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『夜は短し歩けよ乙女』 森見登美彦 – 日々是なむなむ!

『夜は短し歩けよ乙女』

Daruma-4 (by KO-ROCK) (by KO-ROCK)

大切なおともだちから、小説をお借りしました。──そう、こんな(どんな?)自分にも、大事な大事なトモダチがいるんですね。自分でビックリです。

同じような事が一年ほど前にもあって、その時にも森見登美彦さんの本を借りました。

『有頂天家族』 森見登美彦 – タヌキ鍋すら恐れず面白く生きよ : 亜細亜ノ蛾

前に読んだ『有頂天家族』はジャンル分けがむずかしくて──うーん、「動物が主人公のドタバタ日常冒険活劇」、かな?(何だそりゃ)

『夜は──』は簡単で、「恋愛小説」と言って間違いではないでしょう。この作者のことですから、もちろん、ヒトスジナワではいきませんが……。

上で名前を出した 2 つの物語は、それぞれフンイキが異なります。ところが、読後のスッキリ感は同じでした。「世の中にはオモシロオカシイことがある──それを見つけに行こう!」と思ったのです。良い本を読むと、行動を起こしたくなる。

ああ、この本に出会えて良かった! 未読の方は、ぜひどうぞ。

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デジタルカメラマガジン 2009 年 7 月号からカメラの露出を学ぶ

写真の露出について

2009_06_21_182856_NIKON_NIKON D5000 (by asiamoth) (by asiamoth)

写真はピントと露出で決まる

もちろん、「まずは被写体ありき」だ。それに、構図という やっかいなモノも付いてくる(それ自体は実在しないのに)。しかし、何でもない風景を気が向くままに撮っても、良い写真になることは多い。それにはやはり、正確なピント合わせと適切な露出の設定が必要だ。

ピントは分かりやすい。主題にフォーカスが合っていれば、それで良いのだ。どんなにカメラが高価でも、レンズが良くても、ピントがズレていたら失敗である。──高価なカメラ(フルサイズ)ほどピントの合う範囲(被写界深度)が狭いため、ボケやすい(良くも悪くも)。

いわゆるピンぼけにも善し悪しはあるが、今回のテーマではないので、このあたりにしておく。

問題は、露出だ。

Wikipedia で露出の定義を見てみよう。

フィルム等にあたる光の量は、感光材料や撮像素子の感度、使用するレンズのF値、露光時間(シャッタースピード)によって決まる。

露出 (写真) – Wikipedia

上記のことは、デジタルカメラでもほぼ有効だ。ISO 感度・絞り値・シャッタ速度の三要素で露出が決まる。

──そう、このたった 3 つのことで写真の露出が決定されるのだ。だから、難しい。

今月号の「GANREF | デジタルカメラマガジン」(以下 DCM)では、露出の特集が組まれていた。多いに参考にしながらも、気になった点について書いてみる。

デジタルカメラマガジン 2009年 07月号

デジタルカメラマガジン 2009年 07月号 [雑誌] (雑誌)
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露出の話をする前に、DCM の宣伝をしよう。

今月号のカメラ雑誌は、どれも OLYMPUS PEN E-P1PENTAX K-7 の特集記事が載っていた。まぁ、いま書かずに いつ載せる! という感じもするけれど。

あらゆるカメラ雑誌の中でも、この二機種の特集に力を入れていたのが DCM だった。ある雑誌なんか、K-7 は 1 ページしか載っていなかったのに……。

ということで、(パンケーキレンズを合わせると R2-D2 っぽい)E-P1 と(PENTAX K20D を「なかったこと」にしてしまう勢いの) K-7 を狙っている人は、DCM を読もう!

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写真の「日の丸構図」は悪か?

日の丸構図について

Hinomaru Koi (by merec0) (by merec0)

写真の構図は数あるが、いわゆる「日の丸構図」は良くないと言われている。本当だろうか?

たとえば、ウェブ上では悪い写真の例として、この構図が挙げられているのだ。

日の丸構図 – Google Search

──あまり深く突っ込まないで流して欲しいが、「日本の隣」では、もっと盛大に「日の丸」構図が嫌われているのでは、と想像する(想像は自由だ)。

ナショナル ジオグラフィック曰く

たまたま(図書館で借りて)手元にある 2 冊の本にも、日の丸構図を避けるように書かれていた。

まずこちらは、人物の撮影について書いてある。

画面中央の配置を避ける

(……)

顔を画面の真ん中に配置したために、頭の上と両脇に余分なスペースができ、足が切れている、といった写真をよく見かけるし、誰でもそういう写真を撮った経験があるだろう。

真ん中に被写体を置いた写真は、たいていつまらない。

ナショナル ジオグラフィック プロの撮り方 人物写真 (ナショナルジオグラフィック「プロの撮り方」シリーズ) (単行本) p.12

もう一冊は、風景写真における構図の説明だ。

中央の配置を避ける

多くの人が犯すミスの中に、被写体を中央に配置した「日の丸構図」がある。被写体が中央に置かれていると、写真の中心に視線が真っ直ぐに向かうだけで、そこへ至るまでのおもしろ味というものがない。

ナショナル ジオグラフィック プロの撮り方 風景写真 (単行本)』 p.24

世界のナショナルジオグラフィックが言うのなら、デタラメではないのだろう。

ナショナル ジオグラフィック 日本版 NATIONAL GEOGRAPHIC.JP

──これまた余談だが、そういえばアメリカの国旗である星条旗のデザインは、構図の「三分割法」(1/3 ルール)と似ている。まぁ、これも流していただくとして……。

それにしても、さまざまな構図があるものだ。いったい、どんな構図が正解なのだろうか。

自分なりの結論は、「構図は どうでもいい。好きなように撮れば良い」である。日の丸でも三分割でも、もっと変わった構図でも良いのだ。

ただし、ちょっと週末の二・三日か、もしくは数か月単位で写真について考える期間をとって、きっちりと構図について考えてみる価値はある。その上で「構図など何でもいい」と言い切れたら、なによりだ。

上の結論と矛盾するようだが、自分はまだ「好きなように撮る」段階ではない。アレコレと構図について迷いながら撮っている。いつかは、構図のワナから脱したい。

──ん、構図のワナとは?

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『新宿+』 森山大道の目で街を歩く/ 大道風の粒状感を出す方法

森山大道

少女と老人 (by asiamoth) (by asiamoth)

昔から写真が好きな自分だが、写真家の名前はろくに覚えてこなかった。「この写真、なんか、いいな」と思っても、誰が撮ったのかは覚える気がない。

自分が森山大道さんの名前を知ったのは、つい最近だ。写真は見ていたかもしれない。

ウェブ上で彼の写真を何枚か見たが、どうもピンと来なかった。なぜ、彼が評価されているのか、分からない。

森山大道は、過大評価されているのではないか?

モヤモヤとした感情のまま過ごすのは、心に良くない。そこで、彼の写真集を買ってみる。

「携帯サイズ」とか「文庫本」などと紹介されているが、届いた本は──凶器になりそうな分厚さであった。京極夏彦と互角に渡り合える。

──そうか、森山大道の写真は、連作になって初めて生きてくるのだな、と理解した。

写真集で何枚も彼の写真を見つづけていると、「安心感のある、居心地の悪さ」を感じる。見ていて愉快な気持ちになる写真ではないが、不思議に落ち着く。なんだろう、この気持ちは──。

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蜷川実花の写真集『EROTIC TEACHERxxxYUCA』『girls’ holiday!』

蜷川実花

愛心形狀的草莓口味 / Ninagawa Mika strawberry candy (by bubustudio) (by bubustudio)

「日本人の写真家を 3 人挙げよ」と言われて即答できる人は少ない。よっぽどの写真好きでも、日本人に限定されると難しいだろう。

その中でも、蜷川実花の名前が上位に入るはずだ。

蜷川実花 – Wikipedia

──ただ、ニナガワ ミカという読み方を知っていれば、の話だが(自分もアブカワとかマキカワなどと読んでいた)。

名前(の読み方)を知らなくても、彼女が撮った写真を見た人は多いだろう。とくに、女性は蜷川実花の写真が好き人が多いと聞く。

蜷川さんの写真に対して、「Photoshop で彩度を極端に上げている」と推測する人が多い。本当だろうか?

──その人は、写真を見る目がないのだろう。かわいそうな事だ。ゴシュウショウサマ。

昔の自分は Photoshop でイジりまくった写真が好きだった。いまでは、もう飽きが来ている。写真本来の味わいを持った、銀塩写真のほうが好きだ。

今回、蜷川さんの写真集を 3 冊ほど見てみた。どこをどう見ても、銀塩プリントの味しか見えてこない。自分の好きな写真だ。

すこしは色調などを変えているかもしれないが、それは銀塩写真の時代から行なわれてきた事である。それに、単純な写真の補正だけでは、こんな色味は出せない。

──そんなことは、ちょっとでも写真や Photoshop を触っている人間には、すぐに分かるはずだが……。

そういった分析は専門家に任せるとして、写真集を紹介する。

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『εに誓って』 森博嗣 – 生と死の境界にある美しさ

εに誓って

Anaglyph bunny (by gadl) (by gadl)

そもそも人間って、誰だって期限付なのに。

永遠に生きる奴も、永遠につき合う友人も、いないのに。

『εに誓って』 p.188

森博嗣先生のGシリーズ・4 冊目の作品である。

今年中──おそらく数か月以内には、文庫になるはずだ。しかし、いつまでたっても「新刊情報」に登場しない。待てど暮らせど会えない、彼女のようだ。──個人的な話ではなく、この文脈で出てくる彼女とは、あの天才である……。

森博嗣の浮遊工作室

待ちきれないので、講談社ノベルス版で読んだ。──正直、ノベルスと文庫はサイズがあまり変わらないので、どちらでも良い気がする。

さて、ミステリィ作品としての『ε』は、ほとんどワントリックだ。注意深いミステリィ・ファンであれば、途中で真相に気が付くだろう。これほどトリックらしいトリックは、森作品でも珍しい。

しかし、作者がアマノジャクなため、単純な「謎を解いて終わり」という作品には なっていないのだ。犯人よりもトリックよりも、もっと重要な大きな力が後ろに見え隠れする──。

photo

εに誓って (講談社ノベルス)
森 博嗣
講談社 2006-05-10

by G-Tools , 2009/03/14

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『海辺のカフカ』 村上春樹 – 運命に操られる少年と受け入れる青年

『海辺のカフカ』

Johnnie Walker (by gwenael.piaser) (by gwenael.piaser)

15 歳の誕生日がやってきたとき、僕は家を出て遠くの知らない街に行き、小さな図書館の片隅で暮らすようになった

なんだかおとぎ話みたいに聞こえるかもしれない。でもそれはおとぎ話じゃない。どんな意味あいにおいても。

『海辺のカフカ』 (上) (新潮文庫) p.13

この時期にネットで村上春樹を取り上げるということは、すなわち彼のスピーチについて語ることになりがちだ。

Google ニュース検索: 「村上春樹 エルサレム」

──が、「政治・経済にウトい」という属性のまま一生を終えそうな(そしてそれを一種のウリにしている)自分は、完全にこの話題をスルーする。

ひとつだけ言えることは、卵は投げるものじゃなくて、食べるものだ。ウズラも栄養価が高いから、ちゃんと食べよう(@nifty:デイリーポータルZ:スーパーのうずら卵から、ひな鳥ピヨピヨ!)。

さて、『海辺のカフカ』である。たいへん面白かった! いくらでも深く読み込めるだけの謎を残しつつも、気軽に読める。ただし、読んでいるときはフワフワした気分に浸れるが、読み終わると「『海辺のカフカ』とは、なんだったのか──」としばらく考え続けることだろう。

『アフターダーク』よりは「いつもの春樹」として安心して読める。すこし残酷な描写も出てくるが──。とくに猫が好きな自分は、「その映像」が頭に浮かんでキツかった。

『アフターダーク』 理解できない「無」の恐怖 : 亜細亜ノ蛾

小説としての構造が、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』に似ている。もちろん、中で語られていることはかなり異なるが、おそらく意図的に似せているのだ。そこになんの意図があるのか──それは読んでのお楽しみである。

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海辺のカフカ (上) (新潮文庫)
村上 春樹
新潮社 2005-02-28

by G-Tools , 2009/02/23

村上 春樹
新潮社 2005-02-28

by G-Tools , 2009/02/23

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『有頂天家族』 森見登美彦 – タヌキ鍋すら恐れず面白く生きよ

有頂天家族

Sake? Yes, Please. (by Jon Christall) (by Jon Christall)

「狸であったらだめですか」というまったく工夫のない台詞は、その頃の私が口にしたものだ。弁天は「だって私は人間だもの」と答えた。

さらば初恋。

『有頂天家族』 p.021

本書の主人公は狸(たぬき)である。──そう聞いただけで読む気を失う人は、はっきり言って損だ。

タヌキが人間に喰われそうになったり、タヌキ同士で争ったり、天狗(てんぐ)に恋したり──たくましく「うごうご」生きている面々の騒動が描かれている。タヌキ社会の何気ない日常が出てくるのだが、われわれ人間には特異に見える。

タヌキだけあって、主人公の矢三郎は人間によく化ける。そして、人間社会に溶け込む。同じように、天狗が普通にアパートで暮らしていたりする。

こう聞くと、よくある「タヌキの形を借りた人間ドラマ」に見える。しかし、そうではない。そういった一面もあるが、作者の「タヌキも天狗も大好き!」という思いのほうが強く伝わってくる。どちらかというと、「タヌキや天狗が描きたい」が主題で、分かりやすくするために仕方なく「人間ドラマを借りている」感じ。

矢三郎を始め、タヌキは「タヌキ的思考」をしていて、人間の感覚からすると異常に見えたりする。そこが面白いのだ。

まぁ、作者のブログ・「この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ」を見ても、「タヌキ好き」な一面は強調されていないので、自分が読み誤っているのかもしれない。それでも、面白ければ良いのだ。

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有頂天家族
森見 登美彦
幻冬舎 2007-09-25

きつねのはなし 新釈 走れメロス 他四篇 美女と竹林 夜は短し歩けよ乙女 四畳半神話大系 (角川文庫)

by G-Tools , 2009/02/09

有頂天家族 – Wikipedia

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細かすぎて伝わらない(こともない)本の組版(レイアウト)の話

本の組版に執着する人たち

今回は、本の組版(文字のレイアウト)の話である。本のデザインといえば装丁(カバーなどの外側)に凝った話ばかりが取り上げられるが、中身のほうが大事だ。人間と同じで(説教臭いなぁ)。

帆掛さんの気になる話

このブログだけではなく、「はてなブックマーク」でも「帆掛さん・ラヴ」と言い続けてきた、私こと asiamoth だが──。

じつは、このたび帆掛さんと結婚することになりまs

──ではなくて。

じつは、帆掛さんに共感したことほとんどない。オカルトもホラーも「たしなむ」程度で、クトゥルーはガキのころに読んだトラウマ(「かん字がむずかしくて読めない」)で、それ以降は触れていない。「BOOK ON」で大量に本を買うほど本が好きでもない。

まぁ、好きな対象と趣味が同じではないとイヤ(非モテ思考の始まり)だ、という訳ではないけれど……。少し、さみしい気もする。

そう思っていたら、ようやく帆掛さんに共感できる部分があった!

奇遇 – 2008-09-18 – coco’s bloblog – Horror & SF

何ともマニアックな本の組版の話を、帆掛さんと富士見さんがしている。「最後の行」も「句読点の並び」も、両方ともすごく分かる!

思わず 2 人の会話に「あるある www」と割り込んで、思いっきり不審な顔で帆掛様に軽蔑されたい……。末代まで祟られたい……(オレの代で終わりそうだけど)。

ref.: 栗山千明さんの 2ch スレ(千明様ネタ)が面白い : 亜細亜ノ蛾

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『日本語の作文技術』 本多勝一 – 本書を薦めにくい理由とは

日本語の作文技術

読む側にとってわかりやすい文章を書くこと──その方法をまとめた 1 冊で、1982 年の初版から多くの愛読者を生んでいる(読むだけではなく、実践者も増えて欲しいところだ)。

本書がユニークなのは、「わかりやすい文章」を説明するために、「わかりにくい文章」──つまり「悪文」を多く出しているところ。悪文は新聞記事からの引用が多く、本当にプロが書いたのか疑問を持つ文章も多い。

「わかりにくい文章」の中には、一見しただけでは悪文と気がつかない場合もある。さらに、なぜ悪文になっているのかを説明できる人は少ない。本書を読むと、まず悪文の悪文たるポイントが見抜けるようになり、修正も容易になる。

「てにをは」や「、」(読点)・「修飾の順列」は、今までなんとなく書いていたが、本書を読んで はっきりと法則が分かった。これだけでも本書を手に取る価値がある。何度も読み直し、多くの文章を書き、完全に自分のものにしたい。

ところで、日本語の作文技術 – Google 検索から、本書の要点を箇条書きにしているページが見つかる。ただ、それを見ただけで(本書を読んだ気になって)、すぐさま文章が上手になる──という人は少ないだろう。そんな人は、きちんとした文章を元から書いていたはずだ。

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日本語の作文技術 (朝日文庫)
本多 勝一
朝日新聞社出版局 1982-01
楽天ブックス: 日本語の作文技術

実戦・日本語の作文技術 (朝日文庫) 理科系の作文技術 (中公新書 (624)) 中学生からの作文技術 (朝日選書) 伝わる・揺さぶる!文章を書く (PHP新書) 日本語練習帳 (岩波新書)

by G-Tools , 2008/09/04

さて、この記事のタイトルである、本書を薦めにくい理由とは──。

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