森博嗣一覧

『εに誓って』 森博嗣 – 生と死の境界にある美しさ

εに誓って

Anaglyph bunny (by gadl) (by gadl)

そもそも人間って、誰だって期限付なのに。

永遠に生きる奴も、永遠につき合う友人も、いないのに。

『εに誓って』 p.188

森博嗣先生のGシリーズ・4 冊目の作品である。

今年中──おそらく数か月以内には、文庫になるはずだ。しかし、いつまでたっても「新刊情報」に登場しない。待てど暮らせど会えない、彼女のようだ。──個人的な話ではなく、この文脈で出てくる彼女とは、あの天才である……。

森博嗣の浮遊工作室

待ちきれないので、講談社ノベルス版で読んだ。──正直、ノベルスと文庫はサイズがあまり変わらないので、どちらでも良い気がする。

さて、ミステリィ作品としての『ε』は、ほとんどワントリックだ。注意深いミステリィ・ファンであれば、途中で真相に気が付くだろう。これほどトリックらしいトリックは、森作品でも珍しい。

しかし、作者がアマノジャクなため、単純な「謎を解いて終わり」という作品には なっていないのだ。犯人よりもトリックよりも、もっと重要な大きな力が後ろに見え隠れする──。

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εに誓って (講談社ノベルス)
森 博嗣
講談社 2006-05-10

by G-Tools , 2009/03/14

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細かすぎて伝わらない(こともない)本の組版(レイアウト)の話

本の組版に執着する人たち

今回は、本の組版(文字のレイアウト)の話である。本のデザインといえば装丁(カバーなどの外側)に凝った話ばかりが取り上げられるが、中身のほうが大事だ。人間と同じで(説教臭いなぁ)。

帆掛さんの気になる話

このブログだけではなく、「はてなブックマーク」でも「帆掛さん・ラヴ」と言い続けてきた、私こと asiamoth だが──。

じつは、このたび帆掛さんと結婚することになりまs

──ではなくて。

じつは、帆掛さんに共感したことほとんどない。オカルトもホラーも「たしなむ」程度で、クトゥルーはガキのころに読んだトラウマ(「かん字がむずかしくて読めない」)で、それ以降は触れていない。「BOOK ON」で大量に本を買うほど本が好きでもない。

まぁ、好きな対象と趣味が同じではないとイヤ(非モテ思考の始まり)だ、という訳ではないけれど……。少し、さみしい気もする。

そう思っていたら、ようやく帆掛さんに共感できる部分があった!

奇遇 – 2008-09-18 – coco’s bloblog – Horror & SF

何ともマニアックな本の組版の話を、帆掛さんと富士見さんがしている。「最後の行」も「句読点の並び」も、両方ともすごく分かる!

思わず 2 人の会話に「あるある www」と割り込んで、思いっきり不審な顔で帆掛様に軽蔑されたい……。末代まで祟られたい……(オレの代で終わりそうだけど)。

ref.: 栗山千明さんの 2ch スレ(千明様ネタ)が面白い : 亜細亜ノ蛾

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『τになるまで待って』 森博嗣 – 驚きの「犯人はだれ?」

τになるまで待って

Gシリーズの 3 冊目は、いつもの大学院生トリオが洋館へ向かいます。

人里離れた森林に建つ、異様な外観の洋館・伽藍離館(がらりかん)。突然の嵐──そして起こる密室殺人。出口が開かず、警察もすぐには来られない!

──と、イカニモなミステリィ要素がたっぷり。登場人物も怪しげな人たちばかりで、館の主は超能力者(メイドさん 2 人つき)。「τ(たう)になるまで待って」とは──?

こういった部分だけを見ると、「新本格ミステリィ」なのかと思いきや──。そこはそれ、森博嗣の作品ですからね。当然のように、普通のミステリィではありません。

ミステリィ小説ではおなじみの「探偵(役)が事件の真相を語る」シーン。本作でも出てくるのですが──、「犯人はだれだ」を言い当てる際に、ミステリィでは前代未聞(?)の展開が!(森ミステリィではよくあること)

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『θは遊んでくれたよ』 森博嗣 – 事件の背後に感じる力

θは遊んでくれたよ

前作とは雰囲気が一変した、G シリーズの第 2 弾です。

『φは壊れたね』 森博嗣 – ミステリィのリアリティとは : 亜細亜ノ蛾

一人が死亡した密室事件の謎を描いた『φ』(ファイ)に対して、『θ』(シータ)では屋外で複数人が転落死する。。どう見ても自殺だが、死体にはそれぞれ「θ」のマークが書かれている──。

死亡した人たちの共通点は? シータの意味とは? そして、前作のファイトは関係があるのか──?

本作の目玉は、意外な人物の再登場です。いや、犀川創平(さいかわ そうへい)・西之園萌絵(にしのその もえ)・国枝桃子(くにえだ ももこ)、と前シリーズからの登場人物が出ている時点で、ある程度は予測できていたのですが……。

1 作目の『φ』は、正直、物足りなかったのですが、2 作目の『θ』を読むと、ひとつの大きな意志のようなものを感じます。一つ一つの事件は余韻も残さず終わっていくのに、じつはまだ事件の真相を見ていないような……。

普段から「死ぬまでに書いた全部を一作と見て評価してもらえれば良い」(『森博嗣のミステリィ工作室 (講談社文庫)』 p.175)と言っている作者らしい作品の構造ですね。

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『スカイ・クロラ』の名脇役、土岐野尚史・三ツ矢碧・フーコ

スカイ・クロラ

監督・押井守、原作・森博嗣のアニメーション映画『スカイ・クロラ』の感想も、今回で 3 回目です。

前回に引き続き、登場人物の感想を書きます。

『スカイ・クロラ』の主人公、草薙水素と函南優一 : 亜細亜ノ蛾

主人公が魅力的で、視聴者をぐいぐいと引っ張っていく──という(ジャンプマンガのような)作品ではないので、脇役たちの存在感が大きいです。とくに、今回紹介するキャラクタは、スピンオフ作品が作られてもおかしくないくらい。

押井守監督最新作 映画「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」公式サイト

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スカイ・クロラ [DVD]
菊地凛子, 加瀬 亮, 谷原章介, 栗山千明, 押井 守
VAP,INC(VAP)(D) 2009-02-25

GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊2.0 [DVD] オリジナル・サウンドトラック 「SOUND of The Sky Crawlers」 スカイ・クロラ コレクターズ・エディション (生産限定) [Blu-ray] 押井守ワークス+スカイ・クロラ The Sky Crawlers (別冊宝島 1546 カルチャー&スポーツ) 押井守監督作品スカイ・クロラ総設定資料

by G-Tools , 2009/01/29

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『スカイ・クロラ』の主人公、草薙水素と函南優一

『スカイ・クロラ』

前回に続き、映画『スカイ・クロラ』の感想を書きます。

『スカイ・クロラ』 劇場で森博嗣作品を見る至福 : 亜細亜ノ蛾

登場人物に焦点を当てて紹介しますが、長くなったので、今回は主人公の二人だけ……。

なるべくネタバレは書きませんが、そうすると、映画を見る前にここを読む人がいるのか、少し疑問ですが。

映画の空気が少しでも伝われば幸いです。できれば、いまのうちに劇場で味わってください。

また、映画を見た人が、「このブログの管理人はこんな感想を持ったのか」と思い、ブログ記事を書くきっかけになってくれたら、さらにうれしいです。

──というかさー、プロの評論家(や評論家気取りのシロウト)が、

「押井守(と周辺のアニメ監督)を語る」

みたいな「考察記事」ばっかりで、面白くないんだよねー(急に馴れ馴れしく)。森博嗣は知らなかったり。

もっと「キャラ萌え」や「設定萌え」、「スイトがあの夜、どんな表情と■位で■ッ■■したのか悶々と考察」とか、面白可笑しく書いた「感想」が読みたい。読ませてください!

ということで、各キャラクタの感想です。

押井守監督最新作 映画「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」公式サイト

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by G-Tools , 2009/01/29

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『スカイ・クロラ』 劇場で森博嗣作品を見る至福

『スカイ・クロラ』

「原作 森博嗣」

この文字を劇場で見られるなんて、思いもよらなかった! ──わけはなく、『すべてがFになる』のころから待っていましたとも !!

さらに、「監督 押井守」と来た日には、それこそ「飼い犬を質に入れてでも」見に行くべき(意味不明だし、お二人とも犬好きだからあり得ない行動)。

自分はなるべく前知識を入れず、もちろんパンフレット(表紙の紙が上質!)も鑑賞後に購入、原作も読まずに見てきました。

うっかりここにやってきた人も、できれば素の気持ちで見に行って欲しいですね。

仲の良い友人や恋人と、あるいは 1 人でも、楽しくも重苦しい 2 時間を過ごせます。──ただ、間違っても「家族総出」とか「クラスメイト 10 人と」とか、「今日こそゲットしようともくろむ同僚の○○さんを連れて」という状況で見る映画ではない──、と思います。

純粋なミステリィ作品ではないですが、ミステリアスな世界観と登場人物たちの素性が、後半で霧を晴らすように明らかになっていくところは、まさに「森作品であり押井作品」と感じました。

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by G-Tools , 2009/01/29

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『φは壊れたね』 森博嗣 – ミステリィのリアリティとは

『φは壊れたね』

G シリーズの一作目、『φは壊れたね』(ファイ──)は、西之園萌絵(にしのその もえ)と大学院生たちが密室殺人の謎に挑むミステリィ。

Gシリーズ (小説) – Wikipedia

自室で宙吊り状態になって死んでいる芸大生。発見された当時、密室状態になっていた。過剰に装飾された部屋や、死体に付けられた羽、そして、おそらく犯行直後から室内を隠し撮っていたビデオとあわせ、まるで芸術作品のよう。犯人の意図は? そしてビデオテープに書かれていたタイトルの意味とは?

ファン(おもにオレ)待望の新シリーズ! 密室での殺人事件! 犀川と萌絵、国枝も登場 !!

──と、宣伝文句を派手に並べられる、いくらでも盛り上がれる要素があるのに、読後はもやもやする……。このもやもやは何だろう……?

それはなにかと尋ねたら? ベンベン♪(このネタ、何割くらいに伝わるんだろう?)

Vシリーズ」のコンセプト、シンプル・シャープ・スパイシィから、スパイシィを外した状態。──つまり、ボリューム感がないのです。ほかの作品と同じくらいの文字数なのに、短編を読んだような感じ。

旧作のキャラが登場するところも、逆に「シリーズ外の短編を読んだ」ように思えてしまう……。

それではこの作品は失敗作? ということはなく、面白かったので、すぐに自作の『θは遊んでくれたよ (講談社文庫 も 28-35)』も買いました。

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森博嗣先生の「集中しない」小説の書き方をブログに応用

森博嗣さんの仕事術

森博嗣さんが、ご自身のブログ「MORI LOG ACADEMY」で仕事の進め方について書かれています。

title="MORI LOG ACADEMY: 人を信頼していない">

僕は小説の執筆は、たいてい連続してできるのは10分程度で、その仕事場から離れて、すぐにほかのことを始める。(……)人から見たら、本当に落ち着きのない人間に見えるだろう。念のために書いておくけれど、ほかの作業をしている間に、小説のことは一切考えない。これはどんな作業も同じ。そうでなければ、切り換える意味がない。

MORI LOG ACADEMY: 人を信頼していない

同じことが、数日前にも書いてありました。

title="MORI LOG ACADEMY: 集中したくない">

僕は、沢山のことを少しずつ進める。まえにも書いたと思う。20種類のことを毎日20分ずつそれぞれ進めたい。そういう時間配分をしている。(……)1日で終わる仕事量を、2週間くらいかけてのんびり進めるようにしている。その方が僕には合っているし、丁寧な仕事ができるからだ。本当のことをいうと、この方法でなんとかこの社会のペースに合わせて生きてきた。

MORI LOG ACADEMY: 集中したくない

森博嗣ファンやモリログ読者にはおなじみの話題ですが、こうしてまとめて書いてあると紹介しやすくて、助かります。

(余談だけど、モリログの閲覧しにくさ、過去ログの探しにくさは何とかならないのかなぁ……。アーカイブから個別ページへ飛べない、とか。ここを見て「森先生が使っているから Movable Type をがんばってインストールしました!」という読者っているのか、同じ MT 使いとしては心配)

この、森先生の仕事術をブログ書きにも応用できないか、考えてみました。

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『臨機応答・変問自在 2』読者 vs. 森博嗣

『臨機応答・変問自在 2』

森博嗣さんの『臨機応答・変問自在 2』を読みました。『~ 2』、ということは前作があるわけで、そちらも面白く読みました。──が、感想を書くのを忘れていた、という……。

前作は、大学で助教授時代の森先生が、学生に提出させた質問からの抜粋でした。「学生なので、こういう質問も仕方ないかー」という微笑ましい物も多かったです。

ただ、前作では質問者が現役の学生(一番、頭を使っている年代)という事もあって、雑学的な知識を得られる問答も あったのですが、本作は苦笑するような一問一答が多いです。

本作の質問者は、様々な年齢の読者です。「──その年齢で、その質問は いかがなものか?」「まぁ、公■員のオッサンだったら仕方ないかー(自主規制)」「まぁ、30 代の OL なら(ry」という物もあり、微笑ましい──というより、かすかに背筋がゾッとします。

──まぁ、より純粋に「読んで楽しむ」事だけに特化した内容になった、ということですね。とくに、モヒカン族な方が、優越感を味わうために読む、というのが良いかも知れません(イライラするだけだったりして)。

モヒカン族 (ネット用語) – Wikipedia

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臨機応答・変問自在〈2〉 (集英社新書)
森 博嗣
集英社 2002-09

臨機応答・変問自在―森助教授VS理系大学生 (集英社新書) 大学の話をしましょうか―最高学府のデバイスとポテンシャル (中公新書ラクレ) 君の夢 僕の思考―You will dream while I think (PHP文庫) 100人の森博嗣 (ダ・ヴィンチ・ブックス) 毎日は笑わない工学博士たち―I Say Essay Everyday (幻冬舎文庫)

by G-Tools , 2008/04/06

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