HUNTER×HUNTER 2 巻 「霧の中の攻防」 2 – 球を追い続けるような人生

シェアする

『HUNTER×HUNTER(ハンター×ハンター)』 No.2 「霧の中の攻防」

Show Off
(1 人だけ勢いよく燃える──そんな人生も良い)

ゴンとキルアで、ネテロ会長への接し方が あからさまに違っていて楽しかった。「いい性格をしている」同士のキルアとネテロは、会話をするたびに衝突しそうです。どんどん ぶつかって欲しい。

ネテロが持ち出した「ゲーム」の話は、普通だったら、「ほかの受験生よりも実力の劣る少年たちのために指導した」という場面として描くはずです。つまりは修行シーンですね。

ところが、本当に会長は退屈なんで 遊び相手を 探してただけなんですよ! これにはビックリだ。

ある意味では、子ども 2 人を一人前のように扱っているのかな。「大人げない」とも言うけれど。

No.013 「真夜中のゲーム 1」

ハンター試験へ参加した回数(だけ)が異常なだけあって、トンパはするどい指摘をしている。すべては新人をいたぶるためですが、ちょっと感心してしまった。

クラピカでさえもアッサリと寝ようとしていたけれど、たしかにトンパの言うとおりです。ここで油断をして落ちたのでは元も子もない。

結論から言えば、飛行船の中で休んでいて正解でした。そもそもハンター試験には、イジワルな引っかけが ほとんどありません。正々堂々と難問を出してくる。

しかし、クラピカにもレオリオにも(読者にも)、この時点では判断のしようがない。

経験者であるトンパの言葉に信頼性を求めるほうが、生存できる可能性は高いでしょう。より確実なのは、トンパの言葉ではなく、行動を見るべきだった。

それはそれとして、簡易的なベッドすら支給されていないため、受験生たちは床に座って寝ている。試験が過酷であることは仕方がないけれど、会場までの間は ゆっくり休ませて欲しいですね。ハンターになったら そんなことを言っていられないか。


サトツ・メンチ・ブハラの試験官トリオは、番号だけで受験生を評価しています。試験官だから当然かもしれないけれど、驚くほどの認識能力だ。

とくにメンチの言葉に注目しましょう。

99 番の文句をブーブー言っているけれど、ブハラ・メンチの試験でキルアは目立たなかった。ゴン以外とは会話すらしていません。それなのに、メンチはキルアの性格を見抜いている。これは「女のカン」なのかな。

サトツの発言は興味深い。

メンチの「スシ試験」では、戦闘の能力よりも未知に対する気骨を問うていました。未知なる物を求めていく上で、知らず知らずのうちに武芸が達者になる。それがハンターとしての生き方だ──という道理です。

我々ハンターは 心のどこかで 好敵手を求めて います」というサトツの言葉も、戦いのことではなく、それぞれの道で認めあいながら 競い合える相手のことを指している。

ところがヒソカは違う。

我々がブレーキを かけるところで ためらいなく アクセルを ふみこめるような──とヒソカを言い表し、彼のことを異端児とサトツは呼ぶ。

ただ、何だかんだ言いながらも、サトツはヒソカと戦ってみたい気持ちもあったのでは? ひょうひょうとしていて物静かで優しい人──だけではない深みをサトツには感じます。昔はヤンチャだったりして。


離れた場所から見ればゴンとキルアは、子ども同士の楽しそうな会話をしているみたいです。内容に耳を傾けると、キルアは自分の家族全員が暗殺稼業だと語る。ゴンも普通に聞いています。

家族を刺して家出をしてきたキルアの気持ちを考えると、とても笑える状況ではありません。ところが この作者は、わざとコミカルに描いてしまう。ゴンも読者も釣られて笑えてきます。

この場面を ほかの作家が描いたら、1 ページではなく 1 話丸ごと使ったり、涙ながらに語らせたりして、キルアという人物を薄っぺらにしたかもしれません。

冨樫義博先生だけが描ける場面の 1 つです。

No.014 「真夜中のゲーム 2」

上で書いたようにネテロにとっては遊びでしかないけれど、あとあと試験が控えている 2 人には酷だったのでは? 何時間・何十キロと走るよりも、ネテロとのゲームのほうが疲れている。

それとも、じつはトレーニングの一環だったのだろうか? たとえば、はるかに実力が上の相手に どう挑むか──という問題をネテロは出したのかも。

ゴンとキルアは、協力と工夫でネテロを乗り越えようとした。そして、「敬うべきお年寄り」扱いをいっさいしていないところが小気味良い。ナントカ団体からクレームが付いていそうだな……。


最近のバトル・マンガでは「最初から強い主人公」が主流です。ゴンも普通の子ども──いや普通の大人よりも強い。

しかし、状況の判断も戦闘の能力も、あきらかにキルアのほうがゴンよりも実力者です。ゴンの性格を引き立てる役でもあり、実況・解説役でもありながら、キルアは 1 人でも主役になれるくらい「キャラが立って」いる。

そのキルアが近くにいることで、ゴンの利点も生きてきます。本当に良いコンビですね。

配役的には『幽☆遊☆白書』とカブっている(浦飯→ゴン・桑原→レオリオ・蔵馬→クラピカ・飛影→キルア)ように思えた本作品ですが、まったく違っている。うれしい裏切りでした。

意外と 油断もスキも ない奴とゴンのことを評価していたネテロは、もう 1 人の「ゴンと似たような人物」を知っていたはずです。数々の偉業を残しているハンターであり、ゴンの父親であるジンのことを──。

No.015 「多数決の道」

自称・「一流の ロッククライマー(どやっ」のアプローチは失敗したけれど、外壁を伝う作戦はアリだと思う。ものすごく長いロープを持っていたら、怪鳥に襲われないくらいの速度で一気に降りられたのでは?

また、ヒソカなら怪鳥を倒しつつ下へ行けたと思う。ヒソカと言えば、彼のような「協調性ゼロ歴 = 実年齢」みたいな人物が、よく多数決の条件をクリアできたな──と思っていました。それは違う。

トリックタワーには多くの道が用意されており、それぞれクリア条件が異なる。この点を見逃していました。たまたまゴンたちは「多数決の 道」を進んだだけです。

No.016 「試験官登場」

まさかトンパが仲間になるとは思わなかった! 主人公メンバの一員になった以上は、彼も成長して頼れる人物になるのだろうな──と 0.05% くらいは考えましたね。考えなければ良かった。

レオリオのイチャモン付けは、ハンター世界でトップ・クラスです! この場面を見ても分かるように、レオリオが 1 人で騒いでくれるおかげで、まわりの人間は冷静になれる。もめ事は専門職に任せておけばいいから、けっこう楽ですね。


試練官」なる人物を出して、戦わなければ先へ進めない状況を作る。いよいよバトルに突入か──というシーンです。ところが やはり、「普通のバトル・マンガ的な戦い」を作者は描く気がなかった。

トンパの「必殺技」には笑ったなー。いつも冷静なクラピカでさえも、キャラが崩壊して状況について行けていない。

No.017 「不自由な 2 択」

新人いびりを続けているトンパの気持ちは、これまでサッパリ分からなかった。ただ、今回の冒頭で語られた彼の心境は、ほんのすこしだけ理解できる。

マンガやアニメ・映画を見る行為は、自分の生命は 堅守しながら すぐ側で死の瞬間を 見物できるショーを楽しむトンパと似ています。

結果的にトンパの行動が正解だった──という見せ方も興味深かった。作者はトンパのような人物が好きなのかも。


試練官は何人が連れて来られたのだろう?

刑期の短縮を願う囚人は多いと思うけれど、受験生が すくなかったら全員には行き渡らない。不公平ではないか──と思ったけれど、それも受験生しだいなのでしょう。

この試験あたりからキルアは、積極的にゴンのことを気にかけています。彼から見たら、まだまだゴンは未熟者なのか。いや、ほとんど初めてできた友だちだから、必要以上に心配しているのでしょう。


試練官・セドカンのゲームが印象深かった。

サブタイトルにもなっている「不自由な 2 択」以上の罠を出しておいて、そこから さらにゴンが上回る。このタワーでは おとなしかったゴンが、ようやく本領を発揮しています。

ゴンの発想の柔軟さと決断力を見るたびに、ああ彼が主人公なのだな──と再認識する。

ただ、刑罰を受けている連続爆弾魔の彼に、仕掛けのあるロウソクを持たせるなんて、かなり危険だと思うけれど。