タイタニック – 豪華客船を沈めたのは──本当は誰?

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『タイタニック』(Titanic)

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(「空を飛んでいる」のは──二度目だったりする)

あまりにも有名すぎる映画です。すくなくとも、映画好きを自称する人ならば、観ていないと おかしい。でも、自分は最近になってようやく手を出しました。

観てみると、やはり面白かったですね。さすが、興行収入の記録でギネスブックに載っただけのことはあります。しかも、『タイタニック』の記録を塗り替えたのは、同じジェームズ・キャメロン監督なのがすごい。

参考: タイタニック (1997年の映画) – Wikipedia

さて、この映画は、あらゆる角度から語り尽くされている。いまさら「ここが良かったね」を書いても面白くない。そこで、アマノジャクな自分の目から見た感想を書いてみました。

今回の大きなテーマは、下記の 2 点です:

  1. 『タイタニック』の致命的な欠点とは?
  2. だれがタイタニック号を沈めたのか?

致命的な長さ

まず、誰もが感じる本作品の欠点は、「上映時間が長すぎること」でしょう。うっかりとデートで観る映画に選んでしまうと、後半で たれぱんだになってくる(当時 流行していた)。

そもそもこの映画は、「どうだい、こんなにゴージャスでデカい船を、自由に作ったり沈めたりできるなんて、スゲェだろ?」──という監督のドヤ顔から成り立っています(断言)。実際に、映像の 8 割は船が主役になっている。

しかし──、残りの 2 割のほうが素晴らしかった。そう、観客が観たかったのは、ラブ・ロマンスです。この部分が、取って付けたようなモノではなく、ちゃんとした脚本と演出で輝いていました。

だから、観客のほとんどは、前半の 1 時間半で満足してしまう。まだ折り返し地点なのに……。そしてそこからは、ずっと映像的にも内容的にも、暗い暗い話が続くのです。

映画の DVD・ブルーレイで「ディレクターズ・カット」版というと、未公開映像を追加して長くなる傾向にありますが、『タイタニック』に関しては「90 分版」を出したらウケると思うなぁ。

同じ監督の『アバター』だったら、何時間でも「この世界にいたい!」と感じました。この差はなんだろう? そこに希望があるか・ないかの違いでしょうかね。

このサイトの記事: 映画・『アバター』 現実の続き・夢の終わり・そして現実への帰り方 : 亜細亜ノ蛾

おてんばプリンセス

もう一つの欠点は、ヒロイン役です。

ヒロインであるローズ・デウィット・ブケイターは、ケイト・ウィンスレットが演じました。彼女の演技自体は素晴らしい! 「実力派女優」という呼び名に負けない演技です。

とくに、酒場での彼女はイキイキとしていました。

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そのお酒の場でのはしゃぎっぷりが、あまりにも「板についていた」のです。このような場所に初めて来た──とは思えない。普段から安酒をあおっていないと、あれだけハジケられないはず。

「お嬢様育ちなのに、オテンバなところもある」という人物として、ローズは描かれています。いわゆる「庶民派」ですね。ディズニーやハリウッド映画のプリンセスたちと似ている。

ただ、どうもローズは庶民的すぎるのです。悩ましいことに、それこそがローズの魅力で──たとえば彼女を『プラダを着た悪魔』のアン・ハサウェイが演じてしまうと、今度は おしとやかすぎる。たぶん、台なしになるでしょう。

当サイトの記事: プラダを着た悪魔 – 生活のために仕事をして、愛のために努力する : 亜細亜ノ蛾

『タイタニック』は、「シンデレラ・ストーリィ」のなのです。シンデレラ役ならアン・ハサウェイや ジュリア・ロバーツが似合うけれど、ローズはケイト・ウィンスレットがピッタリだったのでしょう。

もしかしてプリンス

レオナルド・ディカプリオも最高でしたね! 主人公のジャック・ドーソンを演じています。彼を目当てにこの映画を観る──という見方が正解でしょう。ラストを除けば……。

彼の整った顔は、「ボロは着てても容姿は錦」という感じです。まさに「レオ様」「王子様」と呼びたくなる。

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──そう、ジャックをお金持ちの王子様にするべきだったと思います。そしてイナカ育ちのローズがプリンスに恋をする。──そのほうが しっくり来ます。

誰が沈めたタイタニック?

科学的な見地や史実は置いておいて、『タイタニック』という映画の中で「タイタニックが沈没した原因」は何か?

──もちろん、それは「氷山に接触したから」です。意外なことに、ほんのすこし「かすった」程度なんですよね。あと数十秒──いや数秒でも早く舵を切っていれば、助かったように見えます。

そこが問題です

「あること」が原因で、氷山に気がつくタイミングを船員たちは一瞬のがしました。それは何かというと──ローズとジャックがいちゃついている場面です。

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「いやいや、そんなことはこじつけで、あの船の速度では どうあっても氷山に衝突していた」という意見もあるでしょう。しかし、観客の目から見て、「氷山にぶつかったのはローズたちが原因だと思えた」ことが問題なのです。

──あんな場所でイチャイチャする意味は ないしね。

良いとこなしの婚約者

ローズのフィアンセであるキャルドン・ホックリー(ビリー・ゼイン)は、不思議な男でした。彼はローズに執着するのだけれど、その理由が見えないのです。

ここでも役柄のチグハグさを感じました。ホックリーのほうが「元は名家だが落ちぶれつつある家の出身」で、必死になって「富豪のお嬢様」を落とそうとしている──のなら分かります。実際の立場は逆なんですよね。

最後まで観ても、彼はローズのどこにホレていたのかが分からない。彼の前でローズが目の色を変えたのは、宝石を見た時だけなのに。

まぁ、ひとを好きになるって、そういうことか……。

彼は悲惨な人生の終え方をする。その原因をたどっていくと、「ホープダイヤモンドをなくしたこと」が挙げられます。45.50カラットのブルー・ダイヤモンドが手元にあれば、生活に困った時には手放せました。

では、その宝石はどこへ行ったのかというと──。

調査団も沈む

『タイタニック』の冒頭で驚いたのは、(1997 年当時の)最新の設備を搭載した調査船が出てくること。てっきり、タイタニック号が健在の時代から始まるかと思っていました。見事な演出です。

調査団がいたおかげで、現代のローズは「ジャックとの思い出」に再開できた。もう一度「あのころ」の夢を見られたのです。──ちなみに、このシーンでスケッチを描いているのはキャメロン監督だったりする(!)。

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もともと調査団が探していたのは、まさに上記のダイアモンド・「碧洋のハート」でした。シロウト画家が描いたスケッチなんかじゃない。一方、ローズにとってはその絵こそが重要で、ダイアモンドなんて見飽きているでしょう。

そこで、ローズが取った行動はというと──、

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えー!? と驚くばかりです。意味が分かりません。

たぶん、ジャックとの思い出を永遠にするために、ローズは宝石を海にかえした──のだと思います。

ところが──、ジャックは宝石に思い入れはない。むしろ、そんなモノのせいで発砲されたのだから、イヤな思いしかないはず。供養にすらなっていません。

このローズの行動によって、おそらく調査団の何人かは路頭に迷うことになるでしょう。またしても、「ローズのせいで不幸になった」のです。

──もうお分かりですね? 誰がタイタニック号を──いろんな人の人生を──沈めたのか。ミステリィ・ファンとしては、この言葉で締めくくりたいと思います。


「あなたが犯人だったのですね。──ローズさん」

余談: 飛ぶための予行演習

この記事の一番上の写真(「空を飛んでいるわ」)は、言うまでもない名場面です。今でこそギャグのようにマネされているし、誰でも思いつけるような構図と言われている。

でも、なかなかできない発想だと思います。脚本の段階で、完全に頭の中でタイタニック号を描いていないと、この構図は出てこない。

ジャックも、ローズの前で急に思いついたわけではありません。じつは、(後半では空気になる)男友だちと ふざけている序盤に「飛んでいる」のです! 初めて観た時にはビックリしましたね。

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そうそう、「数字で呼び合う巨大掲示板」のせいで、『タイタニック』と言えば「エンダアアアアアアアアアアアアイアアアアアアアアアア♪」とすり込まれていました。そうしたら最後までこの歌が流れません。これにも驚きました。

「節子……それタイタニックやない、ボディガードや」

YouTube – I Will Always Love You- Whitney Houston (the bodyguard)

ということで、男同士で飛んでいる場面を見て「エンダアッー!」と頭に浮かんだ自分は、二重に恥ずかしい。

おわりに

ここから先は、キャメロン監督の『ターミネーター』・『アバター』を観た人だけ読んで欲しいのですが──、『タイタニック』を含めたこの 3 作品は、どれも同じような話の構造になっています。

──すなわち、「主人公の男は未来への種子を残して去り、強いヒロインが生き残る」。よっぽど監督が好きな話なのでしょうね。『アバター』は、ちょっと変則だけれど。