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第 9 地区 – 待ち続ける価値はあるのか

『第 9 地区』 (District 9)

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(ただただ──帰りを待つ日々)

本作品は、地球へ やって来た宇宙人と、彼らと接する人間を描いています。ジャンルで言えば「SF アクション映画」になってしまいますが、そういったカテゴライズでは くくれません。

この手の映画では、「地球外生物と人間との戦い」か「宇宙人と人間との心温まる交流」のどちらかを描写する──と相場が決まっています。ところが、『第 9 地区』は、「それ以外」の話を見事に描きました!

ぜひとも大勢の人に観て欲しい映画です!

ただし、いろんな方向へ「毒」を持った触手が伸びている作品であるため、鑑賞には心の準備をお忘れなく……。なにしろ、あのヨハネスブルクが舞台です。下のページで面白おかしく書かれている内容も、冗談は半分──もないと思う。

ヨハネスブルク – アンサイクロペディア

注目して欲しい部分は、人間の主人公──ヴィカス・ファン・デ・メルヴェシャールト・コプリー)が、とんでもなく性格が悪いことです。こんなに最後まで主役に感情移入も共感もできない作品は、ほかにはありません。

真の主役は、地球での名前をクリストファー・ジョンソンと名付けられたエイリアンです。ヴィカスよりも、人間らしい。演じたジェイソン・コープの姿は、本編ではいっさい見られませんが、大きな拍手を贈りましょう。

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アリス・イン・ワンダーランド – いつまでも夢見る乙女は霧に消え

『アリス・イン・ワンダーランド』 (Alice in Wonderland)

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(最後にハッキリと──白赤つけよう)

「へんてこりんの ぽんぽこりん」な人物ばかりが出てくる映画です。まさにティム・バートン監督らしい世界を描いた作品でした。なぜ、いままで彼が撮影していなかったのか、不思議に思うくらい。

本作品のストーリィは、世界的に有名な物語である(けれど自分は読んでいない)『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』の後日談です。幼少のころに冒険した「不思議の国」を、成長したアリスが十数年ぶりに訪れて──という感じ。

まるで、以前に流行した「いつまでもオトナになりきれない人」を描いた作品のようですよね? 最後に「現実に帰れ!」と叫ばれそう。

ところが、この映画に出てくる主人公──アリス・キングスレーミア・ワシコウスカ)は現実的な考え方をしていて、「早く夢が覚めないかな」と思いながら冒険をする。しかも、ずっと──しかめっ面なのです。

こんなアリスは、見たことがない!

世に知られている原作をリメイクする場合は、現代的なテーマを盛り込むことが多いです。監督か脚本家の政治的な主張が見え隠れして、残念な結果に終わる映画もある。

『アリス・イン・ワンダーランド』は、そういった説教臭い面がありません。そこが良かった。

ジョニー・デップが演じるマッドハッター(タラント・ハイトップ)などの奇妙な登場人物や、不気味に美しい「アンダーランド」を眺めているだけでも面白い。家族や友だち・恋人と安心して楽しめる傑作です。

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モーテル(映画) – 殺人鬼の行動には常に良心がない

『モーテル』 (Vacancy)

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(晴れやかなモーテル──はエンディングのあとだけ)

たまたま泊まったモーテルで殺人鬼たちに襲われる──というストーリィのホラー映画です。邦題と内容からして、『ホステル』と似ていると思いますよね? 観てみると、まったく違った印象を受けました。

どう違うのかは、あとで書くとして──。

主人公のデイヴィッド・フォックスを演じるルーク・ウィルソンは、見事な演技を見せてくれました。自分が大好きな映画・『26 世紀青年』も本作品も、彼の演技力で支えられている。好きな俳優の 1 人になりました。

主人公の妻であるエイミー・フォックスは、ケイト・ベッキンセイルが演じています。ものすごくキレイな女優さんで、とくに「そういう場面」でもないのにセクシィさを感じました。彼女を見るためだけでも、本作品の価値はあります。

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タイタニック – 豪華客船を沈めたのは──本当は誰?

『タイタニック』(Titanic)

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(「空を飛んでいる」のは──二度目だったりする)

あまりにも有名すぎる映画です。すくなくとも、映画好きを自称する人ならば、観ていないと おかしい。でも、自分は最近になってようやく手を出しました。

観てみると、やはり面白かったですね。さすが、興行収入の記録でギネスブックに載っただけのことはあります。しかも、『タイタニック』の記録を塗り替えたのは、同じジェームズ・キャメロン監督なのがすごい。

参考: タイタニック (1997年の映画) – Wikipedia

さて、この映画は、あらゆる角度から語り尽くされている。いまさら「ここが良かったね」を書いても面白くない。そこで、アマノジャクな自分の目から見た感想を書いてみました。

今回の大きなテーマは、下記の 2 点です:

  1. 『タイタニック』の致命的な欠点とは?
  2. だれがタイタニック号を沈めたのか?

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ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ – 黄と黒との恋物語

『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』

ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ - チェーンソー男
(さようなら──また会う明日まで)

最高に面白かった! 邦画の中では、一番楽しめたかもしれません。──そう、タイトルはバリバリの英語ですが、日本人の・日本人による・日本人のための映画でした。

ジャンルで言うと、「青春ドラマ」になるでしょうか。高校生が主役で、「普通の学校生活」が描かれている。──ただし、昼間だけ……。

主人公の男の子が他校の女子生徒と「イイ感じ」になったり、若者の将来を心配する先生との会話が出てきたり、部活動の風景が出てきたりします。

なんだか、「甘酸っぱいあのころ」を懐かしく思いました。自分には、あまり縁のなかった世界のはずなのに……。

感動的な青春ムービーでした。まる。

──って、そんな映画じゃねェから!

物語の主軸になっているのは、ヒロインである雪崎絵理(ゆきざき えり)の戦いです。関めぐみさんが演じる絵理は、なぜか夜になるたびに──チェーンソー男新上博巳)と戦っている。

チェーンソーを振り回す男と、女子高生が戦っている場面に、たまたま出くわしたのが──、主人公の山本陽介(市原隼人)です。「巻き込まれ系」の物語ですね。

いちおうは主人公なのに、山本は──絵に書いたようなヘタレ男です! このヘタレ具合は、一見の価値がある。でも、「イマドキの若者」をよく表しています。誰にも刃向かわず、あきらめて、ダラダラして時間と命を溶かしている。

そんな若者に対して檄を飛ばすのが──、板尾創路さんなんですよ!

画面に映っているだけで「妙なフンイキ」をかもし出す板尾さんですが、本作品では意外にも、感動的な演技を見せてくれました。彼の演じる加藤先生には、素晴らしいセリフが多い。この感想の後半に引用しているのでご覧くださいね。

ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ - 加藤先生の説教

アクションあり・笑いあり・感動ありのぜいたくな映画です。最近の日本映画にありがちな「安易なラブ・シーン」や「ホラー(スプラッタ)要素」を入れなかったことも勝因で、家族や恋人と安心して観られますよ!

最後のほうに、「自分が考えたチェーンソー男の正体」も書いたので、ぜひとも読んで苦笑してください。

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最後の恋のはじめ方 – あなたを愛する私は価値のある人間になった

『最後の恋のはじめ方』 (Hitch)

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(女の子の注意を引くには──このポーズで)

最高に面白い恋愛映画です! 絶対のおすすめ!!

ウィル・スミスが主人公のラブ・コメディ──と聞いただけで、「ちょ→格好いい彼が、ステキな恋を楽しむ映画」だと思いますよね? 違うよ。全然違うよ。

こんなに不格好なウィル・スミスは、見たことがない!


ウィル・スミスが演じているアレックス・ヒッチは、「デート・ドクタ」です。──何それ?

最近になって、「○○歳になっても女性と付き合ったことのない男」が主役の映画をよく目にしますが、ヒッチはそんな男性をサポートする立場にいる。モテない男のために、恋のきっかけを演出して、報酬を得る仕事です。

その演出の仕方が面白い!

たとえば、女性の飼い犬を危機から救った──かのように見せかけて、出会いを劇的にするのです。

「えっ、そんなことで!?」と思うかもしれません。そんな時には、『さよなら絶望先生』で有名になった下の言葉を覚えておきましょう。

恋が始まるには、ほんの少しの希望があれば十分です。

Stendhal(スタンダール)

名言集(さよなら絶望先生)


「家族そろって安心して観られる」(気まずくならない)内容だし、舞台も映像も美しい。

音楽も最高にスタイリッシュなのですが、2005 年当時の流行歌ばかりなので、いま聴くと懐かしい感じですね。久しぶりに再開した友人と観るのにも向いています!

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リアル鬼ごっこ(映画) – 真新しい城の上に立つのは──愚かな王様

『リアル鬼ごっこ』

Happy Setsubun!
(残念ながら──こんなにかわいい鬼ではなかった)

なかなか面白いアクション映画です!

原作は(ウェブ上ではとくに)有名な山田悠介氏の同名小説で、どうやってあのむずかしい食材を料理してあるのかが見ものでした。映画が始まる前から、ツッコミを入れる気満々です。

ところが、話の展開も分かりやすいし、人物の描写もていねい。映画としての完成度は高かったですね。


なんといっても、アクションが素晴らしかった!

主人公の佐藤翼(石田卓也)は、逃げることが天才的にうまい。彼自身もそう語っている。本来ならあまり自慢ができる技能ではないけれど、たしかに翼の逃げ足はすごかった!

追ってくる相手やカベなどを使った「立体的なかわし方」が見事です。彼の逃げている場面だけでも、この映画を観た価値がありました。


主人公の妹: 佐藤愛を演じた谷村美月さんも良かったですね! 序盤に出てくる病院で衝撃的な場面があり、後半の彼女を応援する気持ちにも余計に熱が入ります。あれは、ビックリした。

あの場面を見て、柄本明さんが嫌いになった人もいるのでは……。とくに、谷村美月ファンに多そう。


佐藤洋(大東俊介)は、翼の友人でありライバルでもあるという──、少年マンガに出てきそうなキャラクタです。

展開上、彼は 2 つの役柄を演じ分けるのですが、どちらもナイーブな感じが良かった。チンピラ風の格好をしているのに、品の良さを感じます。自分は、この映画の中では彼が 1 番好きですね。


このように、アクションも役者も展開も、バランスよく描かれている映画でした。ただ 1 つ──肝心の設定が穴だらけであることを除けば、素晴らしい作品です!(それ、致命的)

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幻影師アイゼンハイム – 皇太子も奇術師も家庭に平和を求めるべし

『幻影師アイゼンハイム』 (The Illusionist)

The Odyssey of Mission 9
(平和な日常にも──不吉を見る者がいる)

ふんいきが素晴らしいサスペンス映画です。

19 世紀末のオーストリア・ウィーンを舞台にしていて、歴史を感じさせるムードがたまりません。セットや映像・衣装にもこだわりを感じました。

カメラ好きならすぐに気がつく、面白い点があります。古い設計のレンズ使った時に生じる「周辺減光」(画面の四隅が暗く写る)を映像で再現している。これが見事に古都の重厚さを表現しています。


物語の主役はエドゥアルド(エドワード・ノートン)で、子どものころに淡い恋心と──つらい別れを体験したあと、あるきっかけで奇術師になり、「アイゼンハイム」と名乗り始めました。

彼の恋する相手・ソフィ(ジェシカ・ビール)は公爵令嬢です。家具職人の家に生まれたアイゼンハイムとは、身分が違いすぎる。簡単には会えません。

ところが、ソフィの婚約相手である皇太子・レオポルド(ルーファス・シーウェル)に見せたマジックが気に入られて、アイゼンハイムはソフィに近づく機会ができて──という展開です。


「身分違いの恋」と「三角関係」という、物語にするには絶好の題材がそろっている! メロドラマとして見ても面白いですね。

肝心のマジックのほうは、「トンデモ奇術」と呼ぶべき VFX 全開で、「──え? いまのはどうやったんだ!?」といちいち驚かなくて済みます。

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チェンジリング – 人を傷つけて喜ぶ人間──それは誰だ?

『チェンジリング』 (Changeling)

ポンデリング ショコラとアーモンド
(間違えたリングを交換しにいく話──ではない)

最高に胸くそが悪くなる映画でした。

──って、「できが悪い作品」という意味ではないですよ! 出演者たちの演技も映像も脚本も、すべて一級品です。

ところが、見終わったあとで「あー、面白かったー!」とニッコリできる映画ではありません。映画の中で起こった「史実に基づいた事件」が痛ましくて、エンド・クレジットが流れている時にボーッとしてしまいました。

なにより、犯人に腹が立つ!

でもこれは、クリント・イーストウッド監督と犯人役の役者に対する、最大の賛辞ですよ。最大の惨事でもあるけれど……。


見どころの 1 つは、主演を演じているのがアンジェリーナ・ジョリーであること。セクシィな彼女は、本作品でも「入浴シーン」を披露するのですが──、けっして色っぽくはない。貞淑な母親であるクリスティン・コリンズを見事に演じていました。

彼女の一人息子──ウォルター(ガトリン・グリフィス)が行方不明になるところから、物語は動き始めます。毎日毎日、息子のことを気にかけるクリスティンの元へ、5 か月も経ってからウォルター発見の知らせが届くのですが──、

戻ってきた「ウォルター」は、まったくの別人だった。

ウォルターを名乗る少年──アーサー・ハッチンズ(デヴォン・コンティ)の目的は分かりません。自分は途中まで、ミステリィかと思って観ていました。


もう一つの見どころは、1920 年代後半のロサンゼルスを再現した映像です。クリスティンの勤める電話会社や街並みが、古くて新しくて美しい。

いつもなら、衣装の内側からあふれんばかりの肉体美を誇るアンジェリーナ・ジョリーだけれど、この時代の洋服を身につけると、おしとやかに見えます。彼女の変わった一面を見るためだけにでも、ぜひご覧ください。

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消えた天使 – 女を殴ってから髪をなでる者──それが彼の敵

『消えた天使』 (The Flock)

Devotion
(願いは 1 つ──無事でいますように)

きわどい題材のサスペンス映画です。


リチャード・ギアが演じるエロル・バベッジは、公共安全局で監察官をしている。性犯罪登録者の監察を続けてきて、心身ともに疲れ果てていた。

引退間近のエロルは、新人のアリスン・ラウリー(クレア・デインズ)に仕事を教えていたのだが、誘拐された女性を捜査し始めて──。


こういったストーリィ展開で、何しろリチャード・ギアが主演の映画だから──、「正義の味方であるギア様が、紳士的に事件をまるっと解決する!」──となりそうですよね? 違うよ。全然違うよ。


本作品でリチャード・ギアが演じるエロルは、アルコール中毒で切れやすい性格です。元・性犯罪者たちのところへ(異常にしつこく)通い続けているのも、仕事熱心というよりも、「何か」にとりつかれている感じがする。

ある意味では、エロルは犯罪者以上に犯罪者らしい。

冒頭で引用されているニーチェの有名な言葉も、この物語が「ある方向」を向いていることを感じさせます──。

怪物と戦う者は、その過程で自分自身も怪物になることのないように気をつけなくてはならない。

深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ。

ニーチェ格言集

はたしてエロルは、みずから犯罪者となってしまうのか? 何しろ名前がエロルだし……(それは関係ない)。


この映画と『96 時間』は題材が似ていて、娘を持つ親御さんにとっては、想像もしたくない話です。それに、『96 時間』は「悪・即・斬」な話だから良いけれど、『消えた天使』は──ちょっと娘さんと一緒には観にくい感じ。

96 時間 – 空気と光と家族の愛──これだけあれば親父は走れる : 亜細亜ノ蛾


基本的にはサスペンス映画で、ハラハラドキドキな展開に満足できました。マニアックなお色気の場面もあり、そういう方面でも楽しめます。とくに(アマチュア)カメラマンの自分には、「そういう世界もあるのか!」と思ったり。

さらに、「犯人は誰だ?」というミステリィ要素まであって、なかなかゴージャスです。その犯人の演技も圧倒的で、ラスト付近の場面ではギア様を食っていました! ──あ、演技力でね。

アヴリル・ラヴィーンが出演していることも、ファンには見逃せません。彼女が演じているベアトリス・ベルという人物は、「なんちゃってアヴリル」を思わせるキケンな役でした。

どこがあぶないのかは、見てのお楽しみです──。

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