『26 世紀青年』 (Idiocracy)
隠れた傑作 SF コメディです!
主人公のジョー・バウアーズ(ルーク・ウィルソン)とヒロインのリタ(マーヤ・ルドルフ)が人工冬眠から目覚めた 26 世紀の世界では、「頭にゆとりある人」ばかりになっていた──という内容で、なかなか笑ってばかりもいられません。
法律のことなど何も知らない弁護士のドクター・レクサス(ジャスティン・ロング)やプロレス・チャンピオンの合衆国大統領などが出てきます。国民たちは、リビングでイス代わりのトイレに腰掛けて、スポーツ・ドリンクを水代わりに飲み、下品なテレビ番組を見ている。
お子様に「ユニークな名前」をつけたり、計画なく子どもを作ったりする現在の世界を見ていると、この映画みたいな世界になりそうでこわい……。
(まともな親なら参考にならない)参考: DQNネーム(子供の名前@あー勘違い・子供がカワイソ)
監督は、『ビーバス & バットヘッド』の制作と声優を担当した マイク・ジャッジです。
あのアニメを知っている人なら、『26 世紀青年』は「B&B の実写版」で通じるでしょう。「脳みその容量が足りなさそうな人たち」の描写ならお得意の監督です!
スポーツ・ドリンクでポップコーンを流し込みながら観て欲しい映画でした。そうすれば、明日から仕事や勉強をがんばりたくなるはずです。
好きな場面
自分が世界で 1 番の頭脳だと言われて困惑しているジョーに、リタは話しかける。この場面が素晴らしかった!
- リタ:
- 「アインシュタインは思ってたかな どいつもこいつもバカばっかって」
- ジョー:
- 「そうだな 思ってたかもな」
- リタ:
- 「だから 爆弾考えたわけだ」
- ジョー:
- 「──だな」
爆弾のところで、「違うよ。全然違うよ。アルベルト・アインシュタインは質量とエネルギーの等価性を(以下 10 万字省略)」とムキになって反論したくなった人はいませんか?
映画を観れば分かるけれど、そういう状況ではない。
ベッドに横たわってリラックスしている女性に対して講釈を始めるなんて──、それこそ『26 世紀青年』に出てくる人たち以下の知性です。
未来で流行するファッション
SF というよりはコメディ映画だけに、「ここはおかしい!」と思う場面も多いです。そこはツッコミを入れるだけヤボと言うものですよね。
1 番分かりやすい矛盾は、ジョーくらいのレベルで世界一の優秀な頭脳と呼ばれているのに、タトゥーを読み取るスキャナや快適な生活用品・原子炉──などが存在すること。
誰が作ったり制御したりしているのでしょうか?
矛盾点は置いておいて──。この映画に出てくるファッションは、なかなかセンスが良かった。現代でも日常的によく見る「バナー(広告の画像)」を、すきまなく詰め込んだ模様です。
「センスが良い」と言っても、上品という意味ではありません。生地もテカテカだし。限りなく下品であることが、500 年後の世界をうまく象徴している。
そんなに広告だらけにしても、誰も見ない。そんなことが分からない人に向けたファッションですね。今の世の中でも多そうだよなぁ……。
──ということを表現するために、今回の記事にはバナーをちりばめました。
おわりに
その昔、桃井かおりさんに「世の中、バカが多くて疲れません?」
と言わせたテレビ CM が(計算どおりに)クレームがつき、「世の中、お利口が多くて疲れません?」
とセリフを差し替えた──という話がありました。
テレビ番組・CM の提供者と視聴者との関係を、この話は象徴的に現しています。どういうことかと言うと──、「お利口」が多いと疲れるのは、「どんな人」なのでしょう? 同じお利口さんだったら、疲れませんよね……?
わざとクレームがつくような CM を作るほうも、たかが CM にクレームをつけるほうも、どっちもどっちだなぁ──と思った記憶があります。
ところが現在では、こういう「炎上マーケティング」をよく見る。「計算でやってんだよ」(『さよなら絶望先生』)という場合もあれば、天然ガスに火がついた人もいるけれど。
下の素晴らしい記事のおかげで、こんなに面白い作品を知りました。冒頭でわざわざ「隠れた」なんて頭につけたようにマイナな作品だから、何かきっかけがないと巡りあえなかったでしょうね。感謝!
20世紀フォックスがまたやった!「26世紀青年」って何? – 2008-11-07 – ゾンビ、カンフー、ロックンロール
余談
今回のタイトルも、ゲーテから借りています。
青年は教えられることよりも、刺激されることを欲するものである。
―「詩と真実」―
18 世紀の偉人は、26 世紀の世の中を言い当てていたのですね! いや、21 世紀の現在どころか、マンモスを追いかけていた時代から同じなのかも……。

