。
増田の『行くんじゃなかった』を読んで「これなんてオレ?」と思ったアナタ。覚悟してから ご覧ください……(「三次元の女なんて!」と呪文を唱えながら)。
- アダプテーション DTSエディション
- ニコラス・ケイジ メリル・ストリープ クリス・クーパー
- アスミック 2004-02-06
- 楽天ブックス: アダプテーション
by G-Tools , 2007/12/17
ニコラス・ケイジの演技が見事
主人公のチャーリーはネガティブ思考、兄弟のドナルドはポジティブ思考。ともにニコラス・ケイジが演じているわけですが、ここが本作品のツボですね。
チャーリーは奥手で、ドナルドはナンパな男。──そう、話の流れ的に、ドナルドはブラピとかレオ様が演じても おかしくないくらい、モテるのです。
容姿は兄弟ともに「(シャレにならないくらいの)ハゲでデブ」なのに、この差はなにか? ──どちらかというとチャーリー寄りの方は、ちょっとだけ考えてみると 良いかもしれません。
ようするに、ドナルドは自信たっぷりで、いつもスマイルなんですよね。──ただそれだけ なんですが、ニコラス・ケイジは きっちりと演じ分けています。チャーリーの時は本当に暗そうだし、ドナルドは魅力的に見えてきます。
──そうそう、ドナルドにも ちょっと暗い過去があるのですが、その過去(昔 夢中だった女の子の話)を語るドナルドが また格好良い!
「愛されるよりも、愛する方が大切」──使い古された、良い意味にも悪い意味にも取れる言葉ですが、本作では輝いていましたね。これ、女性を口説くときに使うと台無しなので、ぜひとも大切な場面、本作のように親しい人を慰めるような状況で言うと良いでしょうね。
書けない作家
それにしても、昔から「書けない作家」ネタって多いですよね。
MORI LOG ACADEMY を毎日 読んでいる人だったら、
「ふーん、作家は毎日毎日 5000 文字以上も書くのか。大変だなー」
と思っているかも知れませんが──(え、そんな人いない?)。森博嗣 さんくらいの執筆速度の人って、そうそう いないのでは?
作家さんって、なんとなく、本作の主人公のように、白紙と にらめっこしている姿を思い浮かべますよね。
自分も、毎日更新を続けているうちに、「──あと一時間で今日が終わるのに、書けない!」ということが多いですが、まぁ、気楽なもんです。でも、あの「書けない感覚」って、独特ですよね。何とも言えない絶望感。ブログやってて味わった、貴重な体験です。これが仕事だったら……。
三次元の女なんて……
さて、衝撃のシーンですが、怖ろしいことに二箇所もあります。──えっと、別のショッキングなシーンも二箇所ありますが(ややこしい!)、ここで紹介するのは、
- パーティのシーン
- レストランのシーン
──ですね。とくに、レストランは失禁もの。ゲンジツ世界(なにそれ?)で こんなことが起こったら、と想像するだけで、布団をかぶってヒキコモリたくなります。
逆に、「──え~、こんなことするオンナなんて いねーだろ(笑)」などと言うリア充な人って、本作を見ても何も得る物がないのかも、と ふと思いました。