マンホール
これは最高に面白いマンガです!
まず、絵が上手ですね。リアルでありながら「劇画調」ではなく、線が整理されていて読みやすい。絵が話のジャマをしないため、すんなりと物語に入り込めます。
そして、ストーリィが非常に良くできている。伏線がウマく回収されていて、読後に「あれは何だったのか?」という余分なモヤモヤ感が残らない。
読み終わってみると、タイトルの『マンホール』も意味深であることに気がつきます。manhole ──「人」の「穴」ですからね……。
いくらでも話を引き延ばすことができるはずなのに、単行本 3 冊分で完結している──、という点が成功の要因でしょうね。
──それでも、同じ作者による同じ世界観で、派生した作品が読んでみたいです。それくらい、この作品も作者も好きになりました。
ジャンルで言えば(バイオ)ホラーになるため、「コワイのは苦手だから……」といって尻込みをする人もいるかと思いますが──、大丈夫です! なぜなら、
いま、アナタが生きている世界
のほうが、何十倍もコワイのですよ……(ホラ、アナタのうしろに──)。
グロいだけではない
第 1 話の冒頭から、いきなりグロテスクな場面が出てきます。コワいと言うよりも、気持ちが悪い。一体何が起こったのか、と考えるヒマもないくらいに、次から次へと悲惨な犠牲者が増えていく──。
このあたりは、ゾンビ物のホラーやパニックホラーみたいな感じですよね。
物語の中盤あたりで、適当なバイオハザード(生物災害)の理由をでっち上げておいて、あとはひたすらにヒロインがキャーキャー騒いだり、主人公が格好いいところを見せたり、
- トム
- 「──ん? 何か物音がしたな。ちょっと見てくるか」
などと言い出したりする(トム、逃げてぇー!)。
『マンホール』も、そういうアリガチな展開があるかと思いきや──、そこは上手に料理してありますね。むしろ、ベタな展開・描写を効果的に利用しています。
最近になって『バクマン。』のおかげで流行しだした(asiamoth 調べ)、
「シリアスな笑い」(ビニール袋を頭からカブるヒロイン)
もありました。
また、気味が悪い姿になった「犠牲者」も、そうなった経緯を知ると──単純に同情できない、という描き方も面白いです。
被害者と犯人の、どちらが悪いのか──どちらを憎むべきなのか──、
お色気の場面も(序盤から早々に)見られるし、まさに盛りだくさんの内容です。
ミステリィ的な展開
そして驚くことに、ミステリィ作品のような要素までありました。「犯人は誰だ」という展開や、主人公たちの推理・どんでん返しもあります。
あまり書くとネタバレになりますが、この「どんでん返し」の部分が一番スゴかった!
正体の知れない犯人像が、徐々に明らかになっていく。異常としか思えない犯人の思考をなぞっていくと、思いも寄らない犯人と「犯行の理由」が見えてくる。
この謎解きの部分は、大好きなホラー映画である『SAW』を思い出しました。
『マンホール』も『SAW』も、犯人の気持ちがすこしは理解できてしまう。同情・同調しそうになります。そこが、たんなるホラーでは終わっていない点ですね。
さらに、『マンホール』は、犯人の心情を見せる描き方が素晴らしい! どんでん返しも単純に終わらず、感動すら覚えました。
読んだキッカケ
毎度オナジミの「お友だちから借りたマンガ」シリーズです。
最近、コンビニでよく見かける、再編集版の単行本を貸してもらいました。こちらは上下巻の 2 巻構成です。ザラザラとした軽量の紙質で、持ち歩いたり寝転んで読む時に便利ですね。──むしろ、通常のコミックをこの形で揃えたくなりました。
作者の筒井哲也氏は知りませんでしたが、ほかの作品も読んでみたくなりました。
筒井哲也 – Wikipedia によると、自身のサイトで公開していたマンガが話題になり、雑誌での連載が決まったとのこと。最近よく聞く話ですね。
──「出る杭は打たれる」と言いますが、それは中途半端に出ているからです。あまりにも飛び抜けていると、多くの人から支持を受けるわけですね。
作者のサイト: STUDIO221

