mystery一覧

『フィッツジェラルドをめざした男』を追うホーギーの憂鬱

『フィッツジェラルドをめざした男』

ホーギーが探偵役(?)として活躍する、デイヴィッド・ハンドラーの人気シリーズです。

元スター作家、現ゴーストライタのホーギーの元に、若き天才作家・ノイエスの伝記を書く依頼が入ります。

愛犬・ルルと共にノイエスに会い、彼に昔の自分の姿を見るホーギー。さっそく執筆のための取材を始めます。しかし、取材中止の脅迫を何者からか受け、ホーギーの元妻・メリリーまで危険にさらされます。

──はたして脅迫者の正体は? その狙いは? 天才作家の過去に何があったのか?

また、ホーギーにいい感じの女性が現れ、メリリーとの仲が危うくなったり、警部補・ヴェリー(出るたびに格好が違う人)が初登場したり、盛りだくさんの内容です。

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フィッツジェラルドをめざした男 (講談社文庫)
デイヴィッド ハンドラー David Handler 河野 万里子
講談社 1992-01
楽天ブックス: フィッツジェラルドをめざした男

殺人小説家 (講談社文庫) ブルー・ブラッド (講談社文庫)

by G-Tools , 2007/09/30

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『13人目の探偵士』 山口雅也氏デビュー作の小説版

『13人目の探偵士』

山口雅也氏といえば、1989年に『生ける屍の死』で作家デビューというのが定説ですが、じつはそれ以前に長編を発表していました。それが、今回紹介する『13人目の探偵士』のゲームブック版です。

ゲームブック – Wikipedia

ゲームブック版の『13人目の探偵士』は 1987 年に発表され、当時中学生の asiamoth 少年は──あんまりよくわからないままクリアした記憶があります。デビュー作だけあって、とにかく凝りに凝った構造のミステリィで、トリックもオチも世界観も入魂の一作だったんですね(厨房には早い、ということ)。

本人によると、このゲームブックがあったからこそ、『生ける屍の死』を書く機会ができたそうです(本書の p.397 を参照)。

以前紹介した、『ミステリーズ』や『マニアックス』とは全然方向性が違い、コミカルな楽しいミステリィでした。

山口 雅也『ミステリーズ』『マニアックス』 : 亜細亜ノ蛾

ゲームブックの要素まで盛り込んでいたり、かなりの意欲作ですよ。さらに、後に続く『キッド・ピストルズ』シリーズの第一作(番外編?)でもあり、ファンなら読んでおくべし! ですね。

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デイヴィッド・ハンドラー 『殺人小説家』

『殺人小説家』

人気のハーフボイルド・ミステリィ(© 森 博嗣)の 8 作目です。デイヴィッド・ハンドラーは『100人の森博嗣』で「この一見ソフトなハーフボイルドこそ、現代のハードボイルドの頂点だと思われる」と書いてあったので、興味を持って読みました。

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殺人小説家
デイヴィッド ハンドラー David Handler 北沢 あかね
講談社 2005-06
楽天ブックス: 殺人小説家
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ブルー・ブラッド 天使と罪の街(下) 天使と罪の街(上) クリスマス・プレゼント コフィン・ダンサー〈上〉

by G-Tools , 2007/06/26

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『四季 冬』 森博嗣・著

『四季 冬』

『四季』四部作の完結編。しかし、いったい、何が終わったんだろう?

『冬』はいつの話なのか、はっきりした描写がありませんが、「S&M シリーズ」や「V シリーズ」よりも後の話であることは間違いなさそうです。そして、四季の「これから」について暗示している場面が多いのです。

彼女は、どこへ向かうのか?

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四季 冬
森 博嗣
講談社 2006-12-15
楽天ブックス: 四季 冬
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四季 秋 四季 夏 四季 春 ダウン・ツ・ヘヴン ZOKU

by G-Tools , 2007/06/20

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『四季 秋』 森博嗣・著

『四季 秋』

真賀田四季の少女期を描いた『春』『夏』。その後に訪れた季節『秋』では、なんと、「S&M シリーズ」や「V シリーズ」よりも後の時代が語られていました。両シリーズのファンが知りたがっていた、「あの後」……。

そして、二つのシリーズ作品のキャラ同士が、意外な競演を見せているのが楽しい作品です。

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四季 秋
森 博嗣
講談社 2006-12-15
楽天ブックス: 四季 秋
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四季 冬 四季 夏 四季 春 ダウン・ツ・ヘヴン 虚空の逆マトリクス(INVERSE OF VOID MATRIX)

by G-Tools , 2007/06/19

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『四季 春』 森博嗣・著

『四季 春』

真賀田 四季(まがた しき)の 5 歳から 13 歳までを描いた作品。

こう書くと、周りの大人がどうやって四季を育てたか、という話と思うかもしれません。しかし実際は、四季がいかに幼い頃から(生まれた瞬間から)特別だったかを思い知らされる一作でした。

放射能に汚染されたクモに噛まれるとか、ネズミと一緒に脳手術を受けたのではなく、四季は文字通り生まれたときから天才だったのです。

四季の間近にいる「僕」の一人称で語られるのですが、それは誰か。森作品を未読の人も、「S&M シリーズ」「V シリーズ」を読破した人も、だまされること請け合い。

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四季 春
森 博嗣
講談社 2006-11-16
楽天ブックス: 四季 春
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四季 夏 四季 冬 四季 秋 ZOKU ダウン・ツ・ヘヴン

by G-Tools , 2007/06/17

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森博嗣氏の「V シリーズ」再読

「V シリーズ」最大のトリック

森博嗣さんの小説、「V シリーズ」と呼ばれる 10 作品を再読しました。いまだに次の「G シリーズ」には手を出していないのですが、やはりもの凄い作品群だな、と思います。

特に、「V シリーズ」全体に隠された「あるトリック」が凄い。これについては『レタス・フライ』で過去作品の疑問に決着 : 亜細亜ノ蛾 で少し触れています。──このトリック、自力で解いた人は、いったい何割いるんだろう?(自分は再読の時にやっと気づいた)

フジモリの脳内ラビリンスというサイトの書評ページで、森博嗣氏の「S&M シリーズ」と「V シリーズ」について語られています。ざっくり探したところ、このページが一番よくまとまっていますね。当然、ネタバレが書いてあります。未読の方は注意。

赤緑黒白 書評

この書評を書いたフジモリさんも凄いですが、なにより、この作品群を書いた森博嗣氏が凄い……。

MORI LOG ACADEMY で発言の揚げ足取りに終始してる人たちの、いったい何割が森作品を読んだ事があるのだろう、と思いました。

──まぁ、「作品と作者は別評価」という事かも。


『富豪刑事』(筒井康隆・著) 刑事はキャデラックで登場

小説版

本のタイトル通り、主人公は大富豪でありながら刑事、という神部大介(かんべだいすけ)です。キャデラックとハバナ(葉巻)がトレードマークという、ちょっと他では見たことが無い、特に日本では類を見ないタイプです。

短篇が 4 編収録されていますが、富豪刑事はこの 4 編で完結しているらしく、続編が書かれることは、今のところ無さそうです。しかし、並の作家ならこれだけで 10 冊くらいは本を出せるほど、魅力的な設定とキャラクタが出てきます。

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富豪刑事
筒井 康隆
新潮社 1983-01

パプリカ 七瀬ふたたび 家族八景 エディプスの恋人 笑うな

by G-Tools , 2007/01/04

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『ロートレック荘事件』(筒井康隆・著)の「おとなり小説」とは

ありがち? いやいや

まず、導入部で書かれている、20 年まえに起こった悲劇が印象的です。子供ふたりがふざけて遊んでいたところ、一人が重傷を負い、一生、下半身が成長しなくなってしまいます。そこで、けがを負わせた子が、一生面倒を見ると誓うのです。

その後、20 年経った夏の終わり、「ロートレック荘」と呼ばれる別荘に訪れます。

ありがちな古い洋館(隠し扉もあるよ)に、ありがちな人々(お金持ちとか)が集い、ありがちに殺人事件(しかも連続)が起こる!(どぎゃーん!) ──などという陳腐な小説を、筒井康隆氏が書くわけもなく。淡々と、しかしじわじわと迫ってくるような文体で読ませます。

そして、やはり予想外の結末が書かれていました。──ミステリィで、「予想外の結末」ほど「想定内」なことはないのですが。

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ロートレック荘事件 新潮文庫
筒井 康隆
新潮社 1995-01

富豪刑事 パプリカ 殺戮にいたる病 星降り山荘の殺人 虚人たち

by G-Tools , 2006/12/15

予想外の結末

もしもこの小説が「はてなダイアリー」に書かれていたなら、「おとなり日記(小説)」には、あの作品とかあの作品とか……作者名を書いただけでもネタバレになりそうな小説が並ぶことでしょう。それくらい、トリックや小説の構造は、ミステリィファンにとってなじみのあるモノです(いやでも、あの作品を知らない人は度肝を抜かれるよなぁ……ぶつぶつ)。

しかし、圧巻なのがラスト。ここでも、ありがちに謎解きが行われるのですが──ちょっと、他では見たことがないくらい「丁寧な答え合わせ」になっています。ここまで徹底されると笑えてくるというか、パロディ小説と見ることすらできそう。

つまり、予想外なのはトリックよりも謎解き部分という、ひねった構造になっています。

そして、最後のほうで息を呑みました。──うーん、やっぱり凄い。何とも悲しい物語ですね。