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『SKET DANCE(スケット・ダンス)』 第 32 巻 感想・2

SKET DANCEスケット・ダンス)』 第 32 巻 「ラストダンス」


旅立ちの日に──未知の世界へ飛び立つ

いよいよ最後の感想です。──いまのところは。
自分が感想を書いている作品は、どれも思い入れが深い。そのなかでも『SKET DANCE』は、第一話を読んだ時から「これは すごい!」と感じました。とても新人が描いたとは思えない。
そのまま最後まで好きな作品で いてくれて、本当に ありがたかった。作中の言葉を借りると、「この作品を 誇りに思う」と言いたい。
作者に感謝します! ありがとう!

第 284 話 「ラストダンス 5」

吉備津 百香の姿に驚きました。
現役アイドル声優が、サングラスなどで変装せずに来ている……だと……!? ちょっと友だちとパフェでも食べに行くような気軽さで歩いていますが、熱狂的なファン(←重複)とか大丈夫なのかな。マネージャもいないし。

出迎えるボッスンも、よく知った間柄とはいえ、まるでカレシのような気軽さが【意味深】でした。やっぱり、あの河原で……。
──って、今ごろ気がついた! いままでモモカは、ヒメコには尊敬する態度・スイッチには親密に話しかけていましたが、「ボス男」はバカにするか無視していましたよね! それが いきなり藤崎にカレシ(未満)の相談をする──。これこそボッスンに対して心(とか いろいろ)を開いた証拠ですよ! やっぱり……(疑惑の目)。


なにげに役得な小田倉 拓夫です。
『ベリタブル・ベジタブル』のクリアを途中で あきらめた人は、それ以降の登場人物に会えません。しかし、「オタボチャ」には必ず面会する。
なにより、「デークイーン」ことデージー・浅雛 菊乃に しているなんて うらやましい! 出番が ここだけしかないのに、異様なクオリティのドレスです。

もしかして、小田倉とデージーは趣味が合うのでは?
見方を変えれば 2 人とも「カワイイ物が好き」とも言える。自分の趣味に対して全力を尽くし、まわりに隠すこともしない。しばしば現実世界の女子(おもに宇佐見)に かわいらしさを押しつけるところも似ている。
劇の練習で何度か会話をする機会があっただろうし、意外と親しくなっているかもしれませんね!


ウォーク・ラリーとしても劇としても完成度が高い!
まず、学校全体を使うために用意した大道具・小道具の量が尋常では ありません。とくに衣装はオリジナルで作るしかなく、制作者は本当に才能と努力を要求されたはずです。
さらには、高橋 知秋丹生 美森矢場沢 萌伊達 聖士早乙女 浪漫島田 貴子──と各人物の性格を生かしつつ世界観と合った配役も素晴らしい!
──ロマンだけは世界観 ガン無視だけれど。


椿 佐助大賢人も良かった。
ほぼ素のままの演技ながら、「突然訪ねてきた者に 聖剣を託せようものか」と当然のことを言っています。

これは作者が「ここがおかしい RPG」ネタとして盛り込みたかったんじゃないかな。よくあるゲームでは、他人の家にあるタンスをあさったり、弱者を襲うような追いはぎに近い「勇者」に、王様は大事な頼み事をします。
自分が遊んでいる『バイオショック・インフィニット』では、ビーチでデート中の男女の すぐ近くで、オレ(主人公)が「ゴミ箱」の中から拾った「リンゴ」を食べて「LIFE を回復」したりして、「オレ、何やってんだろ……」とか思った。


結城 澪呼が重要な役で個人的に うれしい!
一時期はスイッチと くっつくと思われた(自分が勝手に思っていた)澪呼と、ほとんどカノジョなモモカとの直接対決! ──の とばっちりを受けたユウキくん、みたいな構図です!
澪呼は信念を持った良い人・良い女性だから、いつかスイッチのような(ひねくれた)理解者が現われるでしょう。


これだけ手の込んだ舞台と演出なのに、トップの賞品が「銀紙製のメダル」という落差が笑えます。制作費が尽きたのかな。
そんなことよりも、見ているだけで伝わってくる冒険の楽しさ──つまりは今日一日の経験が宝物です。モモカが泣くほど感激する気持ちが分かりますね。

──でも、それでは気持ちよく終われなかった。
「友貴を楽しませて しゃべらせる」計画は失敗です。ボッスンはユウキの秘密を知っているから、みんなの前で打ち明けるよりも、なんとかイベントの楽しさだけでユウキにしゃべって欲しかったでしょうね。
連載中は「最初から秘密を明かせば良かったのでは?」なんて考えた自分は、まったく他人の気持ちが分かっていない。

第 285 話 「ラストダンス 6」

自分はテレビを見なくなって 10 年ほど経ちます。
おそらく今でも「おネエ」と呼ばれるタレントを毎日のように見るでしょう。彼ら(彼女ら?)が いなくなったら、芸能界(ゲイ能界)も さみしくなる。
そして これも(調べもせずに)想像で書くけれど、ユウキのように「心は男 でも性別は 女性」というタレントは、けっして目立っていない。

最近は「性同一性障害に理解ある社会」に なりつつある──などと言われていますが、まだまだ「(肉体的に)男性が中心の社会」は変わらない。
「社会に女性が進出」なんて言い方から分かるように、「社会に出る」とは「男性のように振る舞う」という意味が込められている。そもそも「社会」という言葉自体が、「男性ビジネスマンの集団」のように理解されていることも間違いです。


この作品のテーマの一つが、「変わらない」ことだと思っていました。
つい最近までヒメコは「鬼姫」時代と同じように暴力をふるっていたし、スイッチは いまだに口でしゃべらない。ほかにも問題を抱えたままの生徒が何人もいます。
でも、それを「個性」だと片付けて終わらせない。

乗り越える事は 変わることじゃ なくていい」と言われて、ずんぶん気が楽になる人も多いはずです。「出る杭は打たれる」が色濃い学校生活では なおさら強く感じる。
その人が 今いる位置を 認めて 愛しいと 思えるように 背中を 押す事」は、なかなかオトナでもできません。いや、オトナになるほど「他人との違い」を認められなくなる。

みんな笑顔でいるぜ」と胸を張って言えるような環境を整えていくことが肝心ですね。自分の手の届く範囲からでも良いから、ゆっくりと確実に。
そのためには、藤崎 佑助が言うように困っている人の理解者になる事から始めたい。

第 286 話 「キミ達を」

キミ達を 誇りに思う
──こんな言葉は、一生 言う機会のない人が大半です。自分も言ったことが ありません。 正直に言えば、ものすごく違和感のある場面です。
しかし、それだけに初めて見た時からずっと心に残っている。これが「2 人に感謝する」とか「今まで ありがとう」という ありきたりな言葉だったら、すぐに忘れたかもと思う。

作者の後書き・「セルフ ライナー ノーツ」に よると、この言葉はスッと頭に浮かんだものだったそうです。なるほど、考えに考えて出てくるセリフではないでしょう。
まさに「笛吹 和義の口から出てきた言葉」という感じがします!

コミックス派の人は、表紙で一足先に「笑う笛吹」を見てしまっている。これは単行本だけを追っている者の宿命ですね!
例: 『DEATH NOTE (2)』の表紙で L の顔


鼻水を垂らしながら大泣きして抱き合う 3 人。
──いいなぁ! まさに青春!
しょっぱくて みっともないけれど、誰も立ち入れない聖域が できている。ずっと助け合ってきた 3 人ならではの温かい空間でした。


ラストの場面が、なんだかオトナな ふんいきです。
「オレたち別れよう」とでも言っているような重々しさがある。ヒメコからしたら、これからも一緒だし、半分は「付き合っている」感覚だっただろうから、かなり衝撃的だったでしょう。
──とか書きながら、連載の当時は「たんなる勉強をイヤがる子ども」に見えました。

第 287 話 「卒業」

ここで まさかのライアンですよ!
ガチムチでイケメンなライアンのことを話す時に、ボッスンが赤面(意味深)していることも見逃さへんでェ! 「そっちの道が 頭から離れられなくて…」(意味深)なんて そのままじゃないですかー!(なにが?)


けなげな鬼塚 一愛が泣けてきます!
寂しいけど 止める理由が あらへん」って、彼女にしては すごく素直に伝えましたね。今までだったら、もっと悪態をついて、あとで後悔していたはず。ちょっぴり成長しています。


校長たちの演出は感動しました!
卒業式で先生たちの言葉なんて、ウザいだけで何も心に残らない。──そう思っている自分でも、こんな不意打ちを食らわされたら、さすがに一生の思い出です。

旅立ちの日に』は、自分には なじみがありません。
調べてみると、今では『仰げば尊し』よりも親しまれているんですね! 知らなかった! 『贈る言葉』なんて海援隊だもんなー(失礼)。


ボッスンとスイッチ──いや、藤崎と笛吹が屋上で話す場面も良かった。
オレは ガキすぎる」なんて言っている藤崎は、もうすでにオトナの顔をしています。旅立ちの時を迎えた今では、すでに少年時代を卒業している。
笛吹は逆に、髪が伸びて「スイッチ」に なる前に近づいています。彼は当時からオトナだった。──大人すぎたことが悲劇を生んだのかも……。

最終話 「SKET DANCE」

人は一人では生きていけない。
──その事実を受け入れられずに、孤独の中で苦しんでいる人が大勢います。そんな人たちには、力強い「助けてもらえば いい!!!」という叫びが心に染みるでしょう。
誰もが窓を割って 入って来たヤツに巡り会えるわけではないけれど、勇気を出して助けを求めることが大事です。
そう、勇気がいる──。

笛吹は、自分からカラを破って歩き出しました。
その結果、「この学校で一番 友だちに恵まれたのは オレだ!!」と自分の口で断言できるまでになった。彼自身、引きこもっていた時代には想像できなかったはずです。
学生時代の数年間は、それほど劇的に変化する。少なくともその可能性が あります。オトナになってからでも、遅くはないでしょう。
自分から変わりたい人は、今日からでも何かを始めると良いですね(鏡を見ながら)。


「変わらない」がテーマだった『スケダン』のなかで、最初に大きく変わった人物が吉備津でした。彼女が「鬼姫に あこがれた不良」だったことや、彼女の仲間(犬・キジ・猿)を覚えているでしょうか?
吉備津と笛吹──「変わった者」同士で そろって歩いていく。これからも 2 人には変化が起こるでしょう。引きこもりや不良だった昔を思い出して、一緒に笑い合う日は近そうです。
(モモカの元仲間や澪呼が「私を捨てたな!」と襲いかかってくる話──は、ないと良いな……)


空港での鬼塚が最高に かわいかった!
ようやく言えた「好きや」「早よ 帰って 来て…」が純粋すぎて まぶしい!

その鬼塚の気持ちをぶちこわす藤崎には大笑いです!
最初に「知ってるよ!!! オレも好きだ!!!!」と返した時には、同級生たちと同様にヒメコの恋心に気づいていた──と言う意味かと思った。それだけに、オチがガッカリですねー。


さて、ここで藤崎が挙げた好きな人物に注目です!
スケット団のメンバの名前は当然として、なぜか高橋キャプテンも「好きだ!」と発言している。たしかに なにかとスケット団の活動と関わりの多い彼女ですが、なんだか【意味深】ですぞ……!
鬼塚と読者の知らないところで、藤崎と高橋には【なにか】が あったのでは!?


このブログでは、「ボッスンとヒメコは結ばれないのでは?」と何度も書いてきました。ある意味では当たりましたね。
今後は分からないけれど──、藤崎の性格からして、旅先で出会った女性と結婚しそうな気もする。助けた相手に感謝されすぎて、そのまま──という状況が「ボッスンあるある」な感じです。

そもそも まさかの「ライアン END」を作り出した張本人は、八木 薫(の思いつき)でした。
彼女とボッスンは、ほぼ一日中 密着(意味深)して休日を過ごす──という いわば「デート」も経験済みです。しかも、ライアンの邪魔(?)が入らなければ、同じ屋根の下で一夜を明かす予定だった!
さらには、ボッスンが女性を意識するような描写は、八木ちゃんが初めてです。
ここまで材料が出そろえば──もう お分かりですね!

正解は、「ロマンが空間(とページ)をぶち破って王子に会いに来る」でしたー!
──いや、本当に それくらいの根性を早乙女には見せて欲しかったな……。いちおうは文化祭の時も「王子」と呼んでいたけれど、まったく 2 人の絡みは ありませんでしたね。初登場から浪漫が好きだっただけに、ちょっと残念です!
彼女には、ステキな人と巡り会って欲しい!

おわりに

第一話から最終話まで、ずっと おもしろかった!
もう最初から「なにか違うな」と思わせるストーリィ展開だったし、みるみる上達する絵も安定感がある。人気が出て当然と思いながら応援していました。

半分くらいは「スケット団の 3 人が部室で雑談する」展開のようでいて、ありとあらゆる話を描いています。だから、ほかのマンガとかぶってしまうことも多く、「新人つぶし」だと感じました。
「ジャンプ」の読切で「不良娘がアイドルを目指す」話があったけれど、モロにモモカとカブっているせいか、連載まで行かなかったっけ……(読み切りの時点で編集者が指摘するべき)。

(2013-08-05 01:53 追記)
──てなことを書いていたら、『ひめドル!!』の連載が始まりました! 作者さん・編集者さん、すみません!
やっぱり、自分の好きな話を書くことが一番ですよねー(台無し)。そもそも『スケダン』は『銀魂』と 3 人組がカブっているし(くせ毛のリーダ・メガネ・紅一点)。


できれば もっと続けて欲しかったけれど、「スケット団・世界編」みたいな「インフレ・バトルもの」に ならなくて良かったかな。
いまは、作者・篠原 健太氏の次回作を心待ちにしています。どんな作品になるだろう?
楽しみにしつつ、『SKET DANCE』を最初から読み直します!

asiamoth: