『ソウ』 (SAW)
もう、何も言うことがない最高の映画です!
大ざっぱに言えばジャンルは「ホラー映画」になりますが、ハラハラドキドキのサスペンス要素あり、犯人を捜すミステリィ的な楽しみもあり、親子愛・家族愛を確かめ合う場面もある。ちょっぴりセクシィなシーンもあるよ!
どのみち、「家族がみんな集まるひととき」に観るような、のどかな作品ではありませんが……。
「謎解き要素のあるホラー・スリラ映画」は以前から存在したのでしょうが、『SAW』以降はより加速した──、と私のゴーストがささやいています(?)。これからも確実に、『SAW』を意識した作品が作られ続けるでしょう。
それくらい、影響力・存在感の大きな作品です。
映画の大半は「老朽化したバスルームの中」だし、屋内の場面ばかりが出てくる。でも、その閉じられた感じが心地よい。最後の場面に向かって一直線に駆け抜けていく快感があります。
また、「劇場で観たからもういいよ」という人も、DVD・ブルーレイは必見ですよ! アダム・フォルクナー役であり脚本を書いたリー・ワネルと、監督のジェームズ・ワンが解説をするオーディオ・コメンタリィ(音声による解説)が楽しい! 2 人の悪ふざけが面白すぎる。
ここから、この最高傑作について語っていきます。
謎を解く面白さ
ラストシーンが印象に強く残るため、「あのトリックだけのワン・アイデア映画」と言われることが多いですが──、それは顔面にふし穴が 2 つ空いている人の評価でしょう。
「ジグソウ・キラー」の事件を振り返っていくごとに、「ちょっと変わった雑用係さん」や「熱心な刑事」がだんだんと怪しく思えてくる。さらには、被害者(被験者)であるはずのローレンス・ゴードン(ケイリー・エルウィス)やアダムも、単純に「善人」とは言えないと分かる。
ほぼ全員が、後ろ暗い過去を持っているのです。
だから後半までは、ゴードンの妻や子どもをに危害を加えた「犯人」は誰か、ジグソウとは何者か──、簡単には分からないようになっている。誰もが疑わしい。小出しに「犯人」の顔を見せていく手口が、じつに見事です!
アマンダ・ラヴ!
1 作目の見どころは「全部」ですが、中でもアマンダ(ショウニー・スミス)のゲームが良かった!
何と言っても、『SAW』シリーズの中で一番印象的な装置──ヘッドギアのデザインが素晴らしい! このヘッドギアをかぶったアマンダの、なんと美しいことか……!
ぐるぐるとカメラを回す見せ方も効果的です。まだゲームは始まっていないのに、恐怖感をガンガンあおる。一緒に観に行った(当時の)カノジョは、アマンダが回り始めてから、ずっと顔を伏せていました……。
ただ、どう考えても、あのゲームの制限時間が 60 秒間では、明らかに短すぎますけどね! アマンダは時を止められる──のかもしれない。
音声解説によると、リー・ワネルはショウニー・スミスのファンらしく、アマンダ役には彼女を熱望したそうです。現場にショウニーが来た時には、リーも嬉しかったでしょうね。残念ながら、役柄の上で絡みはなかったけれど(本作では……)。
そしてなんと、あのアマンダが警察署で取り調べを受ける場面とゲームのシーンは、両方とも 1 日で撮影したとのこと。それだけ撮影の時間がなかったのですね。
そのため、笑えることに──、アマンダが「カギを取り出す」場面で映っている腕は、リー・ワネルが吹き替えているのです! これは気がつかなかった! よく見ると、たしかにアマンダにしてはゴツゴツした手だ……。
ついでに言うと、シンが「ワナにかかった場面」もフィルムが足りずに、リーが演じています。こうやって低予算・短期間でツギハギだらけの作りといい、それを面白おかしく話すリーとジェイムズといい、大学の映画研究会みたいノリですね。
アマンダと言えば、とあるポスタをずっと探しています。そのポスタは、『SAW』のパンフレットに小さい画像が載っているのみで、インターネットでもなかなか見つからない。自分が唯一見つけ出したのは、下のページ・最下部の画像です。
──どうですか? イイでしょう! 『SAW』のイメージに似つかわしくないような、「セクシィすぎる」アマンダがグーです!! 撮影(というか着替え)の時間はなかっただろうし、おそらくボディ(ゴクリ……)はショウニーではないのでしょうね。
「ゲームオーバー」
これまたコメンタリィによると、ゴードンの家族を襲った「犯人」の体をアダムが探るところからラストまでは、たったの 2 カットらしいです。つまり、1 度しかカメラを止めていない。かなりの長回しです。
あの「真相」が明かされた瞬間は、本当に脳がついていけませんでした。いままで観てきた世界を完全に否定された感じ。
リー・ワネル自身も、あのラストシーンの演技は「二度とできない」と言っていました。ゴードン役のケイリー・エルウィスも素晴らしい!
そう、すべてがパーフェクトな終わり方でした。
蛇足
今回も、タイトルのアイデアをゲーテの言葉(この日、ここにおいて世界史の新しい時代が始まる
)から借りています。いつもこの引用のせいで時間がかなりかかるため、ほとんど罰ゲーム状態ですけれど……。
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ – Wikiquote
『SAW』は「自分の中の映画史」を塗り替えました。でも、実際の映画史ではどうでしょうか? まだ「『SAW』以降の時代」に生まれた決定的な作品は、ないように思います。それはこれからだ──と信じて、楽しみに待っていましょう。