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『λに歯がない』 森博嗣 – 死体に歯はない・天才に死はない

『λに歯がない』 森博嗣・著

tooth officer mouth pocket (by mmmcrafts)
(λになくても、歯に──歯がある)

人間のコンテンツって、何ですか?

λに歯がない』 p.109

ギリシャ文字がつきまとう一連の事件を描いた、G シリーズの 5 作目になります。浮遊工作室 (近況報告) によると G シリーズは全 12 作のため、折り返し地点まで、あとすこし。

この『λ』あたりから、ひとつひとつの事件を追うことよりも、その周辺を描くことが多くなってきます。ギリシャ文字の事件たちは、いったい何を目指そうとしているのか……。その背後にいるのは?

本作では、人間の生死について議論する、といった場面が出てきます。過去のシリーズ作品を読んだ人には、感慨深いモノがありますね。そうか、あのコがこんな話をできるようになったのか──、と。

そう、G シリーズとほかのシリーズとをつなぐ結びつきも、じょじょに強くなってきました。過去のシリーズで解決済みと思っていたデキゴトが、考え直す必要が出てきたり──。

もちろん、ミステリィとしても楽しめます。今回は密室での殺人であり、連続殺人事件でもある。トリックの解き方もクールです。

なにしろ、謎を解くのはあの人だから──。

すでに上の文庫版が出ていますが、自分はノベルス版で読みました。だって、出るのが遅いんだもん!

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『εに誓って』 森博嗣 – 生と死の境界にある美しさ

εに誓って

Anaglyph bunny (by gadl) (by gadl)

そもそも人間って、誰だって期限付なのに。

永遠に生きる奴も、永遠につき合う友人も、いないのに。

『εに誓って』 p.188

森博嗣先生のGシリーズ・4 冊目の作品である。

今年中──おそらく数か月以内には、文庫になるはずだ。しかし、いつまでたっても「新刊情報」に登場しない。待てど暮らせど会えない、彼女のようだ。──個人的な話ではなく、この文脈で出てくる彼女とは、あの天才である……。

森博嗣の浮遊工作室

待ちきれないので、講談社ノベルス版で読んだ。──正直、ノベルスと文庫はサイズがあまり変わらないので、どちらでも良い気がする。

さて、ミステリィ作品としての『ε』は、ほとんどワントリックだ。注意深いミステリィ・ファンであれば、途中で真相に気が付くだろう。これほどトリックらしいトリックは、森作品でも珍しい。

しかし、作者がアマノジャクなため、単純な「謎を解いて終わり」という作品には なっていないのだ。犯人よりもトリックよりも、もっと重要な大きな力が後ろに見え隠れする──。

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εに誓って (講談社ノベルス)
森 博嗣
講談社 2006-05-10

by G-Tools , 2009/03/14

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『τになるまで待って』 森博嗣 – 驚きの「犯人はだれ?」

τになるまで待って

Gシリーズの 3 冊目は、いつもの大学院生トリオが洋館へ向かいます。

人里離れた森林に建つ、異様な外観の洋館・伽藍離館(がらりかん)。突然の嵐──そして起こる密室殺人。出口が開かず、警察もすぐには来られない!

──と、イカニモなミステリィ要素がたっぷり。登場人物も怪しげな人たちばかりで、館の主は超能力者(メイドさん 2 人つき)。「τ(たう)になるまで待って」とは──?

こういった部分だけを見ると、「新本格ミステリィ」なのかと思いきや──。そこはそれ、森博嗣の作品ですからね。当然のように、普通のミステリィではありません。

ミステリィ小説ではおなじみの「探偵(役)が事件の真相を語る」シーン。本作でも出てくるのですが──、「犯人はだれだ」を言い当てる際に、ミステリィでは前代未聞(?)の展開が!(森ミステリィではよくあること)

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『θは遊んでくれたよ』 森博嗣 – 事件の背後に感じる力

θは遊んでくれたよ

前作とは雰囲気が一変した、G シリーズの第 2 弾です。

『φは壊れたね』 森博嗣 – ミステリィのリアリティとは : 亜細亜ノ蛾

一人が死亡した密室事件の謎を描いた『φ』(ファイ)に対して、『θ』(シータ)では屋外で複数人が転落死する。。どう見ても自殺だが、死体にはそれぞれ「θ」のマークが書かれている──。

死亡した人たちの共通点は? シータの意味とは? そして、前作のファイトは関係があるのか──?

本作の目玉は、意外な人物の再登場です。いや、犀川創平(さいかわ そうへい)・西之園萌絵(にしのその もえ)・国枝桃子(くにえだ ももこ)、と前シリーズからの登場人物が出ている時点で、ある程度は予測できていたのですが……。

1 作目の『φ』は、正直、物足りなかったのですが、2 作目の『θ』を読むと、ひとつの大きな意志のようなものを感じます。一つ一つの事件は余韻も残さず終わっていくのに、じつはまだ事件の真相を見ていないような……。

普段から「死ぬまでに書いた全部を一作と見て評価してもらえれば良い」(『森博嗣のミステリィ工作室 (講談社文庫)』 p.175)と言っている作者らしい作品の構造ですね。

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『十角館の殺人 新装改訂版』 綾辻行人 – 一行で反転する世界

十角館の殺人

ミステリィ初心者にオススメの一冊です! トリックがじつにミステリィらしく、そして「“たった一行”が世界を変える」ミステリィの醍醐味(だいごみ)が味わえます。

十角館の殺人 – Wikipedia

もちろん、根っからのミステリィファンなら必読ですね。「新本格派ムーブメント」の始まりとされ、しかも 20 年も前の作品なので、読んだ方も多いでしょう。

新本格派ミステリー作家 – Wikipedia

綾辻行人氏のデビュー作である本作は、2007 年の 10 月に新装改訂版が出版されました。一作目ということで、自分が書きたい物をすべて書いた、という勢いが伝わってきます。

綾辻行人 – Wikipedia

昔の海外作品を和訳したような文体と、登場人物のニックネームが大御所ミステリィ作家という遊び心で、古典を読んでいるような楽しさです。

新装改訂版「あの一行」が効果的に配置され、心の底から驚きました。初めて読んだ人は、「──え、なんで !?」と驚くこと請け合いです。

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『φは壊れたね』 森博嗣 – ミステリィのリアリティとは

『φは壊れたね』

G シリーズの一作目、『φは壊れたね』(ファイ──)は、西之園萌絵(にしのその もえ)と大学院生たちが密室殺人の謎に挑むミステリィ。

Gシリーズ (小説) – Wikipedia

自室で宙吊り状態になって死んでいる芸大生。発見された当時、密室状態になっていた。過剰に装飾された部屋や、死体に付けられた羽、そして、おそらく犯行直後から室内を隠し撮っていたビデオとあわせ、まるで芸術作品のよう。犯人の意図は? そしてビデオテープに書かれていたタイトルの意味とは?

ファン(おもにオレ)待望の新シリーズ! 密室での殺人事件! 犀川と萌絵、国枝も登場 !!

──と、宣伝文句を派手に並べられる、いくらでも盛り上がれる要素があるのに、読後はもやもやする……。このもやもやは何だろう……?

それはなにかと尋ねたら? ベンベン♪(このネタ、何割くらいに伝わるんだろう?)

Vシリーズ」のコンセプト、シンプル・シャープ・スパイシィから、スパイシィを外した状態。──つまり、ボリューム感がないのです。ほかの作品と同じくらいの文字数なのに、短編を読んだような感じ。

旧作のキャラが登場するところも、逆に「シリーズ外の短編を読んだ」ように思えてしまう……。

それではこの作品は失敗作? ということはなく、面白かったので、すぐに自作の『θは遊んでくれたよ (講談社文庫 も 28-35)』も買いました。

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『邪魅の雫』 なぜか元気のない榎木津と過去話

『邪魅の雫』(じゃみのしずく)

長らく積ん読(つんどく)っておいた、『邪魅の雫』を読み終わりました。

全 800 ページ以上も あるのに、読み終わった直後「もう終わりか、まだ この世界に居たいなぁ……」と思いました。ラストが切ない終わり方で、しかも結構ばっさりと「了」に なるのです。もうあと一章くらい、たとえば「後日談」が ありそうな感じ。

本作で『京極堂シリーズ』(妖怪シリーズ)も 9 作目。おなじみの面々が登場したり、過去の事件を振り返る場面、意外な人物の再登場が あったりして、旧作ファンが楽しめる内容になっています。

本筋に絡んでくるので書けませんが、榎さん(榎木津 礼二郎)の過去の■が出てきたり──。

いつものように、大筋とは関係の なさそうな登場人物たちの雑談が、あとで事件のヒントに なっていたり、全く関係ないと思われていた事柄が、最後で一つに繋がったり──。いつもながら、凄い。そして、感想が書きにくい(笑)。会話中の雑学なども、うっかり書くとネタバレに繋がったりして。

ミステリィとして読むと、被害者たちの共通項が見つからない連続殺人事件、いわゆるミッシング・リンク物に なります。しかし──ちょっと普通とは違う「事件の繋がり方」をしていて、今までのミステリィ作品と同じように読むと、確実に混乱します(ただでさえ複雑なのに)。

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邪魅の雫 (講談社ノベルス)
京極 夏彦
講談社 2006-09-27
楽天ブックス: 邪魅の雫

百器徒然袋 風 (講談社ノベルス) 前巷説百物語 (怪BOOKS) λに歯がない (講談社ノベルス) 陰摩羅鬼の瑕(おんもらきのきず) (講談社ノベルス) 文庫版 陰摩羅鬼の瑕 (講談社文庫)

by G-Tools , 2008/02/15

(以下、ページ数は「講談社ノベルス」版)

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『情婦』 けっして古びないオチとマレーネ・ディートリッヒ

『情婦』(Witness for the Prosecution)

これは凄い! ラストで かなり驚きました。1957 年の映画ですが、ミステリィ要素は まったく古びていませんね。ミステリィ・ファン、必見の作品です。

原作はアガサ・クリスティの『検察側の証人』で、ビリー・ワイルダー監督らしい、じつにユーモアに あふれた映画に仕上がっています。

まず、病み上がりの老弁護士、ウィルフリッド卿(チャールズ・ロートン)が、ものすごくチャーミングなんです。ご高齢ですが、まるで悪ガキのようで、駄々をこねる姿が可愛らしい。彼を たしなめる付き添い看護婦、ミス・プリムソル(エルザ・ランチェスター)との やり取りが、最高に面白い! この二人の漫才だけで、一本 作品が作れるのでは(残念ながら、彼らの演技は「空の上」でしか見られませんが)。

(ところで、いまの ご時世に「看護婦」という表記は問題ありですが、彼女には「ナース」よりも「付き添い看護婦」とか「看護婦さん」という表記がピッタリなんだよなー。不快に思われた方は、すみません)

殺人の容疑者、レナード・ヴォール(タイロン・パワー)と その妻、クリスチーネ(マレーネ・ディートリッヒ)も じつに魅力的。美男美女というだけではなく、演技も素晴らしい! とくに、レナードは法廷で検察側に追い詰められるシーン、クリスチーネは冷たい表情で証言台に立つシーンが見ものです。

──と、すでに書きすぎた感がありますが、この映画もなるべく前知識なく、とくにラストは絶対に知らない状態で見ましょう! 見終わった人も、「この映画の結末を未見の人に話さないでください」ね。

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情婦 [スタジオ・クラシック・シリーズ]
タイロン・パワー マレーネ・ディートリッヒ チャールズ・ロートン
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2006-12-16
楽天ブックス: スタジオ・クラシック・シリーズ::情婦

十二人の怒れる男 評決 お熱いのがお好き〈特別編〉 [スタジオ・クラシック・シリーズ] アパートの鍵貸します [スタジオ・クラシック・シリーズ] ユージュアル・サスペクツ

by G-Tools , 2007/12/26

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『時計館の殺人』 大がかりなトリックの影に潜む思い

『時計館の殺人』

じつは、綾辻さんの小説は初めて読みました。──という、イマドキのミステリィ・ファンを名乗るのが恥ずかしい、asiamoth です。

『時計館の殺人』は、『館』シリーズの 5 作目です。超が付くほど有名なシリーズで、さすがに名前だけは知っていました。

ref.: 綾辻行人 – Wikipedia

読んでみると、──これは面白い! 古典ミステリィへの愛が ふんだんに感じられる作品ですね。たぶん、元にされたのは海外のミステリィだと思いますが、劇中に時計台が出てくるので、『女王蜂』(石坂 浩二 版)を思わせますね。

本が分厚いところやペダンチック(衒学的)なところ、探偵役が犯人当てをする お馴染みのシーンで饒舌になるところ──などは、京極夏彦さんを彷彿とさせますね(こう言うと失礼か)。初めて『姑獲鳥の夏』を初めて読んだ頃を思い出しました。

ストーリィ

有名な建築家・中村 青司(なかむら せいじ)の設計による、「時計館」。館主と その娘を含め、この館の関係者が何人も死んでいるという──。

出版社に勤める 江南 孝明(かわみなみ たかあき)は、雑誌取材のため、霊能者や大学の超常現象研究会の面々と この館を訪れる。「時計館に少女の亡霊が出る」という噂の、真相解明のためだ。

三日間、館内に閉じこもった一行に、様々な怪奇現象が襲いかかり、やがて死者が出る──。

一方、江南と三年ぶりに再開した 島田 潔(しまだ きよし)も また、時計館に向かっていた。珍しい時計を一目見ることが目的だった彼は、やがて事件に巻き込まれる。

はたして、江南と島田は、無事に この館から出ることができるのか? 殺人犯の正体は? そして、この館が建てられた、本当の目的とは?

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『フロム・ヘル』 切り裂きジャック対シャーロック・ホームズ?

『フロム・ヘル』

... フロム・ヘル ...フロム・ヘル 公式サイト

フロム・ヘル – Wikipedia

Yahoo!映画 – フロム・ヘル

これは、「見て得するホラー・ベストテン」の投票を募集したら、確実にランクインしそうな作品です(ホラーにとって、「見て得する」というのは褒め言葉じゃないけど)。ホラーは恐いからあまり見ない、という人にこそ見て欲しいです。

舞台は、霧煙る 1888 年のロンドン。──と、ここでピンとくる人も多いと思いますが、そう、かの有名な切り裂きジャックが出てきます。といっても主人公は、切り裂きジャックを追う警部で、ジョニー・デップが見事に演じています。

最期の方までジャックの正体は明かされないため、ミステリィ物として見ることもできる、贅沢な作りです。

事前に、切り裂きジャック – Wikipedia を見ておくと、より楽しめるかもしれませんね。

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フロム・ヘル (新生アルティメット・エディション)
ジョニー・デップ ヘザー・グラハム イアン・ホルム
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2007-05-18
楽天ブックス: フロム・ヘル

フェイク エクステンデッド・エディション 妹の恋人〈特別編〉 パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド コレクターズ・セット (初回限定) ナインスゲート デラックス版 耳に残るは君の歌声

by G-Tools , 2007/10/05

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