「ガンマ: 1.0 埋め込み法」 – 理論上は正しく縮小される画像

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カラー・プロファイルが「ガンマ: 1.0」の画像

Sputnik Sequence 2 (Gamma Ray)
(ガンマを埋め込むのは──問題ないのか?)

「ガンマ: 1.0 縮小法」について、前回までの 2 回に渡って紹介してきました。これは、Photoshop と専用リサイズツールを使って美しく(というよりも正しく)画像を縮小して保存する方法です。

  1. Photoshop で【本当に】美しくリサイズする「ガンマ: 1.0 縮小法」 : 亜細亜ノ蛾
  2. Ralpha – リニアな色空間(ガンマ: 1.0)でリサイズできるソフトウエア : 亜細亜ノ蛾

このリサイズ方法を実験している時に、あることに気がつきました。カラー・プロファイルを変換しても、色味には ほとんど変化がない。──いや、それは当たり前ですよね。変換のたびに色味が変わっていたら、話にならない。

それならば──、カラー・プロファイルを「カスタム RGB(ガンマ: 1.0)」のまま保存したらどうなるんだろう? もしかすると、どのブラウザでも正常にリサイズできる画像になるのでは?

「ガンマ: 1.0 埋め込み法」を試してみました。

ディスプレイの調整について

先へ進む前に──。ここからの内容は、ディスプレイのガンマ値が 2.2 に調整されていることが前提になっています。まずは、コンピュータの設定を確認しましょう!

Windows はガンマ: 2.2 の設定がほとんどだけれど、Mac はバージョンによってガンマ: 1.8 になっています。下のページをご確認ください。

Mac OS X v10.6 ガンマ 2.2 について

より厳密にガンマ値を調整・確認する情報は、次のページに書いてあります。

モニターのガンマ調整チャート(sRGB: γ= 2.2): おそまきのブログ

ガンマ値 1.0 の画像を各ブラウザで表示

結論: カラー・マネジメントに対応した Firefox で 100% 表示した場合のみ正常に見られる

一見すると複雑そうですが、2011/02/25 現在の最新・Firefox 3.6.14 をデフォルトの設定で使っていれば、上の条件に当てはまります。

Firefox 3.x の色管理については、下のページをご覧ください。

ふぐり日記2009 – 広色域モニタのカラマネ(ブラウザ編)

画像を準備する

初めにご覧いただくのは、ガンマ: 2.2(sRGB)で保存した「オリジナル」の PNG 画像です。前回の記事で作成しました。この画像をガンマ値 1.0 の状態で保存をしたらどうなるのか?

リサイズ・テスト – オリジナル

次は、このような行程で作成し──

  1. 「オリジナル」を 16bit/ チャンネルに変換
  2. [プロファイル変換] で「カスタム RGB(ガンマ: 1.00)」
  3. [Web用に保存](※後述)

──JPEG と PNG 方式で保存した画像です。

結果を確認

自分の環境で使っている各種のブラウザで、等倍(100%)・縮小(50%)で表示したところ、次のような結果になりました。

ガンマ: 1.0 の画像を各ブラウザで表示
↓ブラウザ・画像→ JPEG 等倍 JPEG 50% PNG 等倍 PNG 50%
各項目の説明
  • 記号の意味:
    • ○: 正常に表示
    • △: 色が濃い
    • ×: 灰色に潰れる
    • ▲: 色の濃いまま縮小
    • □: 色が異常
  • ブラウザのバージョン:
    • Firefox: 3.6.14
    • Google Chrome: 9.0.597.98
    • IE: 5.5, 6, 7, 8 (IETester
Firefox ×
Google Chrome
IE 8
IE 5.5 ~ 7

──つまりは、全滅です。

確認のためスクリーン・ショットも撮りましたので、クリックして原寸大の画像をご確認ください。

ガンマ: 1.0 JPEG - 各ブラウザでの表示

自分の希望していた結果は、100% の表示では Firefox のように、50% に縮小したときには下の画像のように見えることでした。

リサイズ・テスト – Ps で「ガンマ: 1.0 縮小」 | Flickr – Photo Sharing!

色が違って見える理由

Firefox の JPEG・等倍表示だけが正常な色に見えるのは、色の管理に対応しているからでしょう。ほかのブラウザは、すべて未対応でした。

── Google Chrome が色管理に対応していなかったのは、意外ですね……。自分の中で評価が下がりました。

「いやいや、この設定をこうすれば Chrome も対応できるよ!」とか「この拡張機能で──」はナシです。標準の状態で対応していない場合は、多くのユーザへ意図した画像をお見せできません。

100% 表示では問題のなかった Firefox が、縮小すると僧の部分がグレイに潰れてしまう──。これは推測するに、リサイズの際は「sRGB の画像(ガンマ: 2.2)」として扱っているのでは?

Photoshop で PNG の保存

PNG 画像にカラー・プロファイルが埋め込まれていないことに、ここまで書いてきて気がつきました。上の表を見ると、PNG の結果は Firefox も Chrome も同じなのです。

なんと、Photoshop は PNG フォーマットを [Web用に保存] すると、ICC プロファイルを埋め込まない! これは PNG 側の仕様ではありません。Photoshop が悪い。

PNG に ICC プロファイルの適用

Photoshop でも [別名で保存] をすると、PNG 方式でもカラー・プロファイルは適用されます。設定の項目は消えているのに……。

ますます おかしな Photoshop の仕様ですが、こういうモノと覚えておきましょう。次のページもご覧ください。

PNGフォーマットへのICCプロファイル埋め込み: やってMac

さて、PNG にも ICC プロファイルを適用しましたが──、結果は JPEG の場合とほとんど同じでした。Firefox の等倍表示のみ正常に表示されます。

リサイズ・テスト – ガンマ: 1.0 PNG (ICC) | Flickr – Photo Sharing!

ただ、面白いことに、Google Chrome で上の画像を表示すると、「濃い色」ではなく「彩度が低い色」になりました。そして、ヘンな色味のまま縮小される……。IE も同じ傾向でした。これでは意味がない。

おわりに

これだけいろいろと調べて、結論は「使えない」でした。残念だけれど、仕方がありません。

そもそも、カラー・マネジメントに対応していないブラウザが多数なので、安全のためにも画像は sRGB で保存しておくほうが良いのでしょう。そう考えると、今回の「ガンマ: 1.0 埋め込み法」には発展性も抜け道がなさそうですね。

下のページで主張されているように、すべてのコンピュータとモニタが「ガンマ: 1.0」で調整されていれば、こんなに ややこしいことも起こらないはずですが……。それは夢のまた夢です。残念!

おれディスクロージャー – ガンマ補正の話