バクマン。 #20-1 「未来と階段」 シュージンの心遣いと落ち込む見吉

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『バクマン。』 20 ページ 「未来と階段」 (週刊少年ジャンプ 2009 年 06・07 合併号)

待望のコミック 1 巻が発売された。一般的なジャンプコミックスの大きさだが、たった「7 ページ」分しか収録されていない(さて、このトリックが解けるかな……)。

バクマン。 1 巻「夢と現実」 大場つぐみと小畑健がもう最高! : 亜細亜ノ蛾

良い機会なのでまとめ記事を書く──つもりだったが、代わりに素晴らしいまとめ記事を紹介する。

マンガがあればいーのだ。 「バクマン。」によって明かされたジャンプシステムをまとめてみる。

「クイック・ジャパン」に大場つぐみ・小畑健のインタビューが載っているそうだ。これは読んでおかねば!

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結婚でしょ

1 ページ目から「ウマい!」と言いたくなる。何気ないシーンだが、サイコー・シュージン・カヤのキャラクタが分かりやすく描かれている。そう、よく見ると「説明セリフ」なのに何気なく見せているのがウマいのだ。

見吉がため息をついている場面は意外だった。サイコーとシュージンに対して、見吉がそんなに引け目を感じていたとは……。この場面の見吉は、もう少しサイコーに腹を立てても良いと思う。

いつにも増してサイコーの態度は素っ気ない。サイコーは、亜豆のステップアップを喜びつつも「先を越された」と感じている。その複雑な心境から機嫌が悪そうに見えるわけだが、見吉に対してイヤな態度を取る必要はない。そのあたりの気持ちの整理や気配りができないのが、サイコーの欠点だ。

彼氏の友達と自分の親友が将来結婚する・お互い夢に向かって がんばっている──見吉が興奮するのもよく分かる。それなのに、最終的に落ち込んだ状態で帰ることになった見吉がかわいそうだ。まぁ、マンガには描かれないところで、シュージンから埋め合わせがあるだろう。

俺達のアニメ化の夢

そのシュージンは、また「超絶・気配り」を発揮している。「知り合いが声優をしているアニメを 2 人で見る」ことを(わざわざ)許可を取り、さらにシュージンはサイコーに謝っている。その上、シュージンは細かいことをサイコーに突っ込まれる。──いやいや、どんだけサイコー様は偉いんだよ! と思ってしまった。

とはいえ、高校生だから仕方がない。誰もがシュージンのような配慮ができるわけじゃない。サイコーのように、友人に対して無愛想な態度を取る人は、オトナにも多い。

シュージンの人柄に引っ張られるようにして、見吉もサイコーに気を遣っている、というのが微笑ましい。というか、カヤが強気な態度を取るのはシュージンに対してだけなのか。ほとんど勘違い・偶然から始まった恋愛だが、シュージンと見吉は末永く続きそうだ。

理想の女の子

男がマンガを描く動機のひとつが、「女の子を描きたい」である。しかも、「可愛い」とか「理想の」とか都合の良いマクラコトバが付く。

かわいらしい女の子を描くのは、ものすごく難しい。なにしろ、それだけで「メシが食える」から。ファストフードやコンビニの店員だって、自分で自分を養うくらい稼ぐのは大変だ。ましてや、マンガ家は「話や絵の価値を買ってもらう」仕事である。言葉を選ばなければ「お金になるヒロイン」を描くのがどれほど難しいか……。一瞬だけマンガ家を目指した自分には、よく分かる(3 日で挫折したが)。

『バクマン。』では「不細工・変な顔は鼻を強調して描く」ことをベタな表現として多用している。実際、鼻すじと鼻の下・小鼻をしっかり描いて可愛く仕上げるのは、どんなに絵が上手な人でも困難だ。絵柄によっては不可能だろう。

多くのマンガ家が、鼻をほとんど「く」の字で描いている。耳もかなり省略していることが多い。読者もあまりそこには目がいかない。鼻と目のアップだけで「作者当てクイズ」を作ると面白いに違いない。

それにしても、同じページでサイコーの絵は変わりすぎだ。ここは作者からするとギャグで描いているのかも。絵柄からバランスから、何もかも美化されている。メタな視点から見ると、サイコーが描いた亜豆は本人とそっくりだ、というのが笑える。シュージンの「……」という無言の突っ込みも合わせて、複雑な味わいのある面白さだ。このようにクロウト好みの笑いを はさんでくるから油断ができない。