『HUNTER×HUNTER(ハンター×ハンター)』 No.25 「突入」
いよいよ王と討伐隊の待つ宮殿へ突入!
──するまでに前半を丸ごと費やした上に、後半も数秒間の場面しか描かれていません。でも、その分だけ おもしろさが凝縮されています!
ミリ秒単位で状況が変わり、それぞれの心理も揺れ動くなかで、なぜか一心不乱に踊り狂う者もいたりして──。
Yahoo! ショッピング: HUNTER×HUNTER 25
Reviewer: あじもす @asiamoth,
No.266 「万が一」
今回も、過去の感想に加筆していきます。
HUNTER×HUNTER #266『万が一』 ユピーの「正体」 | 亜細亜ノ蛾
前回で止めた絵・今回は動きのある絵を出して、超高速の迫力を見せました。映画と違って「本当の動き」が ない分だけ、マンガは強調して見せたい点を作者が自由に決められる。本当に冨樫先生はマンガの達人です!
小説の場合は絵すらないから、登場人物の心情を細かく描くことで、読者の心理を操作できる。最近の『H×H』に増えてきたナレーションは、小説でいうと「地の文」(セリフ以外の文章)の役割を果たしています。
──ただし、ナレーションは絵を手抜きするため──ではないということを強調したい。本作品のナレーションを飛ばして絵だけ目で追っても、十分に状況が つかめます。ほかの作品でも試すと おもしろいでしょう。
一見すると「暴走
」したように見えるゴンが、じつは討伐隊のなかで一番状況を冷静に見ていた──という描写が素晴らしい!
出番もセリフも少なくなり、存在感がシュート並(失礼)だった最近のゴンは、やっぱり思考の瞬発力が ずば抜けています。ゴンの お尻──もとい背中を見て、シュートが男惚れする気持ちも分かりますね!
No.267 「発動」
HUNTER×HUNTER #267『発動』 二つの絶望、なぜドラ問題 | 亜細亜ノ蛾
一瞬の判断が明暗を分けて、それが誇張抜きで人類の滅亡にも繋がる──。という状況で、「天上不知唯我独損
」(ハコワレ)の「発動
」で出現したポットクリンの緊張感のなさが楽しかった。
「ハコワレ」は相手にオーラを貸す念能力です。これを文字どおりに受け取ると、相手をトバす
分だけのオーラがナックルに必要になる。そうなると、ナックルの実力以上の敵には使えない──。
ということでゴンは、ナックルから本当にオーラを借りたのではなく、「力が漲る──気がした」ということだと思っておきましょう。
いまだに「なぜ『龍星群
』(ドラゴンダイヴ)を使ったのか問題」が気になります。
まず、討伐隊の何人かが犠牲になる可能性も ありました。普段の彼らであれば(イカルゴ以外は)余裕で避けられるだろうけど、護衛軍との戦闘に集中していたら、龍を食らう確率が万が一
よりは上がる。
そして、結果的に王と護衛軍は分断されたけれど、完全に偶然でしかない。もしもコムギが王宮に来ていなければ、王は玉座の間にいて護衛軍もすぐ近くにいる。小龍ごときは、王なら指 1 本で はじき飛ばせたかもしれません。
これくらいだったら、ネテロとゼノも普通に「4 次元マンション」の出口から侵入して、ゼノは「龍頭戯画」(ドラゴンヘッド)のなかでも強力な「牙突」(ドラゴンランス)で攻撃したほうが良かったと思います。
──もちろん、そんなことは 4 年以上経った今だから冷静に書けることだし、ドラマが生まれません。
迎賓の間
に王がいた理由は、モラウの予想どおり「コムギ 余は お前のことが(以下自粛」と真夜中に這いながら来た──のでは絶対ない!
最初から王がコムギと一緒にいたのであれば、コムギには龍が当たらないように、王は最大限の注意を払って行動するはずだからです。
──ん? でも、そんな余裕がない状況だったのかな……。妙にコムギがキレイに見えるし。つまり(以下自粛
あと、迎賓の間へ跳躍している最中と、窓から覗いている時のピトーは、高橋留美子キャラみたいで かわいかった!
No.268 「王。」
HUNTER×HUNTER #268『王。』 ピトーが歓喜する理由 | 亜細亜ノ蛾
下の文は、人間の愛情や道徳について書いてある──と読めます。すくなくとも、悪い意味には取れませんよね。二人の死線を 横切った
王が攻撃しなかった理由も、コムギの件に対する礼儀です。
一個の生命に 対する慈愛溢れる 振る舞い
これを侵しては そもそもの 大儀を失い 人ですらなくなる
ところが、今回の作戦が「アリの駆除」や「討伐」ではなく、良い意味でも悪い意味でも「人が行なう戦争」なのだ──と上記の文は示している。
細かいことを言えば、この場面にふさわしい言葉は「大儀」(大きな儀式)ではなく「大義」(大切な道)だとも思う。
ただし、ハンター協会の代表としてネテロが「キメラアントの駆除」を請け負う場面(ずっと先の展開)を見ると、「手間のかかる面倒なこと」という意味の「大儀」がピッタリではある。ゼノが龍を放ったのも仕事です。
そんなことよりも、「王って まゆ毛あったんだ!?」ということのほうが、重要で驚きだったりして。
- メルエム
- 「帽子も取れるぞ(スポッ」
えー。
生まれて初めて王から頼み事をされて、ピトーは歓喜で満ち 震えている
。自分の目には、本当の意味で王への忠誠心がピトーに芽生えた瞬間──と見えました。
「2 階以上に上がるな」という王の命も無視して、王を守りに走ることもない。──とてもユピーは「個に頓着がなく だが 無我故の強さを持つ
」ようには見えません!
また、「階段の下から急にヒトが現われた」のに、王の近くにも賊が出現する・空中から敵がやってくる──といった可能性も考えない。
──ユピーって、本当に「単細胞」ですね。そう言えば目玉の集合がアメーバみたいだし。
No.269 「逆境○」
連載時には今回が「貸し」というタイトルでした。
HUNTER×HUNTER #269『貸し』 ひたすら格好いいキルア | 亜細亜ノ蛾
身体が不自由になるほど・逆境になるほど強くなる──という性質は、『シグルイ』の登場人物に多く見られる特徴です。ナレーションのクレイジィさも似ているし、おそらく冨樫先生も好きな作品でしょう。
キルアの行動は、本人も認めているように間違いです。
フラッタに化けているイカルゴなら、兵隊蟻も素通りできた可能性が高い。さらに、頭部を破壊した後で両腕も切り落とすのはオーバー・キルすぎる!
イカルゴの能力名は、『死体と遊ぶな子どもたち』という映画のタイトルと「リビング・デッド・ドールズ」という人形のシリーズから引用したようです。誤植ではなかったですね。
No.270 「貸し」
この回も、連載の時は別の題名でした。
HUNTER×HUNTER #270『鱗粉乃愛泉』 プフの狂気 | 亜細亜ノ蛾
プフの 忠誠心
は、嫉妬心と結び付いている。突入の前にプフが恐れていた王に芽生えて いるもの
とは、コムギへの愛情でしょう。
平常心を失った「プフ・ダンス」をモラウが冷静に見ていたと考えると、あまりにもシュールで笑えます。しかし、これはプフの頭の中で踊っていただけなのかな。
全力を出せば「監獄ロック
」(スモーキージェイル)を破れるかもしれないのに、試しもせずに「鱗粉乃愛泉
」(スピリチュアル メッセージ)を即座にプフは出している。腕力に自信がないのか、それとも念能力に自信があるのか──。
モラウとプフという「衣服が似ている 2 人」の戦いは、次の巻に持ち越しです!
イカルゴは男前で格好いい!
「貸し」だぞ !!
──は男同士の熱い・厚い友情を感じます。絵だけ見ればギャグ丸出しなのに。
ここでイカルゴが「ありがとな」などと礼を言っていたら、逆効果で台なしになっていました。キルアが以前に言っていたとおり「ツレがツレを助けることは当然だから礼は不要」だし、現在は重大な任務中です。
そこで「貸し借り」の話に変換することによって、キルアの罪悪感は ぬぐい去られた。「貸し」を作ったのは助けられたイカルゴのほうなのか、失態を演じたキルアのほうなのか──、微妙なところも深みが あります。
おわりに
2012 年の 1 月 1 日に第 1 巻・第 1 話のから感想を書き始めて、やっと ここまで来られました!
HUNTER×HUNTER 1 巻 「出発の日」 1 – 少年よ、大海へ挑め | 亜細亜ノ蛾
第 26 巻以降の感想は すでに公開しています。
- HUNTER×HUNTER 26 巻 「再会」 感想 | 亜細亜ノ蛾
- HUNTER×HUNTER 27 巻 「名前」 敗者への称賛 | 亜細亜ノ蛾
- HUNTER×HUNTER 28 巻 「再生」 小さなバラに奪われたモノ | 亜細亜ノ蛾
- HUNTER×HUNTER 29 巻 「記憶」 「視」るだけでは分からない痛み | 亜細亜ノ蛾
- HUNTER×HUNTER 30 巻 「返答」 ありがとう おやすみなさい | 亜細亜ノ蛾
あとは連載の再開を待つだけだッ!
いままでも・これからも、ずっとずっと冨樫義博先生の手のひらで転がり続ける人生です──。