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『脳ミソを哲学する』 筒井康隆 – 科学の扉をツツイたら

『脳ミソを哲学する』 筒井康隆・著

salted fish guts (烏賊の塩辛) #7925 (by Nemo's great uncle)
(脳ミソっぽい──イカ)

ホリプロ所属(!)の小説家・筒井康隆さんが、科学者たちと一対一で対談する──という内容です。

「科学者たち」と乱暴にまとめましたが、動物行動学者もいればイカ学者・解剖学者や評論家もいる。いろんなジャンルの人たちが登場します。

インタビュア役の筒井さんを含めた、10 人が 10 人とも一流の聞き手・話し手のため、快適に読めました。「専門家の話」というと、専門用語ばかりが出てきて分かりにくいのでは──という心配はご無用ですよ。

自分が読んだ文庫版は、1995 年に出版された『脳ミソを哲学する [単行本]』が元になっています。対談の内容は、ほぼそのままのハズ。

それにもかかわらず、本書には次の一文が出てきました。

ところで、いま、若者の科学離れということが言われます。

脳ミソを哲学する (講談社プラスアルファ文庫) [文庫]』 p.21

おお、これぞ、最近になって言われている、「若者の○○離れ」ではないですか! なんという、時代を先取りした書籍でしょう……!

ということではなく──、これはただ単に、

マスコミは、いつまでも同じことを言っている

と受け取るべきでしょう。やれやれだぜ……。

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青春──トーキョースクールガール – 100 人の少女×写真の自由さ

『青春──トーキョースクールガール』 小林 基行 (著)

Off To School (by josefnovak33)
(こんな感じの写真集──ではない)

写真家の小林基行さん(現在は「小林幹幸」さん)は、自分がいつもブログの更新を楽しみにしている 1 人です。

MOTOYUKI KOBAYASHI BLOG|小林幹幸フォトグライフ|ブログ

それに、『フォトテクニックデジタル』で連載している「スクールガール」シリーズも好きですね。この雑誌自体はたまにしか買わないケド……。

ところが──、彼の出した写真集を自分は 1 冊も持っていません。せっかくなので──、と買ってみた『トーキョースクールガール』は、大当たりでした!

この写真集は、モデルの表情が素晴らしい!

おそらく、この本に出てくる女子高校生の制服を着た 100 人の少女たちは、全員がプロ──モデル事務所に登録されている人たちだと思うんですね。

だから、「破顔」としか言いようのない笑顔も、物憂げなうつむいた顔も──、演技ではあるのでしょう。

それでも、写真を見ている側には、自然な表情と見分けがつかない。そこが──スゴイのです。こんな表情は、ほかの写真集では見たことがありません。

自分もポートレイト──コスプレイヤさんをよく撮影します。だんだんと「自分のスタイル」らしきモノが身についてきたけれど──、ちょっとマンネリ気味な時期かも。そこで、この写真集は強烈な起爆剤になりました!

ああ、もっと写真は自由に撮っても良いのだな、と気付かせてくれた 1 冊です。

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『新釈 走れメロス』 森見登美彦 – 男の友情とは「ちょっと手加減」

『新釈 走れメロス 他四篇』

20080405 哲学の道・鴨川の桜 201 (by merec0) (by merec0)

この本は、大切な友だちから借りて読みました(そればっかり)。

最初は「新訳(しんやく)」かと思って、なんだかお堅いイメージがあったのですが、よく見ると「新釈(しんしゃく)」となっている。「新しい解釈」のことで、ようするに「パロディ物」ですね。「生まれ変わった釈由美子」──のことではありません(書いて後悔した)。

本の題名にもなっている『走れメロス』の新釈は、パロディらしく思いっきり笑える話になっています。自分が過去に読んだ 2 作品と同じで、オモシロオカシイ大笑いできる内容になっている。

ところがほかの短編は、シンミリとしたセツナイ話に仕上がっているんですよね。そういえば、上に名前を挙げた作品も、芯の部分は切なさが流れています。それをオモチロイ要素でコーティングしてある、という印象でした。

全 5 篇の中で自分が一番好きな話は、『桜の森の満開の下』です。笑える部分を徹底的に削ぎ落とし、正体の知れない不安が全編を包み込んでいる。そして、最後のなんとも切ないこと……。

森見さんが書く小説は、ほかの作品とリンクしているところが面白いです。『走れメロス』の 5 篇もそれぞれ同じ人物が出てくるし、ほかの本ともつながっている。ファンサービスというよりも、「自分の子ども」たちに対する作者の愛情を感じました。

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『夜は短し歩けよ乙女』 森見登美彦 – 日々是なむなむ!

『夜は短し歩けよ乙女』

Daruma-4 (by KO-ROCK) (by KO-ROCK)

大切なおともだちから、小説をお借りしました。──そう、こんな(どんな?)自分にも、大事な大事なトモダチがいるんですね。自分でビックリです。

同じような事が一年ほど前にもあって、その時にも森見登美彦さんの本を借りました。

『有頂天家族』 森見登美彦 – タヌキ鍋すら恐れず面白く生きよ : 亜細亜ノ蛾

前に読んだ『有頂天家族』はジャンル分けがむずかしくて──うーん、「動物が主人公のドタバタ日常冒険活劇」、かな?(何だそりゃ)

『夜は──』は簡単で、「恋愛小説」と言って間違いではないでしょう。この作者のことですから、もちろん、ヒトスジナワではいきませんが……。

上で名前を出した 2 つの物語は、それぞれフンイキが異なります。ところが、読後のスッキリ感は同じでした。「世の中にはオモシロオカシイことがある──それを見つけに行こう!」と思ったのです。良い本を読むと、行動を起こしたくなる。

ああ、この本に出会えて良かった! 未読の方は、ぜひどうぞ。

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デジタルカメラマガジン 2009 年 7 月号からカメラの露出を学ぶ

写真の露出について

2009_06_21_182856_NIKON_NIKON D5000 (by asiamoth) (by asiamoth)

写真はピントと露出で決まる

もちろん、「まずは被写体ありき」だ。それに、構図という やっかいなモノも付いてくる(それ自体は実在しないのに)。しかし、何でもない風景を気が向くままに撮っても、良い写真になることは多い。それにはやはり、正確なピント合わせと適切な露出の設定が必要だ。

ピントは分かりやすい。主題にフォーカスが合っていれば、それで良いのだ。どんなにカメラが高価でも、レンズが良くても、ピントがズレていたら失敗である。──高価なカメラ(フルサイズ)ほどピントの合う範囲(被写界深度)が狭いため、ボケやすい(良くも悪くも)。

いわゆるピンぼけにも善し悪しはあるが、今回のテーマではないので、このあたりにしておく。

問題は、露出だ。

Wikipedia で露出の定義を見てみよう。

フィルム等にあたる光の量は、感光材料や撮像素子の感度、使用するレンズのF値、露光時間(シャッタースピード)によって決まる。

露出 (写真) – Wikipedia

上記のことは、デジタルカメラでもほぼ有効だ。ISO 感度・絞り値・シャッタ速度の三要素で露出が決まる。

──そう、このたった 3 つのことで写真の露出が決定されるのだ。だから、難しい。

今月号の「GANREF | デジタルカメラマガジン」(以下 DCM)では、露出の特集が組まれていた。多いに参考にしながらも、気になった点について書いてみる。

デジタルカメラマガジン 2009年 07月号

デジタルカメラマガジン 2009年 07月号 [雑誌] (雑誌)
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露出の話をする前に、DCM の宣伝をしよう。

今月号のカメラ雑誌は、どれも OLYMPUS PEN E-P1PENTAX K-7 の特集記事が載っていた。まぁ、いま書かずに いつ載せる! という感じもするけれど。

あらゆるカメラ雑誌の中でも、この二機種の特集に力を入れていたのが DCM だった。ある雑誌なんか、K-7 は 1 ページしか載っていなかったのに……。

ということで、(パンケーキレンズを合わせると R2-D2 っぽい)E-P1 と(PENTAX K20D を「なかったこと」にしてしまう勢いの) K-7 を狙っている人は、DCM を読もう!

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写真の「日の丸構図」は悪か?

日の丸構図について

Hinomaru Koi (by merec0) (by merec0)

写真の構図は数あるが、いわゆる「日の丸構図」は良くないと言われている。本当だろうか?

たとえば、ウェブ上では悪い写真の例として、この構図が挙げられているのだ。

日の丸構図 – Google Search

──あまり深く突っ込まないで流して欲しいが、「日本の隣」では、もっと盛大に「日の丸」構図が嫌われているのでは、と想像する(想像は自由だ)。

ナショナル ジオグラフィック曰く

たまたま(図書館で借りて)手元にある 2 冊の本にも、日の丸構図を避けるように書かれていた。

まずこちらは、人物の撮影について書いてある。

画面中央の配置を避ける

(……)

顔を画面の真ん中に配置したために、頭の上と両脇に余分なスペースができ、足が切れている、といった写真をよく見かけるし、誰でもそういう写真を撮った経験があるだろう。

真ん中に被写体を置いた写真は、たいていつまらない。

ナショナル ジオグラフィック プロの撮り方 人物写真 (ナショナルジオグラフィック「プロの撮り方」シリーズ) (単行本) p.12

もう一冊は、風景写真における構図の説明だ。

中央の配置を避ける

多くの人が犯すミスの中に、被写体を中央に配置した「日の丸構図」がある。被写体が中央に置かれていると、写真の中心に視線が真っ直ぐに向かうだけで、そこへ至るまでのおもしろ味というものがない。

ナショナル ジオグラフィック プロの撮り方 風景写真 (単行本)』 p.24

世界のナショナルジオグラフィックが言うのなら、デタラメではないのだろう。

ナショナル ジオグラフィック 日本版 NATIONAL GEOGRAPHIC.JP

──これまた余談だが、そういえばアメリカの国旗である星条旗のデザインは、構図の「三分割法」(1/3 ルール)と似ている。まぁ、これも流していただくとして……。

それにしても、さまざまな構図があるものだ。いったい、どんな構図が正解なのだろうか。

自分なりの結論は、「構図は どうでもいい。好きなように撮れば良い」である。日の丸でも三分割でも、もっと変わった構図でも良いのだ。

ただし、ちょっと週末の二・三日か、もしくは数か月単位で写真について考える期間をとって、きっちりと構図について考えてみる価値はある。その上で「構図など何でもいい」と言い切れたら、なによりだ。

上の結論と矛盾するようだが、自分はまだ「好きなように撮る」段階ではない。アレコレと構図について迷いながら撮っている。いつかは、構図のワナから脱したい。

──ん、構図のワナとは?

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『新宿+』 森山大道の目で街を歩く/ 大道風の粒状感を出す方法

森山大道

少女と老人 (by asiamoth) (by asiamoth)

昔から写真が好きな自分だが、写真家の名前はろくに覚えてこなかった。「この写真、なんか、いいな」と思っても、誰が撮ったのかは覚える気がない。

自分が森山大道さんの名前を知ったのは、つい最近だ。写真は見ていたかもしれない。

ウェブ上で彼の写真を何枚か見たが、どうもピンと来なかった。なぜ、彼が評価されているのか、分からない。

森山大道は、過大評価されているのではないか?

モヤモヤとした感情のまま過ごすのは、心に良くない。そこで、彼の写真集を買ってみる。

「携帯サイズ」とか「文庫本」などと紹介されているが、届いた本は──凶器になりそうな分厚さであった。京極夏彦と互角に渡り合える。

──そうか、森山大道の写真は、連作になって初めて生きてくるのだな、と理解した。

写真集で何枚も彼の写真を見つづけていると、「安心感のある、居心地の悪さ」を感じる。見ていて愉快な気持ちになる写真ではないが、不思議に落ち着く。なんだろう、この気持ちは──。

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蜷川実花の写真集『EROTIC TEACHERxxxYUCA』『girls’ holiday!』

蜷川実花

愛心形狀的草莓口味 / Ninagawa Mika strawberry candy (by bubustudio) (by bubustudio)

「日本人の写真家を 3 人挙げよ」と言われて即答できる人は少ない。よっぽどの写真好きでも、日本人に限定されると難しいだろう。

その中でも、蜷川実花の名前が上位に入るはずだ。

蜷川実花 – Wikipedia

──ただ、ニナガワ ミカという読み方を知っていれば、の話だが(自分もアブカワとかマキカワなどと読んでいた)。

名前(の読み方)を知らなくても、彼女が撮った写真を見た人は多いだろう。とくに、女性は蜷川実花の写真が好き人が多いと聞く。

蜷川さんの写真に対して、「Photoshop で彩度を極端に上げている」と推測する人が多い。本当だろうか?

──その人は、写真を見る目がないのだろう。かわいそうな事だ。ゴシュウショウサマ。

昔の自分は Photoshop でイジりまくった写真が好きだった。いまでは、もう飽きが来ている。写真本来の味わいを持った、銀塩写真のほうが好きだ。

今回、蜷川さんの写真集を 3 冊ほど見てみた。どこをどう見ても、銀塩プリントの味しか見えてこない。自分の好きな写真だ。

すこしは色調などを変えているかもしれないが、それは銀塩写真の時代から行なわれてきた事である。それに、単純な写真の補正だけでは、こんな色味は出せない。

──そんなことは、ちょっとでも写真や Photoshop を触っている人間には、すぐに分かるはずだが……。

そういった分析は専門家に任せるとして、写真集を紹介する。

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『シグマ DP1 マニアック・マニュアル』 横木流スナップショット 2

シグマ DP1 マニアック・マニュアル

Live (by williamchu) (by williamchu)

「シグマ DP1」という、「超」が 256 個くらい付くマニア向けのカメラがある。コンパクトデジタルカメラの外見でありながら、中身は一眼レフデジカメの映像素子を持っているのだ。

そのほか、マニュアルフォーカス用にダイアルがあったり、JPEG で撮ると 460 万画素しかなかったり、3 連写するごとに 15 秒も待たされたり、とマニアックすぎる仕様である。「漢(おとこ)のカメラ」と言えるだろう。

さて、今回紹介するのは、その DP1 について書かれた唯一の本である。ほかの高級デジカメは何冊も(軟弱な)マニュアル本が出ているのに、この魅力的なカメラの本を出す勇気があるのは何人もいないようだ。

ところが、カメラと同様に、内容にはクセがある。

タイトルに「SIGMA DP1」とハッキリ書いてありながら、中身は「横木流・撮影術」という感じなのだ。

著者の横木 安良夫(よこぎ あらお)氏といえば、スナップショットの名手である。ここでいうスナップショットとは、「構図や露出などを考えず、お気軽に散歩道などで簡単に撮ること」──ではない。盗み撮りとか速写と言われる手法のことだ。

──念のために言っておくと、「盗み撮り・イコール・性犯罪」と短絡して考えるのはやめよう。むしろ、その思考には注意が必要だ。

本書では、横木氏のお得意とするスナップショットについて、多くのページを割いてある。「DP1 でタクのレオナルドちゃん(ウェルシュ・コーギー)でも撮ろうかしら」というマダムが、うっかりと本書を手に取るとビックリするだろう。

なんだか本書を読むと、氏と同じようなスナップショットの愛好家のために DP1 は作られた、というように思えてしまうのだ。──どちらかと言うと、スナップショットに最適なカメラは「RICOH デジタルカメラ GX200」だと思うが、それはまた書く。

とはいえ、DP1 を買って本書に手を出す人が、「子どもの運動会」や「ウチのペット」ばかりを撮るだろうか。もっといろいろな被写体を求めて街や野に繰り出す人には、本書の作例が大いに参考になる。すべての写真には、撮影データが明記されているのだ。

後半には横木氏が提唱する「CreCo(クリコ)」というレタッチ法も載っている。写真の良さを引き出すこの手法を、ぜひとも試して欲しい。自分も最近ハマっている。

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『εに誓って』 森博嗣 – 生と死の境界にある美しさ

εに誓って

Anaglyph bunny (by gadl) (by gadl)

そもそも人間って、誰だって期限付なのに。

永遠に生きる奴も、永遠につき合う友人も、いないのに。

『εに誓って』 p.188

森博嗣先生のGシリーズ・4 冊目の作品である。

今年中──おそらく数か月以内には、文庫になるはずだ。しかし、いつまでたっても「新刊情報」に登場しない。待てど暮らせど会えない、彼女のようだ。──個人的な話ではなく、この文脈で出てくる彼女とは、あの天才である……。

森博嗣の浮遊工作室

待ちきれないので、講談社ノベルス版で読んだ。──正直、ノベルスと文庫はサイズがあまり変わらないので、どちらでも良い気がする。

さて、ミステリィ作品としての『ε』は、ほとんどワントリックだ。注意深いミステリィ・ファンであれば、途中で真相に気が付くだろう。これほどトリックらしいトリックは、森作品でも珍しい。

しかし、作者がアマノジャクなため、単純な「謎を解いて終わり」という作品には なっていないのだ。犯人よりもトリックよりも、もっと重要な大きな力が後ろに見え隠れする──。

photo

εに誓って (講談社ノベルス)
森 博嗣
講談社 2006-05-10

by G-Tools , 2009/03/14

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