『SKET DANCE(スケット・ダンス)』 第 11 巻 「会えて嬉しい」
ボッスンの過去を描いた前巻・第 10 巻は、やや暗い印象でした。
今回の第 11 巻は、一転して楽しく笑える話が多いです。よくもまぁ、1 話完結でここまでバリエーション豊かに話を作れるなぁ、と感心してしまいました。
だが、しかーし! ロマンが一コマも出てこないことが、かなり不満です。それだけは、残念でした。
第 91 話 「壊れてしまった特別な…」
またまた「スケット団が部室でダラダラする話」ですよ。部室から一歩も出ずに、しかもゲームをしているだけ──という話で、どうしてこんなにも面白いのか!
冒頭の「ファミリーユンピョウター」──つまりはファミリーコンピューターに似た機械を見て、第一声が「あ、ファミコンやん」ではなく、なんだ コレ?
と言うセリフを聞いて、ジェネレーション・ギャップを感じました……。たしかに、ボタンの形などが微妙に異なりますが──もうファミコン世代はオッサンなのか。
黄(ウォン)老師は、かなりのゲーム・マニアだった(ご存命?)ようですね。どうも、自分でゲームを自作できるほどの人物らしい。「ヒュペリオン」も、老師が自分でコマを作っていたのかもしれません。中国では、かなり有名な方なのでしょう(おもにゲーム好きの間で)。
「SPECIAL MARIKO BROKEN」の内容は、「スーパーマリオブラザーズ」や「ドラゴンクエスト」の初代を知っていると、より楽しめますね。
じつを言うと、モロ世代のクセして、自分はファミコンを持っていなかったので、どこまで似ているのかは詳しくありませんが。ただ、「C ダッシュ」のムカつきは理解できます。うっとうしい操作感ですね。
キング・オブ・クソゲーのスイッチが、イキイキとゲームをしています。しかし、同時にはキーボードを操作できないので、無言でプレイしているのが、なんとなく悲しくてコワい。たぶん、スイッチも「ニコニコ動画」の実況プレイをマネしてみたいのでは?
マリオのパクリゲーかと思いきや、最終的にロムカセットの限界をはるかに超越した神ゲーになるという(ムチャな)展開も見事だし、ボッスンの洞察力と発想力も描き、最後にキッチリと落とす。じつに、このマンガらしい回です。
「コワ・マリ」(略語)の続編も、見てみたい!
第 92 話 「カリスマ生徒イチ押しの部活がハイレベル合コン参加おめでとう」
この回が描かれた理由は、明解ですね。生徒会の面々と作者の心境とは、まったく同じなのでしょう。
つまりは、「佑助と佐介との共同作業」が見たい・描きたい、ということです。読者としても、なんだか気恥ずかしさを感じながらも、二人の仲の良い姿が見てみたいですよね。
仲が良いと言えば、スケット団は 3 人とも仲もノリも良すぎです。スイッチなんて、見た目は「顔芸」に乗ってこなさそうなのに、言われる前にもうやってる
。そして、スイッチが自ら「口をふさぐ」行為の深読みなんか、周りもわざわざ考えたりしません。いいなぁ、こういう仲間がいて。
ボッスンと椿が似ている、というネタの引っ張り方が最高です。デフォルメされた人間の顔を描いて、「似ているけど違う」ことを表現できる、この作者ならではですね。──あの作家さんには、ムリだろう……。
ソワソワしながらも二人を見守る面々が面白い。その気持ちは、よく分かる!
口げんかをしながらも、なんだかんだ言って、つーか いつ家に飯 食いにくんだよ
と誘っているボッスンが微笑ましい。椿も椿で、関係ないだろ今!
と返しながら、「あ──あれ本気だったんだ。帰ったら予定を確認しよう……」と思っているに違いない!
オチの場面では、普段は温厚そうな校長先生の、安形くん ちょっと校長室へ
が良かったです。校長は、怒ったらコワそう……。いつも頼りなさそうな会長も、生徒会のメンバの尻ぬぐいを何度もしているのでしょうね。
椿にパシリ扱いをされそうな場面から始まり、校長に怒られる終わり方という、安形会長にとっては災難な日でした。
第 93 話 「おねえさんもお気に入り?」
レミおねえさんが出てくる回は、毎回エロティックです。レミという人物自体が、何だか妙に女性的なんですね。イマイチ垢抜けないところが、逆にグーなのです!(力説)
それにしても、この作者の場合は、読者ウケを狙ったお色気は描きませんね。絶対に、描くだけの力量はあるのに……。ジャンプの読者層である(はずの)子どもに分かりやすいお色気ではなく、マニアックなエロを繰り出してくる。そのあたりも、師匠ゆずりですね。
たとえば、今回の話を知らない人に、「エロい展開になるよ」と先に教えたとします。エロい目にあうのは当然のようにレミとして、まさか「あんなこと」になるとは読めないでしょう。中馬の「変身」とか。
なんというか──、チュウさんの発明品が失敗して、レミがエロい格好になれば、喜ぶ読者は多そうじゃないですか(あ、それって『走れ大発タント』だ!)。でも、そんなことを単純には描かない。子どもがドン引きするような「汚いオトナの世界」を見せる。
──ときどき、こうやって「少年マンガ」としては、けっこうキワドイ話が出てきます。読者が離れていかないか、余計なお世話を考えてしまいますが、それでも面白い! マンガは面白ければいいんだ!!