HUNTER×HUNTER 6 巻 「ヒソカの条件」 2 – 右腕とダンス

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『HUNTER×HUNTER(ハンター×ハンター)』 No.6 「ヒソカの条件」

as red as... 手品のタネは──隠し場所に気をつけよう

第 6 巻の後半は狂気の舞踏会でした。これまでにも あっけなく命を落とす人間が描かれたけれど、そこには恐怖感が ありません。よっぽど主要の人物が亡くならない限り、すぐに忘れてしまいます。

すべてを消し去る死より、狂乱の生のほうが恐ろしい。

過去に怖い話の記事で書いたように、けっきょく「生きている人間が一番怖い・恐い」という結論になります。どんなに工夫をこらした「洒落怖」(しゃれこわ)な話でも、幽霊や悪魔が出てくると──冷めてしまう。

H×H』で恐怖の象徴と言えば、なんといってもヒソカです。ゴンにとって「初めての相手」ですからね……(恐怖の対象として)。

そして、ヒソカを生み出した作者が一番恐ろしい。

No.050 「ゼツ」

今回も司会役の女の子がキュートです! ヘッドホンとマイクが一体になったヘッドセットを付けているから、まるでボーカロイドみたい。

どうも司会者は「念」が見えないようです。よく考えたら、「念」が扱えるだけで仕事に困らないので、実力者は司会者なんて やってられないのでしょうね。

そこで、実力者のウイングと成長途中のズシは、解説役には うってつけです。なんというか、「便利な師弟コンビ」という感じ。


ギドの「舞闘独楽」は死角が見つからないけれど、いつものように「ゴンが機転を利かせて逆転勝利!」という展開になるかと思いきや──、思ってもみないほどの強敵だった。

一方的に やられつつもゴンは、審判に対して容赦なくツッコミを入れている。カウント中に話しかけているのも、じつは時間稼ぎを計算しているに違いない。ゴンは意外と計算高いですからね。

前半の感想でも書いたように、コマの動きが「コマ相撲と 同じ」なのであれば、やはりギドにも当たるはずでは?

ギド
「──痛っ ──痛たっ ゴツゴツ当たるわ!」
ゴン
「ぷっ」
ウイング
「ゴン アウトー」

ギドは「竜巻独楽」のほうが明らかに強い。この状態で自由に動けるように訓練すれば良かったのに、「舞闘独楽」でのポイント稼ぎに頼りすぎましたね。


ギドと 戦うのは 5 年早い」というウイングの分析が正しかったら、「──そして 5 年後」という展開に なるところでした。

あるいは、「この空間では時間の進みが通常の 1,000 分の 1 に──」とかいう御都合主義的アイテムがシレッと登場したりして。それは ないわー。

命がけで 修行を しているゴンに対して、ギドのセリフの二流・三流臭が すごい! 読んだ瞬間に「次回で絶対に ぶっ飛ばされている」と思わされる。

レベルE』を見れば分かるとおり、冨樫先生は大人をも魅了するシナリオが書ける一方で、こういう「少年マンガらしいセリフ」も使います。芸達者だよなー。

ゴンの急成長ぶりを見たヒソカの、「待ちきれない……!」という感情の表現方法も見事です。

いかがわしいセリフを心の中で叫ばせても良いところですが、それだと「欲情が発散」してしまう。あえてセリフ無しで表現することにより、「今はじっとガマンしている」感じが強まっています。

No.051 「点」

ドアをノックするのは誰だ? ──というタイミングで扉絵が入るから、「ヒソカが お見舞いに!?」と引っかかりました(よね?)。来訪者はウイングだから、キルアも そんなに驚く必要ないのに、わざとらしい!

怒りのウイング先生は、シャツが両方とも出てしまっている。5 巻の感想で ほのめかしたように、ますます「劇ヤセしたミルキ」みたい──などと書くと夜道が歩けなくなるので やめます。

HUNTER×HUNTER 5 巻 「ジン・フリークス」 2 – 想像できない夫婦生活 | 亜細亜ノ蛾

ウイングはゴンの身勝手さを「怒っている」のではなく、ゴンの身を案じて「叱っている」。それが分かっているから、キルアも軽くフォローしています。まるで兄弟のようですね(ミルキっぽいから?)。

あと、誓いの糸を小指に結びつけるなんて、ウイングは乙女チックだな──とノンキに思いました。まさか こんなところまで意味が込められているとは──。


スリルを楽しんでる みたいなゴンを回想する場面に注目です!

過去の出来事を思い出す場合は、普通は枠線の外を黒く塗りつぶしたり、枠線を手描きにしたりする。ところが この回想シーンは、前後のコマと差が ありません。それでも昨日の出来事だと ちゃんと分かる。

軽く読み飛ばしそうなくらい自然で「なんでもない場面」であることが、逆に すごいのです。ほかの場面でも、コマやセリフの配置に不自然さがなくて読みやすい。このままでマンガ家の参考書になりそう。


クラピカが再登場しました! なんだか彼の顔は久しぶりに見た気がします。そして感想を書いていて気がついたけれど、妙にレオリオと親しげというくらいしか、クラピカの印象は薄いんですよね。

そしてクラピカは、まだ「念」を習得していない。彼の魅力が引き出されるのは、まだまだ先の話です。──「薄い本」で十分に(いろいろなモノが)引き出されまくっていそうだけれど。

仕事の仲介所にいる女性(?)は、まがまがしくて良い味を出しています。ほんの一場面で消えていくのにチャーミングな人物が この巻には多い。もう一度 出てくる人物は誰か、予想しながら読むと面白いですよ!

No.052 「カストロ」

くいっ くいっ」と体を回しているゴンは、なんとかウォークの先生みたいです。普段が大人びているから、こういう子どもっぽい動きの場面が新鮮でした。同じ年齢の子たちは、ゲームで遊んでいたりするのにな……。

キルアが仕入れてきたヒソカの情報は、これまでに見てきた奇術師の強さからすれば当然と言えます。ただ疑問が 1 つ残りました。

いつからヒソカは天空闘技場にいるのだろう?

休みがちの死神にしては試合回数が多すぎます。200 階クラスで 11 試合も戦っている。

ゴンとキルアは、ノンストップで このクラスまで突き進んできました。彼らよりも私用船で 先回りした(p.55)からといって、ヒソカは数日分しか時間は稼げないはずです。

また、p.148 のインタビューからすると、どうもヒソカは 2 年前にも闘技場で戦っていたと思われる。

以上を総合すると、何年か前からヒソカは闘技場で戦いながら、途中で抜けてハンター試験に参加していたのでしょう。そこまでしてヒソカがハンター証を欲しがった理由は謎です。

もしかしたらハンター試験の直前に、こんな電話があったのかもしれない──。

イルミ
「もしもしー ヒソヒソおひさー! オレ ハンターなるわー」
ヒソカ
「ちょw おまw オレも誘えしwwwww」

カストロは、その戦歴と名前からして「どんな ゴリラかと 思いきや」な人物です。実際には、クラピカのファンもグラグラと心がゆらぐような美形キャラでした。金髪率が高い!

──余談だけれど、「ゴリラ」の意味を本気で分かっていない人が連載の当時に居て、こっちが真剣に悩みました。学校で教えないとマンガも読めない人が、今後も増えていくのでしょうかね……。

「ワンピース」でさえ、“セリフが多くて”読めない…漫画を読めない子供が増加


目を離していないのに一瞬にして背後に回られた! ──あのマンガそのマンガでは日常の出来事です。見るたびにゲンナリする。

キルアとズシのように、そうとうの実力差がないと、神経を研ぎ澄ました戦士の裏を取るなんて不可能です。普通に考えれば、敵に後ろを取られたら瞬殺される。

ところがカストロの場合は、ちゃんとトリックがあります。たんなる「すごいから、すごいんだ」で終わっていない。創作の世界には絵と話の説得力が何よりも必要ですよ! →各作家

カストロは外見だけではなく、性格も さわやかです。ただ、ヒソカのことは本気で敵対視しているのに、キルアのことは期待している。将来のライバルになりそうなのに。これは もしかして──、

ヒソカもカストロも「同じ趣味」なのかな……。

No.053 「ダブル」

いよいよ狂気の回です! 見ての通り絵が荒れているけれど、連載時は もっと下描きに近かった。それだけに、ヒソカのイカレっぷりとと緊張感が誌面から伝わってきます。

この回が載った「ジャンプ」は長らく保存していましたが、数年前の引っ越しで紛失してしまいました……。惜しいことをしたもんだ。

扉絵のヒソカは、ホワイト(修正液)の使い方にセンスを感じます。もちろん絵柄も素晴らしい。ただたんに「雑だ」という理由で流し読みする人には、個別包装された食べ物しか口にしないような損する潔癖さを感じる。


ヒソカのピンチに衝撃を受けました! 彼が顔面に何度も攻撃を食らうなんて、今までに見たことも想像したこともない。

かなりの強敵であるカストロは、「虎咬拳」(ここうけん)なる拳法を駆使しています。調べてみると、やはり架空の技らしい。「念能力」や「ハンター文字」・「魔獣」など架空の設定ばかりなのに、不思議と現実味があります。

カストロの分身・「ダブル」を見た司会者は、「まさか 双子 だったとかーーーー !?」と間抜けな解説をしていて──とても可愛いらしい!(女性差別主義)

また、「名づけて虎咬真拳 !!(キリリィッ」と格好つけているカストロ先輩に「そのままの ネーミングだーー !!」などと解説ガールはツッコんでいる。おまえら、結婚しろよ! というくらい息の合ったコンビ芸です。


ちぎられた自分の腕をかじるヒソカは、狂気の沙汰としか言いようがない。少年誌の限界に挑んでいるかのようです。

幽☆遊☆白書』の「仙水編」以降や、『レベルE』の精神世界みたいに、また冨樫先生が くr ──クレイジィってしまう! ──とドキドキワクワクしながら読みました。

No.054 「敗因」

トランプの数字を当てる手品は古典的だけれど、ヒソカのように腕の中にカードを隠すなんて、宴会芸では気軽に使えませんね(そういう問題!?)。

ヒソカは強いだけに、いままで攻撃をあまり受けたことがないと思う。それにしては、腕や顔の痛みを感じていないようにも見えます。「念」で痛覚もコントロールできるのでしょうか?


とうとう両腕を失ったヒソカは、痛々しくてショッキングです。『ジョジョの奇妙な冒険』でも よく腕が飛んでいたけれど、なんらかの回復手段が用意されていた。この時点ではヒソカの能力が明かされていないから、「意外と回復系?」と思ったりして。

こんな僧侶が居るパーティはイヤだなぁ……。

──それはそうと、ヒソカが右腕を切り落とされたあたりから、審判が まったくカウントを取っていません。仕事しろよ! 「もうそんなレベルじゃないと思います」ということなのかな(?)。

ドラゴンボールのアックマイト光線についての考察~もしくは富樫先生がドラゴンボールを描かれたら – tyokorataの日記


この巻でヒソカが再登場した当初は、スマートでハンサムな印象でした。そのまま耽美(たんび)な世界で生きるのかと思いきや──。「キミは 踊り狂って 死ぬ」と予知した際の、悪魔のような表情が彼の本性です。

ヒソカは こうでなくっちゃ!

ゴンやキルアが表情を大きく変えない分だけ、作者はヒソカで「顔芸」をたっぷり楽しんでいそうですね。


自分のドッペルゲンガーを見ると死期が近い──という言い伝えがある。自分自身でダブルを自在に出せるカストロにも当てはまったことは、悲しすぎる皮肉です。鏡の前を横切った黒猫が不幸になる──みたいな感じ。

ドッペルゲンガー – Wikipedia

カストロとダブルを見分ける方法は、じつにシンプルでした。ところが戦闘中に見抜くことは、かなり戦い慣れていないとムリです。ヒソカは、どんな修羅場をかいくぐってきたのだろう──。

突然どこからともなく飛んできたヒソカの左腕やトランプには、単純で効果的なワナが仕掛けられている。この回で そのトリックを見抜けた人は、はたして何人いるだろう? 自分は まったく分かりませんでした。

カストロの「虎咬真拳」も、攻撃を防ぐには相当の熟練を要します。しかしそれ以上に、ヒソカの「念」はタネが分かっていても対処しきれない。彼の性格が よく出ているイヤらしさです。

容量(メモリ)のムダ使い」は、じつは完全に正しい知識ではありません。ずっと先のストーリィでは、ヒソカの常識を打ち破る念能力者が現われる。そのころには彼の認識も変わっているでしょう。

そう、ヒソカですら まだ進化の途中なのです。