バクマン。 #22-3 「邪魔と若さ」 生意気な福田と 15 歳の鬼才

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『バクマン。』 22 ページ 「邪魔と若さ」 (週刊少年ジャンプ 2009 年 09 号)

Rubens dreams (by Ezu) (by Ezu)

オトナになると「何をしても自由だ」ということになっている。ただし、必ず「他人に迷惑をかけなければ」と枕詞が付く。本当だろうか?

多少は人に迷惑をかけても、自分勝手に生きている人のほうが得をしているように見える。

また、人から嫌われたくないと思えば思うほど、逆に嫌われるものである。卑屈さを見逃すほど鈍感な人が相手なら別だが、残念ながら見抜かれることが多い。

つまるところ、素直に生きるのが一番だ。

『バクマン。』には、素直な人物が何人も出てくる。ほとんどは「自分の感情に素直」なキャラたちなので、近くの人間は迷惑するのだが……。

そんな、素直さ爆発の新キャラが登場した。この人物の評価しだいで、今後の展開を楽しめるかが決まる──そんな気がした。

「先生」

エイジが 20 時間も眠り続けると聞いて、ある作家の話を思い出した。「誰でも小説家になれる方法」だ。──ヤフオクに出品したら、そこそこ小遣稼ぎができる話だな、と思いつつ……。

まず、最低でも 3 日間の連休を確保する。次に、安眠ができる環境を整える。近くに簡易食と飲料水も用意しよう。そして──ひたすら 3 日間、寝続けるのである。最低限の食事と水分だけを取り、あとはトイレ以外は眠る。どんなに怠け癖の強い人でも、2 日目にはツラいはずだ。それでも寝る。だんだんと寝ているのか起きているのか、ベッドにいるのかトイレなのかが分からなくなる(オムツが必要かもしれない)。そうして最終日、起きてすぐに机に向かう。夢うつつの状態で、とにかく頭に浮かんだことを書きつづる。

ようするに、「無意識の意識化」である。普段は意識できない自分の奥底にアクセスするのだ。ドラッグや酒に頼る人もいるだろう。

ふつうの人は、ここまで特殊な方法を使って、ようやく無意識に気付ける。天才と呼ばれる人たちの多くは、上のような方法を使わずとも無意識に直結できる。だからこそ天才なのだ。

長時間の睡眠が必要なエイジは、あの天才・L には敵わない。しかし、エイジは成長する。いつしか L に並ぶような天才になるだろう──「イス寝り」の。

──以上のことは、あくまでもシロウトの自分が人から聞いた情報である。そのまま信じないように、注意していただきたい。寝続けた結果、なにか意図せぬモノと直接つながってしまっても、責任は持てないので悪しからず。それに、快適に寝て起きたほうが幸せだったりする。

「安眠」よりも「快適な起床」が大事、というアイデア : 亜細亜ノ蛾

福田くん

さて、急に新キャラクタが登場する。名前は福田真太(ふくだ しんた)という。

こいつが また、エイジと同じくらいクセのあるキャラだ。だれでも彼は第一印象は「嫌な男」(『新世紀エヴァンゲリオン』第弐拾壱話』)に見えるだろう。イケメンで優男のルックスにダマされては いけない(ダマされたがる女子は多いだろうが)。

ここから数ページは、アシスタントの 3 人(サイコー・福田・中井)だけで会話が進む。しかし、描かれていないだけで、エイジはずっと騒ぎながら執筆しているはずだ。実際にその場にいたら、なんともシュールな場面である。

福田に関しては、感想が書きづらい。なぜか。

いつも本編を最後まで読んでから感想を書く。しかし、(ご存じの通り)感想は何回にも分けて小出しにしている。毎回、初めて読んだときの印象を大事にして伝えたい。そのため、感想を書きながらイタコになって「ジャンプを買った当日のオレ」を呼び出している。

最初に福田の語りを聞いたときは、作者がこんなイヤな人物を出してきたことが疑問だった。魅力的なキャラクタを何人も作ってきたのに、あえて嫌われるようなキャラを出すのは なぜだ、と。そりゃサイコーもこんな雰囲気の中で やらなきゃいけないのか……と思いたくもなる。

今週号の後半部分を読むと、福田の評価が一変する。またしても作者にしてやられた。思えば「1 ページ」で、冷めたイヤな子どもとしてサイコーを描いていたのだ。

森博嗣さんが何度も語っているが、創作の世界でも現実でも、第一印象は悪いくらいがいい。少なくとも、会うたびに評価を落とすよりは何倍も良いのだ(それなんてオレ?)。