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『家族八景』 家政婦はテレパス

『家族八景』

「七瀬三部作」と呼ばれる三作品の一作目です。自分は、何も知らずに『エディプスの恋人』から先に読んでしまいましたが……。

七瀬は今も『エディプスの恋人』なのか── : 亜細亜ノ蛾

しかし、文体といい雰囲気といい、まったく両者は異なります。──そもそも、筒井康隆作品って、どの作品も似ていないのが凄いですよね。

『家族八景』は、筒井康隆版の『家政婦は見た!』みたいな話(違う)。主人公の火田七瀬(ひだ ななせ)が八軒の家庭に住み込み家政婦として働きに行くのですが、

「家政婦はテレパス(他人の心を読む能力者)」

というワン・アイデアを思いついただけで凄い。

──いや、いまならいくらでも類似作品を見付けることができますが、この作品が初めて刊行されたのは昭和 47 年ですからね。

八つの家庭は、それぞれ「一見普通」。しかし、そこにテレパスの七瀬が入り込むことによって、図らずも微妙にゆがんだ人間模様が浮かび上がる。次第に壊れていく「普通の(幸せな)家庭」──。

初めのほうでは、七瀬は「十八歳の女の子」なのに、あんまり積極的に口説きに来る男がいない──つまり、「それなりのルックス」でした。しかし、段々と女性らしい容姿になっていく七瀬が、身の危険を感じるようになったり、自分から積極的に家庭を壊そうと目論んだり、最後までドキドキしながら読みました。

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家族八景
筒井 康隆
新潮社 1975-02
楽天ブックス: 家族八景改版

七瀬ふたたび エディプスの恋人 パプリカ (新潮文庫) 笑うな 時をかける少女 〈新装版〉 (角川文庫)

by G-Tools , 2007/09/26

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『13人目の探偵士』 山口雅也氏デビュー作の小説版

『13人目の探偵士』

山口雅也氏といえば、1989年に『生ける屍の死』で作家デビューというのが定説ですが、じつはそれ以前に長編を発表していました。それが、今回紹介する『13人目の探偵士』のゲームブック版です。

ゲームブック – Wikipedia

ゲームブック版の『13人目の探偵士』は 1987 年に発表され、当時中学生の asiamoth 少年は──あんまりよくわからないままクリアした記憶があります。デビュー作だけあって、とにかく凝りに凝った構造のミステリィで、トリックもオチも世界観も入魂の一作だったんですね(厨房には早い、ということ)。

本人によると、このゲームブックがあったからこそ、『生ける屍の死』を書く機会ができたそうです(本書の p.397 を参照)。

以前紹介した、『ミステリーズ』や『マニアックス』とは全然方向性が違い、コミカルな楽しいミステリィでした。

山口 雅也『ミステリーズ』『マニアックス』 : 亜細亜ノ蛾

ゲームブックの要素まで盛り込んでいたり、かなりの意欲作ですよ。さらに、後に続く『キッド・ピストルズ』シリーズの第一作(番外編?)でもあり、ファンなら読んでおくべし! ですね。

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正規表現の勉強法、エディタ、パズル、本

正規表現ネタ

いつものように livedoor Reader でネットの海(この場合は生け簀か?)をざぶざぶ潜っていると、正規表現ネタがかぶったので紹介します。

正規表現の勉強法

ウノウラボ Unoh Labs: 正規表現の勉強法

正規表現を勉強する方法は何がいいか、という問いの答えがWikiなどのパーサを書くこと、とのこと。

──え!? と思いましたが、少し考えてみると納得しました。Wiki 記法のクローンを作ろうとなると、様々な知識とテクニックが必要になりますからね。

いまやるなら、まだ誰もパーサを作っていない(?)、WikiCreole を各言語で移植するのが良さそう(というか、Markdown あたりからコードをパクって MT プラグインとして移植を考えたことがあったり)。

WikiCreole: Creole 1.0 (和訳)

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『今日の早川さん』が家にある幸せ(23 ページを見よ!)

『今日の早川さん』

やっっっと、『今日の早川さん』がウチにやってきました!(Amazon は好きだけど、こういう大事な本を予約するのはやめようかな……)

家に『今日の早川さん』がある、というのは、それだけで幸せです。

改めて、『今日の早川さん』を、そして帆掛さんを生み出してくれた、著者の coco さんに感謝します!

そして── 23 ページの帆掛さんを見て、100 回死にました(みんなも見れ)。というか、ちょっと ////

──あなたが神か。

Horror & SF - coco's bloblogHorror & SF – coco’s bloblog

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今日の早川さん
coco
早川書房 2007-09-07
楽天ブックス: 今日の早川さん

by G-Tools , 2007/09/09

帆掛さんのアレ

衝撃の帆掛さんを見て、脳が思考停止しているので見落としがあるかもしれませんが──。

くまなく全ページをチェックしましたが、帆掛さんの「アレ」が載っていない!

アレとは──まずは「右目」。

帆掛さんの右目と言えば、見た者は寿命が十年縮むとか、強制的に帆掛さんファンクラブに入会させられるとか、見ると三日間は帆掛さんの本名(名の方)を忘れてしまうとか、様々な噂がまことしやかに語られたり、はないですが、とにかくレア。

それに、あのアリスの衣装がないじゃないか! 某「適当なブロガ」の人生を狂わせた──もとい、正しい道に修正させた、あのアリス服が!

帆掛さんに釣られる日々 : 亜細亜ノ蛾

これは──「にわかファンには見せてあげない」という、昔からのファンに対する coco さんの配慮だろうか(違うと思う)。

──いや、わかった! これは──『今日の早川さん 2』で載るに違いない…… !!

衝撃の書き下ろし

巻末に書き下ろしマンガがあるのですが、これがまた衝撃的な内容──。いったい、何がどうなって、こうなったのか(詳しく書けない!)──。その心境は、今後 Web 上で語られるのか否か──。

しかし、もしも答えがあるとするならば、

「愛ってことさ」

しかないのでしょう──(というか、○○するのに他に理由があるだろうか)。



『インターネット的』 ネットの面白さは外の世界にもある

『インターネット的』

糸井重里さんの考え方をインストールしよう、と思いながら『インターネット的』を読みました。

前に紹介した、『ほぼ日刊イトイ新聞』の姉妹書のような一冊です。

『ほぼ日刊イトイ新聞の本』 ネット社会の必読書 : 亜細亜ノ蛾

本書はタイトル通り、インターネット的とはなにか? がテーマになっています。

インターネット自体よりも、それがもたらす”インターネット的であること”に、より可能性を感じています。

『インターネット的』 p.10

──そう語る糸井さんは、インターネットの特徴を「リンク」「シェア」「フラット」と定義しています。

そして、それらインターネット的なものは、むしろ「インターネットの外」にあるのではないか、──と。

2001 年に発行された本ですが、いま読んでもためになる一冊です。

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インターネット的 (PHP新書)
糸井 重里
PHP研究所 2001-07-14
楽天ブックス: インターネット的

ほぼ日刊イトイ新聞の本 (講談社文庫) 安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方 (中公新書) 悪人正機 (新潮文庫) ほぼ日刊イトイ新聞の謎。 (ほぼ日ブックス #) 経験を盗め

by G-Tools , 2007/08/25

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『世にも美しい日本語入門』 恋愛の前に日本語を学ぶ

『世にも美しい日本語入門』

『世にも美しい日本語入門』は、『世にも美しい数学入門 』の続編というか、姉妹書のような一冊です。

藤原正彦(ふじわらまさひこ)さんが、彼の小学校時代の恩師である安野光雅(あんのみつまさ)と対談し、日本語の美しさについて語っています。

数学者と画家が日本語について語る、ということが少し意外な気もします。しかし、二人が惹かれる「美」というものの根底には文学がある、とのこと。

冒頭から、

美しい日本語に触れないと、美しく繊細な情緒が育たない。恋愛さえままならない。文学に一切触れず、「好き」と「大好き」くらいの語彙しかない人間は、ケダモノの恋しかできそうもない。

『世にも美しい日本語入門』 p.11

──と、ドッキリするような事が書いてあります。厳しさを感じるのですが、そこにあるのはただ、美しさへの誘いだけ。逆に読めば、文学に触れて繊細な情緒を育て、豊かな恋愛を楽しみましょう、と。

それにはやはり、古典や古語、文語体に触れるのが良いそうです。この本で紹介されている古典、たとえば森鴎外の『即興詩人』を読みたくなりました。

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『残像に口紅を』 消えていく、おもいで

『残像に口紅を』

これは凄まじい一冊です。筒井康隆氏の、あまりにも有名な作品なのでご存じの方も多いと思いますが、

「現代人なら言語や記号にさえ感情移入できるようでなければならない」(p.16)

という主張の元に書かれた、「言語そのもの」に感情移入させる小説です。

全 66 章で、1 章ごとに世界から「音(おん)」が1音ずつ消えていく。それと同時に、その音が含まれた対象も存在が消える。小説の中で使える文字も段々と減っていくので、最後のほうは(いつものように)ドタバタとしていきます。

たとえば、第 1 章で「あ」が消えているので、自分(asiamoth)は真っ先に消えているわけです(笑) 「あんパン」や「蟻」、「アイスコーヒー」も当然消えているでしょう。

それでは「あなた」や「愛」はどうなるのか。その疑問は本書の 2 章で説明されているので、そちらをどうぞ。

主人公の佐治勝夫(さじかつお)氏は小説家で、明らかに筒井康隆氏本人です。彼の生い立ちを語る場面は必見ですよ。Wikipedia にも出てこない、生々しい父母の話です。

筒井康隆 – Wikipedia

とにかく、このことを思いつき、一冊の小説として書き上げた、というだけで素晴らしい!

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『ZOKU』 正義と悪戯、それより恋愛?

『ZOKU』

「正義と悪」というのはありがちな、作家にとっては書きやすい構図です。

しかし、最近の風潮では「悪になったのには事情がある」とか「絶対的な正義、完全な悪などいない」という方向で、リアリティを出している作品が増えていますよね。(だからこそ今週の『ネウロ』は面白かったなー、というのはまた別の話)

さて、森博嗣氏が「正義と悪」という、ありがチックなテーマにどう挑むのか、というと、なんと、

「正義と悪戯(いたずら)」

という、何とも笑える状況を創り出してしまいました。

『ZOKU』は森作品の中でも、ライトノベルに近い、かなり読みやすい一冊です。「森ミステリィからミステリィを引いた感じ」でしょうか(答えは森、という意味ではない)。

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『レキシントンの幽霊』 強く余韻を残す 8 つの不思議な話

『レキシントンの幽霊』

『レキシントンの幽霊』は、村上春樹氏の短編小説集です。

そういえば彼の短編を読むのは久しぶり(糸井重里氏との共著『夢で会いましょう』くらい)だな、と思って調べると、なんと、長編より短編の方が多いくらいでビックリ。──ああ、よかった。これからも村上作品がこんなにも読めるのか!

村上春樹 – Wikipedia

不思議な話が 8 作品収録されています。短編というと、オチに向かって一直線に進んでいく作品が多いですが、本作品集では、はっきりとした終わり方をしていない作品が多いです。

それに、小説向きではないというか、なんでもない話があったりします。

しかし、なんでもない話のはずなのに読ませる、読み終わった後になかなか気持ちの切り替えができない、そんな魔力を持った作品集でした。

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