ISO 感度
「ISO 感度」は、デジタルカメラの世界で、もっとも誤解されているモノではないだろうか。
結論から書くと、ISO 感度とは「ピオリム」である。──たぶん、伝わる人は 1 万人に 1 人くらいだと思うので、順を追って説明しよう。
あと、ISO 感度を「ISO」と略するのは、やめて欲しい。「携帯電話」を「携帯」と呼ぶようなものだ(自分は「ケータイ」と書いて略称である事を示す)。
その意味は?
ISO 感度とは何かを、アナタは説明できるだろうか?
某・価格を比較できるサイトの掲示板で、
「カメラ A は ISO 感度が 3200 までだが、カメラ B は 12800 まであるので、カメラ B のほうが優れている」
といった本末転倒の書き込みを見たときには、「頭痛が痛い」思いをした。そのあとで、痛いのは頭ではなく「片腹」であることに気が付く。──これ以上、痛い書き込みについて言及するのはよそう。
さて、上記は論外としても、「ISO 感度の数値が高くてもノイズが少ないカメラは優秀」といった基準で見ていないだろうか? あるいは、「暗いところでも良く写る基準」だとか。
「ISO 感度」を英語では「ISO speed」と言う。
「──え? なんでスピードが感度になるの?」と驚いた人もいるはずだ。その名前自体に「ノイズ」や「暗い」といった意味は含まれていない。
では、ISO 感度とは、いったい何だろう──?
シャッター速度との関係
デジタルカメラにおける ISO 感度について、Wikipedia には明確にこう書いてある。
高感度になるほど暗い場所での撮影が可能になり、シャッター速度を速くできるがノイズが多くなる。
──じつに簡潔だ! なんとも簡単な話である。
すこしだけ回りくどいが、より分かりやすく説明してあるのが「はてなキーワード」だ。
ISO感度を高くすれば暗いところでの撮影に有利になる(手ぶれの危険性が減る)かわりに画質が低下し、ISO感度を低くすれば高画質で撮影できるかわりに暗いところでの撮影に不利になる(手ぶれの危険性が増える)。
デジカメWatch のせい !?
いつのまにか、ISO 感度は「高感度時のノイズの量によってデジカメの善し悪しを決める目安」となってしまっている。なげかわしい事だ。
あえてサイト名を出して書く。ISO 感度が本来の意味から外れた目で見られるのは、「デジカメWatch」のせいだ!
正確に言うと、「デジカメWatch」風の作例を掲載するサイト全般である。デジカメ Watch の名前を出したのは、自分がよく見るサイトだからだ(ようするに、好きなサイト)。
たとえば、自分が好きな NIKON D90 の実写速報を見てみよう。
ISO感度別作例
に各 ISO 感度の作例が並んでいる。この作例の存在理由が、まったく分からない。
上で見たとおり、ISO 感度はシャッター速度を上げるための補助でしかない。では、シャッターを切る速度を上げたい状況とは? 動く物を撮影する場合か、手ブレを防ぐためだろう。
それなのに、この作例は「カメラを固定」して「静物」を撮影している。まるで意味が分からない。
そもそも、この室内の明るさが明記されていない。明るい屋外などで撮影した場合との差も不明だ。
自分がディレクタだったら、「○○光を使った明るさ○○ルクスの室内で、時速○○キロメートルで走る鉄道模型を撮影した作例」を載せる。ISO 感度とシャッター速度が どれくらいのときに、動く被写体が どうやって写るのかが、明確に分かるはずだ。
残念な事に、大手デジカメサイトをマネして、アマチュアの方も「暗い場所で静物を撮ったときにノイズがどれくらい乗るか」という作例ばかりを撮っている。その結果、ザラザラした表面をした綾波レイのフィギュアを見るハメになる。または、モヤモヤした夜の公園だとか。
ハッキリ言って、そういった面白くない写真を撮るのは やめよう。
暗いなら、カメラを固定して、シャッター速度を遅くすればいいだけだ。三脚がなかったら、カメラをどこかに置くか、ピッタリと くっつければ良い。壁でも柱でもヒザでも、何でも使おう
SONY α300 のマニュアルだったと思うが、しゃがんだ際に「左腕のヒジと、左足のヒザ」をつけて、カメラを固定する姿勢が描いてあった。素晴らしい!(ちなみに、ヒジとアゴをつけると恐ろしい事が起きるので、絶対に試すなよ! 絶対だぞ!!)
全カメラメーカは、「初心者向けの便利な機能」(そして中級者以上には苦笑される機能)の開発を進める前に、こういった初歩的なカメラの使い方をユーザへ示すべきだと思う。
まとめ
以上で、お分かりいただけただろうか? もう一度まとめよう。
ISO 感度とは、「暗い場所での撮影の際に、被写体ブレ・手ブレを防止するため、シャッター速度を稼ぐための基準値」なのである。ノイズの増減は、あくまでも副次的なものでしかない。
上のほうで書いた「ピオリム」とは、ドラクエに出てくる補助呪文である。効果は、味方全員の「すばやさ」を上げる。──ようするに、シャッター速度(すばやさ)を底上げするための補助(呪文)が ISO 感度、というわけだ。
ここまで書いてから、良い記事を見つけた。下記のページが分かりやすい。
ITmedia PCUPdate:第7回 ブレとシャッタースピードとISO感度の関係 (1/2)
ただ、2 ページ目の最後のほうで、「プラス方向の露出補正」を勧めているのが気になった。シャッタースピードを速くするためには、露出補正はマイナス側にするのが良い(-1/3 から -1 くらい)。写真は暗く写るが、パソコンで明るくすればいいのだ。
とにかく、撮影者が意図しないブレはゼロにするべし! 最適な露出(シャッター速度・絞り)と ISO 感度で撮ろう。
そして、ISO 感度や画素数を ただ上げるだけの、意味のない戦略をやめよう!>各メーカへ
コメント
正確でない意見だと思う