アン・ハサウェイ一覧

『ダークナイト ライジング』のテーマは「希望と絶望」! 両者は表裏一体

ダークナイト ライジング』 (The Dark Knight Rises)

Batman Dinosaur in Pittsburgh - Dino Bat 次のヒーローは──彼かもしれない

希望と絶望」がテーマの映画でした!

こうやって 2 つのキーワードを並べると、前作・『ダークナイト』の感想で書いた「二者択一」の物語に思えますよね? ところが、どちらかと言えば両者の「二面性」を強く感じます。

『ダークナイト』 2 つのテーマ、二者択一と二面性 | 亜細亜ノ蛾


第 3 作目も やはりクリストファー・ノーランが監督しました。原案や脚本・制作総指揮まで関わっていて、「ノーラン節」がスミズミまで行き届いています!

バットマン」ことブルース・ウェインも、前作までと同様にクリスチャン・ベールが熱演しました。そう、前作以上の「熱を感じる演技」に注目しましょう!

今回の敵である「ベイン」は、頭部の半分近くをマスクで覆いながらトム・ハーディが演じています。ムキムキの肉体──よりも彼が心に負った痛み(ペイン)に引かれました。

──主役・敵役も そうですが、執事のアルフレッド・ペニーワースマイケル・ケイン)や、ジェームズ・ゴードンゲイリー・オールドマン)警部補、応用科学部のルーシャス・フォックスモーガン・フリーマン)も、みな一様にドンヨリとしているんですよね……。

そこでアン・ハサウェイ演じるセリーナ・カイルが画面を華々しくしていました! 彼女が いなかったら、ずっと重苦しいムードで気が滅入ります。アンの長~~~い おみ足が素晴らしい!

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アリス・イン・ワンダーランド – いつまでも夢見る乙女は霧に消え

『アリス・イン・ワンダーランド』 (Alice in Wonderland)

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(最後にハッキリと──白赤つけよう)

「へんてこりんの ぽんぽこりん」な人物ばかりが出てくる映画です。まさにティム・バートン監督らしい世界を描いた作品でした。なぜ、いままで彼が撮影していなかったのか、不思議に思うくらい。

本作品のストーリィは、世界的に有名な物語である(けれど自分は読んでいない)『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』の後日談です。幼少のころに冒険した「不思議の国」を、成長したアリスが十数年ぶりに訪れて──という感じ。

まるで、以前に流行した「いつまでもオトナになりきれない人」を描いた作品のようですよね? 最後に「現実に帰れ!」と叫ばれそう。

ところが、この映画に出てくる主人公──アリス・キングスレーミア・ワシコウスカ)は現実的な考え方をしていて、「早く夢が覚めないかな」と思いながら冒険をする。しかも、ずっと──しかめっ面なのです。

こんなアリスは、見たことがない!

世に知られている原作をリメイクする場合は、現代的なテーマを盛り込むことが多いです。監督か脚本家の政治的な主張が見え隠れして、残念な結果に終わる映画もある。

『アリス・イン・ワンダーランド』は、そういった説教臭い面がありません。そこが良かった。

ジョニー・デップが演じるマッドハッター(タラント・ハイトップ)などの奇妙な登場人物や、不気味に美しい「アンダーランド」を眺めているだけでも面白い。家族や友だち・恋人と安心して楽しめる傑作です。

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プラダを着た悪魔 – 生活のために仕事をして、愛のために努力する

『プラダを着た悪魔』 (The Devil Wears Prada)

PRADA BOUTIQUE AOYAMA
(プラダは悪魔に──シャネルは……)

最高に面白いドラマです!

Wikipedia の説明によるとストーリィは、ジャーナリスト志望の主人公が悪魔のような最悪の上司の下で直向きに頑張る姿を描いた物語である──とのこと。しかし、映像を見た印象からはズレています。

主人公の 1 人であるアンディことアンドレア・サックスは、アン・ハサウェイが生き生きと演じています(名前がややこしい?)。

正直なところ、『パッセンジャーズ』でのアン・ハサウェイの弱々しい・たどたどしい演技にホレて本作品を手に取り、期待せずに観ました。結果はバツグンに面白くて、嬉しい誤算です。

パッセンジャーズ – 空での真相を求めて心の世界をさまよう : 亜細亜ノ蛾

もう 1 人の主人公──ミランダ・プリーストリーは、「大女優」の代名詞であるメリル・ストリープが最高の演技を見せてくれました。

本作は、ミランダの「美しい生き方」が見どころです。

『プラダ』を観る前の自分みたいに、「アン・ハサウェイかわいいー! メリルはきっと、いじわるなオ■サンなんだろうな、フン!」という第一印象を持ってしまい、ミランダに注目しないと、大きなソンをしますよ!

(注: ■の中には「ク」が入る)

作品のイメージとあらすじからして、下のような内容だと思う人も多いでしょう。しかし、自分が受けた印象は大きく異なりました。

  • 仕事に不慣れな主人公が、しだいに大きな仕事を覚えていくサクセス・ストーリィ
  • 華々しいファッション業界にひそむ、きびしい現実を鋭く描く作品
  • 洋服には無頓着な女性が、ファッションの奥深さに目覚めていく
  • ハンサムな新しいカレシと結ばれるシンデレラ・ストーリィ

本作品を見終わった人の中で、上の箇条書きを見て「──えっ、このとおりじゃないの!?」と思った人が大半のはずです。たしかに、上で挙げた要素はすべて本編に出てくる。しかし、その映像の裏には、別の意味が見えるのです。

日本でのキャッチコピーは、映像から受けた印象だけで作ったのだと思う。下の 3 つともスベっている。けっして、こういう話じゃない! このコピーによって、余計なイメージを持たされそうです。

  • 恋に仕事にがんばるあなたの物語
  • こんな最高の職場なら、死んでもいい!
  • こんな最悪の上司の下で、死にたくない!

プラダを着た悪魔 – Wikipedia

しかし──、あえて、上で挙げてきたような印象を持ったまま、『プラダ』を観て欲しいですね。見る人が見れば、良い意味で裏切られる。たとえ上記のイメージどおりに見終わっても、充分に楽しめます。

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パッセンジャーズ – 空での真相を求めて心の世界をさまよう

『パッセンジャーズ』 (Passengers)

Trislander Sunset
(空には翼があるね──明らかに)

全体に流れるふんいきが、とにかく不気味な映画です。

こうやって書くと良くない評価のようですが、この独特の空気はぜひとも味わって欲しい。良くできた作品なのです。そしてできれば、最後の「オチ」だけに注目しないようにしてほしい。

ストーリィは、まるでミステリィです。

──女性セラピストのクレア・サマーズ(アン・ハサウェイ)は、飛行機の墜落事故で奇跡的に生還した 5 名の心理カウンセリングを受け持つことになった。しかし、生存者たちの証言はかみ合わず、1 名は異常なまでに躁状態だ。そして、次々におかしな事態が起こり──。

墜落事故の背景には、どうも航空会社の闇がありそうに思える。しかし、確証が持てない。そして、いかにも「事故の真相を解き明かしていく話」のようなのに、事故とは無関係な部分が不気味なのです。

生き残ったひとり──エリック・クラーク(パトリック・ウィルソン)という男は、事故の直後からやたらと陽気で、しきりにクレアを口説く。理由をつけてクレアの自宅まで来たり、予知めいた発言をしたりする。なんともアヤシイ!

そして、それこそ事故と関係しようがない「親切な隣のおばさん」──トニ(ダイアン・ウィースト)は、親密すぎて不気味なのです。憎めない人だけれど、どこか恐ろしい。

航空会社のアーキン(デヴィッド・モース)は当初から態度が不自然で、事件のもみ消し工作を行っているように思える。疑いだしたら、クレアの同僚であるペリー(アンドレ・ブラウアー)ですら、信頼して良いかどうか分からなくなる。

この映画は、何を描こうとしているのだろうか?

ここまでの文章からは想像ができないと思いますけれど、『パッセンジャーズ』はひと言で言うと「恋愛映画」です。ここが一番ビックリする点かもしれない。

なぜ、この異常な気配が漂う中で、クレアは恋に落ちていくのか──。見ていて違和感を覚えます。しかし、じつはその違和感こそが計算された演出だと最後に分かり、感動しました。

どうしても強烈な「オチ」に目が行きますが、オチを支えている「不気味で不自然なふんいき」が見事な作品です。

恋人同士か、あるいは──「終わりそうな恋」を背負っている人・家族と疎遠な人に観て欲しいですね。

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