『SKET DANCE(スケット・ダンス)』 第 20 巻 「SOLITUDE」
20 巻の後半は、生徒会 期待の(?)新星・加藤希里の話が中心でした。ようやく彼も、『スケダン』の世界に なじんできたな──といった感じです。
でも、その「なじみ方」が意表を突いていた!
また、『銀魂』とのコラボレーション企画も見逃せません! 普通の「合作」とは一味違う点も、この師弟コンビらしい ひねくれ方です。主人公 2 人の髪型(と性格)くらいに、ねじ曲がっている。
第 176 話 「SOLITUDE 1」
開盟高校では性的な犯罪が多い──という感想を、2 巻に 1 回くらいは書いています。
『SKET DANCE(スケット・ダンス)』 第 18 巻 感想・1 | 亜細亜ノ蛾
女性を直接襲う話こそ すくないものの、「高校生には ありがちなことだよね」というネタとして描いている感じがして、気になりました。作者の意図はともかく、後押しされるアホが出てこなければ良いけれど……。
仲間が欲しかった からじゃないのか
とキリに言う椿は、かつての自分を思い出しながら問いかけているのでしょうね。スイッチやヒメコの場合など、同じ場面を繰り返しているようですが、そのたびに心を動かされます。
友だちや仲間が当たり前にいる人には、その ありがたさが分かりません。世の中には、仲間の作り方を知らない人も多いのです。
木原は、そんな「かわいそうな人の 1 人」として象徴的に描かれていました。転向したあとの彼は、どうなったのだろう……。
鬼姫としての過去を捨てて、ヒメコは鬼塚一愛として生活している。──と本人は思っているけれど、過去を清算
するどころか、連日のように暴力を振るっています。
もちろんヒメコは、「暴力のための暴力」を楽しんでいるわけではなく、学校の生徒や街の治安を守っている。感謝されることも多いでしょう。
しかし、ヒメコは警察官ではありません。そもそも、「暴力には暴力を」は、この国では成り立たない。
今回のヒメコが流した涙の味は、いつかは味わう日が来ていたでしょう。それが轡のような最低な教師が原因だったのは、良かったのか悪かったのか──。
第 177 話 「SOLITUDE 2」
前回は、いかにも「キリが轡を拘束した」と思わせるような終わり方です。「週刊少年ジャンプ」で読んだ時には、「ああ、いつもの引っかけだな」「主犯は木原か」などと予測したのですが──、
犯人は加藤希里だった。
あまりにもそのまますぎて、逆に引っかけられた思いです。上質なミステリィを読んだあとに感じる「ちくしょう、だまされた!!(満面の笑みを浮かべながら)」──という さわやかさは皆無でした。
少年マンガで よく見る「悪を懲らしめる」場面なのですが、読んでも気持ちよくない。それはなぜか。
──「効率よく相手を苦しめる拘束方法」といった忍者としての知識が、キリも轡も同じ「陰湿な人間」に見えてしまうのです。
もちろん、作者の計算どおり──なのでしょう。
今回の話が、「スタイリッシュにキリが悪徳教師をやっつける」話なら、気分よく読めました。──ノンカロリィのドリンクのように後味サッパリで、あとには何も残らずに。
加藤の気持ちも分かるけれど、100% は彼を支持できない──という描き方だからこそ、これからの成長に期待できる。
高校生のうちに完成した人格なんて、できるはずがない。とくに『スケダン』は、その未完成さをていねいに描いています。
中馬先生が責任を持つと発言したり、失敗したらクビと言ったり──。シリアスな場面だけれど、ギャグかと思いました。
クビどころか、逮捕されても おかしくないことを、山ほど してきたような……。
第 178 話 「SOLITUDE 3」
「アンタとは 争いたくねえ
」と椿に向かって しおらしく言うキリに、グッと来ました。「何しに来やがった てめぇら!」──じゃないんですよ。すこし前の彼なら、そうやって ほえていたはずです。
「ボクは仲間は 絶対に裏切らない
」と前々回に椿はキリに言いました。その時点でキリは、もう半分くらいは生徒会長に ついていく気持ちだったのでしょう。
だからこそ、わからない !!
という言葉が胸に突き刺さる──。この時の加藤の表情も素晴らしい。
相手を受け入れるためには、相手のことを完全に理解する──必要はないのです。分からなければ、分からないままで迎え入たらいい。
椿佐介が素晴らしいのは、けっして「お前のために」と言わないところです。あくまでも、ボクはお前を 見捨てないと決めた
から、この場所にに来てキリを止めようとしている。
たとえ相手を思っての行動でも、口にする必要はない。
あっさりと轡が学校を去っていたことには、「御都合主義」という言葉が頭に浮かびましたが──、描かれていないだけで、いろいろと裏で動いていたのでは……。
安形の天才的な頭脳とか、デージーの言葉責めとか、ミモリンの財力とか──、「効果的に相手を追い込む手段」に長けた人材が生徒会には そろっています。
──彼らだけは、敵に回したらアカン!
第 179 話 「庶務 加藤希里」
直前の「セルフライナーノーツ」には驚きました。
当初から椿の子分
としてキリを設定した──とのこと。自分はてっきり、今回は「1 話限りのパシリネタ」と思っていたので、最近の連載でも ずっとパシリキャラのキリが、とても不思議でした。
これまでのキリの反発心や、「SOLITUDE」3 部作での暴挙は、椿の忠実な部下として振る舞うための「前置き」だったわけです。
──前フリ、長ッッッ!
あいかわらず男子とは口を利くつもりがない宇佐見羽仁も、普通に歓迎の拍手をしています。だんだんと丸くなっていますね。
そんな宇佐見を溺愛する浅雛菊乃は、妙~に加藤を責めている。展開的に「加藤希里のキャラを浮き彫りにするためのインタビュー」なのは分かりますが、絡み方が妙~~~に生き生きしています。
もしかして: デージーはキリが好き
「加藤め なかなかやる !!
」と彼を認める発言の際に、ほほを赤らめているところがアヤシイ。こんなデージーは、非常にレアです!
また、「キリ」と下の名前で呼ぶことにも、光速で浅雛は同意している。また、消しゴムを拾ってもらった時に、すぐに お礼を言ってます。
浅雛は ひそかに、「宇佐見とキリ──両手に花だな」とか思っているのでは……。
- ベジー■:
- 「薄い本 はやく しろっ!!! 間に合わなく なっても しらんぞーー ーーーーっ!!!」
第 180 話 「SPIRIT DANCE」
この合作(というか二次創作?)はファンの間でも人気だったのか、なんと、アニメでもコラボレーションが決定しました!
「銀魂」と「SKET DANCE」のコラボアニメ放送決定! 9/26、9/29の夕方6時から – はてなブックマークニュース
『銀魂』の銀さんと『スケダン』のスイッチは、同じ声優の杉田智和さんが演じている──というネタが、リアルに再現されますね!
もしかしたら、今回の話を描いている時点で、作者・篠原健太さんはコラボ企画まで計算していたのかも。
本編のほうは声優ネタに終始することなく、『SKET DANCE』・『銀魂』の両キャラをキッチリと生かし切っていましたね。銀さんがいい話始めて まとめに入った !!
銀魂や !!
の流れにツボです
スイッチと新八は、同じように空気と化しながらも、スイッチは ちゃんと仕事をこなしています。新八はただただ、メガネになるだけでした。
両作品とも 3 人でダラダラする話が多い印象でしたが、銀さんからツッコミを入れられるほど、スケット団のほうが地味な絵面
ですね! もうすっかり自分は 慣れましたが、新規の読者が見ると、新鮮に見えるのかも。
削いどる
の元ネタは、もう誰も覚えていないと思う……。
作者のあとがきに身内ネタが出てきました。
──というか、「空知先生は原稿が遅い」という話しか書かれてない! 某・休載が多いマンガほどではないですが、『銀魂』も下描き状態が多いですからね。
篠原先生は、この先ずっと「『銀魂』の空知先生の元・アシスタント」と言われ続けるのでしょうか(このブログに自分も よく書いているけれど)。何だか悲しい気がする。
本人同士は仲が良く、ネタとして師弟関係を楽しんでいる様子だから、あまり第三者が気にしないほうが良いですね。