『眠れる美女』 川端康成・著

目覚めてくれるからこそ──愛でられる
この川端康成氏が世界へ向かって挑発する耽美な短編小説集は大好きで、寝る前に何度も拾い読みしています。美しい表現の文章に没頭していると──とても寝苦しい夜になる。
表題作の『眠れる美女』は、文字どおりに眠っている若い女性たちと、年老いた男性が一緒に眠る話です。なんだか ほのぼのとした童話のような印象ですよね。
──しかし、その場所は あやしい女主人が経営する(かどうかも不明な)宿で、何人も登場する女性たちは薬物によって眠らされている。しかも、おそらく全員が未成年で、裸の状態です。
おもしろそうでしょ?
世のラノベ作家は、身近なところでパクってバレてばかりいないで、この名作を下敷きにして自分を試せばいいのに──などと思ったりします。グズグズしているうちに森博嗣
先生が発表してしまいましたね。
『少し変わった子あります』 森博嗣 – 有料と抽象の ご飯 | 亜細亜ノ蛾
同時に収録されている『片腕』も楽しい。こちらも題名の通り「女性の片腕」と男の話です。なんの前触れもなく、男が娘から片腕を借りる場面から物語は始まる。
──え?
そう、こちらは幻想小説といった感じの話ですね。設定だけを見れば こちらも絵本に描けそうなメルヘンだけれど、(そうか?)、全体的に狂気が満ちている。きわどい場面は皆無ですが、なんだかエロティックです。
もう一作の『散りぬるを』は、森博嗣先生が「ミステリィ作品」として紹介していた(『MORI LOG ACADEMY』だったかな?)ので興味を持ちました。
ある殺人犯の内面に迫る作品で、殺人事件を犯した過程の記録と犯人の精神鑑定が繰り返し出てきます。
──なるほど、たしかにミステリィ的な一面もありますが、幻想的な印象が濃いですね。犯人と同化するような点では、『羊たちの沈黙』の前作・『レッド・ドラゴン』と似ています。
以上の 3 作品について感想を書いていきます!
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